柔整ホットニュース

特集

これからの日本の医療と保険制度

2010/10/16

今回、神奈川県の酒田達臣先生に医療体制のビジョンとそれに伴う医療者のあるべき姿について、メッセージを頂いた。医療者の心を感じ取っていただきたい。ラブメッセージである!

 

これからの日本の医療と保険制度
~視点:「医療のヴィジョンに立ち返り、あるべき姿を彫り出す」~
第1の課題

ニコニコ接骨院 酒田達臣
(社)神奈川県柔道整復師会会員

ものごとを論じる際には、まずその理想の姿、即ちそれが掲げるべきヴィジョンというものをしっかりと念頭に置き、常にそこに立ち返りながら議論を進めていかなければならない。
さらに、そのヴィジョン(目指す大元)を達成するために、どのようなミッション(やるべきこと)が課せられてくるのか、そしてそれぞれのミッションを達成するために、どのようなオブジェクティブ(具体的行動)があるのか、これらを明確にした上で、議論を成長させていくことが、何よりも大切だ。
即ち、次の手順である。

まず、目指すべき方向性と、行うべきことを明確にする。
次に、移り変わる現状を迅速かつ正確に認識し、上記を達成する上で課題となるものを見つけ出し、関係者皆で力を合わせ、これをブレイクスルーするための具体的行動を考え出す。
そして実行した結果を振り返り、さらに良いもの、より高い価値を創造していく努力を続け、ヴィジョンに一歩ずつ近づいていく。

議論の結果の具体的行動を、逆にヴィジョンから離れる方向のものとしてしまわないためには、この手順が重要である。

 

保険制度が創設されて以来、数多くの改定が行われてきたが、その具体的行動を決める際には、上記の手順がしっかりと行われてきたのであろうか。片手落ちの現状認識を基に判断してしまったことはなかったか。いわゆる“世論”という、流動的で必ずしも真実を指摘することばかりとは言い難いものを背景として、その場を乗り切るだけの対症療法的な判断に陥ってしまったことはなかったか。そもそもまず、医療のヴィジョンとミッションについて、改定に関わる関係者全員がしっかりとした共通認識を持った上で、それに沿って、また常にそれに立ち返りながら、議論が行われてきたのだろうか。
果たして現行の保険制度は、「医療のヴィジョン」、そしてこのヴィジョンに流れるスピリットが、きちんと反映されたものとなっているのであろうか。

 

そこで、「医療」や「保険制度」について論じる前に、そのヴィジョンとは一体何かということを確認しておきたい。
「医療のヴィジョン」は、『人々の命と健康を守ること』である。
これが全世界、全時代に共通する普遍的ヴィジョンであることに異論はないであろう。
では、今の時代の我が国において、この医療のヴィジョンを達成するためのミッションとしては、どんなものがあるのだろうか。それは以下の4つである。

『国家(あるいは地域)で医療環境を整備する』
『国家(あるいは地域)で医療技術の推進を図る』
『国家(あるいは地域)で正しい医療が提供される仕組みを創る』
『国家(あるいは地域)で医療活動を支える』

ミッション①と④を達成するためのオブジェクティブとして、その一つに『国民皆保険制度』が存在している。そしてこのオブジェクティブのより適切な実行を目指して、『保険制度の改革』が行われるということになる。

日本という国を運営していくに当たっては、医療だけでなく、経済や外交など、様々なセクションを適切に運営し、それぞれの理想の姿を同時に追及していくことが必要だ。したがって、医療のミッション・オブジェクティブは、経済や外交などその他のセクションのそれと整合性を持つことが要求される。これらの数多くのセクション全体のバランスの中で「医療のヴィジョン」の追求が行われる。
一方、医療というセクションの中では、上記4つのミッションを同時に追求していくことが求められている。したがって、それぞれのミッション達成のための各オブジェクティブは、他のミッション・オブジェクティブと整合性を持つことが要求される。
即ち、『国民皆保険制度を適切に実行していくための保険制度改革』というオブジェクティブは、4つのミッションすべてと整合していなければならないと同時に、すべてのミッションを達成する上でも役立つ形であることが求められる。