柔整ホットニュース

特集

これからの日本の医療と保険制度

2010/10/16

第2の選択

しかし膝の痛みは、残念ながら次第に増悪傾向をたどり、「滅茶苦茶に痛い」とか「我慢できない痛み」という表現が多くなってきました。
手術は嫌だということは前々からおっしゃっていましたので、手術をお勧めはする一方で、少しでも疼痛が緩和される方法を模索しました。整形外科医院も紹介して、ヒアルロン酸注射も当院の施術と並行して行っていただきました。
私の方では予約診察も行って、定期的に状態のチェックを続けていましたが、ある日の診察で、最終的に私は次のような判断をしました。

歩行時だけでなく、安静時痛も強いということは、炎症がかなり重度だということ、あるいはOAのみならず骨壊死を来たしている可能性もあることを示唆している。
このまま保存的治療を続けていても痛みが取れる可能性はほとんどないと思われる。
将来的にはいつかは歩けなくなってしまう可能性もある。
根本的にこの痛みをなくしていくためには、もはやTKA手術しかないと考えられる。

これらの私の判断をAさんにあらためてお話し、どんな手術なのかということと、3週間の入院が必要なこと、個人差があるがその後にもある期間リハビリが必要なことなどをお伝えしました。
Aさんのお答えは、仕事もやっとのことで見つけたのだし、やはりそれは無理だということでした。しかし、実際に痛みに苦しまれているのはご本人ですし、もうこうなったら手術が必要なんだろうなということは、ご自身が一番わかっていらっしゃるのではないかと感じました。

 

第3の選択

そこで、手術するしないは別にして、まずは画像検査受けてみて、それを持って5年前に診てもらったB先生にもう一度意見を聞いてみたらどうかと勧めたところ、やっとAさんは承諾されました。

 

第4の選択

○○クリニックでMRIとレントゲン検査を受けていただき、その画像を拝見したところ、残念ながらやはり予想通りの状態でした。レントゲン上での重度の変形に加え、MRIでは骨髄浮腫も出現しており、関節が破壊されてきている様子がはっきりと確認されました。

画像の説明をして、専門医受診が必要だと思うことをお伝えしたのち、しばらくの間ご自身でお考えいただくことにしました。数週間後、Aさんからお申し出があり、B先生への紹介が実現しました。

B先生は画像を見て、「よくこれで仕事ができているね。相当ひどいです。注射とかで治療している段階ではない。人工関節手術をやりましょう。」とムンテラされたとのことでした。
ご本人はそこでやっと決心され、その場で手術の日取りも決めたと、病院の帰りにご報告にいらっしゃいました。その時のAさんのお顔は、一抹の不安を抱えながらも晴々としていて、長年の苦しみから解放される日に向かっての一筋の光が見えた、といったお気持ちであるように感じました。

 

第5の選択

それなのに。
Aさんの前には、またもや大きな壁が立ちはだかってきました。会社に手術のことを相談したら、そんなに休まれては困る、手術を受けるのなら解雇だ、と告げられたと言うのです。お仕事の種類からすると、Aさんが復帰するまでの間、代わりに短期の人を雇うことだってできたはずです。でも会社はそうしてくれませんでした。

やっとの思いで見つけた就職先を手放したくない、というAさんのお気持ちは痛いほどわかりました。一体どうすればいいのか。最善の選択肢は何か。時間にしたら一瞬かもしれませんが、私は頭をフル回転させて考えました。そして、次の内容のお話をさせていただきました。
「それでも手術しなければ痛みが取れないということは変わらない。たとえその会社をクビになってしまったとしても、手術を受けてきちんと治して、“痛くない膝”を獲得して、あらためて仕事を探せば、またきっと見つかるのではないか。」
また、短期で代わりの人を雇うよう会社に頼んでみたり、自分で誰か友達に代わりをお願いしてみたりしてはどうかという提案もしました。