柔整ホットニュース

特集

これからの日本の医療と保険制度

2010/10/16

○○のスタッフの皆さんへ

皆さん、こんにちは。毎日お疲れ様です。
今月は、「選択」という言葉に焦点を当てて、大事なお話をしたいと思います。
私自身には信仰している宗教はありませんが、今回の話には少々哲学的な部分も含まれてきます。
しかし、是非皆さんにも深く考えていただきたい内容です。そしてもし今回考えられたことが、皆さん自身の人生を、幸せなものにしていく一つのきっかけになったとしたら、大変うれしく思います。

 

「選択」

プロローグ

患者さんを目の前にした時、私たちは常に何らかの選択を迫られ、判断し、それを実行しています。たとえば、何もやらないことを選択してそれを実行することも、れっきとした一つの判断です。

たくさんの選択肢の中から、一体何を選んだらいいのか、そもそもどんな選択肢がそこにはあるのか、そういうことを考えて、判断し、実行していくということは、ある意味「生きていく」ことそのものに、繋がることのようにも思えます。

さてこれから、最近ある一人の患者さんを目の前にして私が迫られた選択、そしてそれに対して私が行った判断と行動を取り上げて、一連のいきさつをご紹介したいと思います。

このそれぞれの選択が果たして正しかったのか、間違えていたのか、あるいはそのどちらとも言えないものなのか、答えはまだわかりません。

私が直面したのと同じ状況に、仮に今皆さんが立たされたとしたら、皆さんならどうするか、それを考えてみながら、読んでいただけたらと思います。

 

エピソード

Aさんは、一人暮らしで70歳を目前にした女性でした。
家庭の事情があって、お一人で30年間、だれにも頼らずに、必死に一人で生きてこられた方です。詳しいその事情についてはここでは述べませんが、身体的にも精神的にも、言葉では表せない辛い経験をされ、そのお話にはスタッフの○○も思わず泣いてしまったそうです。
でも普段のAさんは、明るく元気で、院にいらしてもとても朗らかな雰囲気を振りまいていました。ただ、膝は両方ともとても痛くて、10年前から変形性膝関節症の症状に耐えて仕事をしながら、生活をしてこられていました。当院にはその頃から、しばらく通院されたり、その後間が空いて、またしばらく通院されたりという形でいらしていましたが、5年前に、私は人工膝関節手術(TKA)の適応レベルと判断し、世界の学界でも活躍されている、全国的に有名な膝関節専門医の、○○総合病院のB先生に紹介しました。しかし、仕事を休めないとのことで手術はお断りになり、B先生からいただいたお返事にも、「将来的にはTKA適応だが、今は仕事もされており、そのタイミングではないと判断いたしました。」と書いてありました。

その後またしばらく通院が途絶え、いろいろな接骨院や病院を回られた後、最近になって再び当院に時々来られるようになりました。病状は大分進行してしまっており、重度の両膝OAで、歩行時痛のみならず、昼夜の安静時痛も出現、気の毒なことに夜も眠れないくらいに痛みがある状態となっておりました。手術のお話もしましたが、生活していくためには仕事を辞めることはできず、痛みをこらえて頑張っていらっしゃるご様子に、こちらも心の中で思わずため息が出てしまうほどでした。

 

第1の選択

そんな中、ある日思ってもみないような追い打ちがAさんにかけられてきました。勤務先から突然の解雇を通告されたというのです。不況で仕方がないということは頭ではわかるが、ただでさえ就職難な時なのに、この年で来月までに再就職先を探せと言われても、もうどうしたらいいのかわからない、と言って、Aさんは診察室で泣き出してしまいました。

僕たちは何とか少しでもAさんが元気を取り戻されるようにと願って、寄り添うことしかできませんでした。いざとなったら、区役所で申請をして一時的に生活保護を受けることだってできる、そうして生活を確保して探し続ければ、きっと仕事先も見つかるのではないか、と励ましました。
しかし、生活保護を受ける際には、親戚や家族に調査書が送られ、Aさんを扶養する意思がないという書類を提出するよう求められます。それがAさんにとっては絶対にしたくないことだったのかどうかはわかりませんが、今までも歯を食いしばって、国の制度にも親戚にも頼らずに生きてこられたわけで、今回その話をした後に、一度区役所に相談には行かれましたが、結局生活保護の申請はされませんでした。

いくつもの会社で断られて、それでもAさんは頑張って面接を受け続けました。2ヶ月後、やっと再就職先が決まりました。清掃のお仕事でしたが、担当になったところは、膝を曲げる必要もなく、重いものも持たなくてよいし、今までの仕事と比べてもとても楽な内容だとのことでした。院内のスタッフも口々に、「良かったですね~」と喜びを分かち合っていました。
Aさんは本当にうれしそうでした。