柔道整復師国家試験対策【第9回:柔道整復学の必修項目 ―総論・上肢骨折編―】
今回で9回目となる国家試験対策講座。前回までは解剖学、生理学の主要ポイントをお送りしました。今回からは柔道整復学の必修項目を二回にわたりお送りします。今回は総論と上肢骨折の部分の主要ポイントです。
柔整必修骨折総論
- 1)
- 疲労骨折とは何か
一度では骨折しないような外力が一方向に持続して作用し、集積され発生する。
- 2)
- 疲労骨折の症状(所見)の特徴を答えよ
1.疼痛が主症状(変形、腫脹が少ない)
2.初期にはX診断がしにくい(時間経過で骨膜反応)
3.骨折線の走行は横骨折
- 3)
- 疲労骨折の好発部を答えよ
長管骨(骨幹部)
腓骨 脛骨 肋骨 中足骨
- 4)
- 疲労骨折はどのようなものと鑑別が必要か
骨性病変(骨腫瘍性疾患)
- 5)
- 疲労骨折の好発年齢は
若年層(10代)
- 6)
- 不全骨折にはどんなものがあるか 五つ答え、代表部位もあげよ
亀裂骨折:頭蓋骨、腸骨、肩甲骨
陥凹骨折:頭蓋骨
若木骨折:幼小児期の鎖骨、前腕骨
竹節状骨折:小児の橈骨遠位端部
骨膜下骨折:小児の脛骨骨幹部
※骨挫傷:海綿質部の微細骨折 X線、CT× MRI○
※急性塑性変形:
一種の若木 腸骨が全長にわたって弯曲
骨折線は認めないが、経時的に仮骨出現する
小児、腓骨(脛骨骨折)、尺骨(橈骨骨折)
- 7)
- 複合骨折には、どんなものがあるか また好発部と好発年齢をあげよ
1)骨片骨折:上腕骨遠位端部、大腿骨遠位端部 高齢者
2)粉砕骨折
- 8)
- 粉砕骨折を起こし易い外力
直達外力
- 9)
- 単発・二重・多発・重複骨折を説明せよ
1.単発骨折:(単数骨折)1:1
2.二重骨折:(複数骨折)1:2
3.多発骨折:2本以上
4.重複骨折:1:3
- 10)
- 複雑骨折を説明し、その際の対処法を答えよ
骨折部と創部の交通があるもの
⇒整復せずに、滅菌ガーゼで患部を覆い(流水洗浄後)、
簡易固定で専門医 golden hour内に処置
- 11)
- 裂離、剥離骨折について以下を完成せよ
1)腓骨外果 ⇒ 前距腓靭帯
2)第五中足骨基部 ⇒ 短腓骨筋
3)脛骨粗面 ⇒ 膝蓋靭帯
4)上前腸骨棘 ⇒ 縫工筋、大腿筋膜張筋
5)下前腸骨棘 ⇒ 大腿直筋
6)坐骨結節 ⇒ ハムストリング、大内転筋
7)腸骨稜 ⇒ 外腹斜筋
8)上腕骨小結節 ⇒ 肩甲下筋
9)上腕骨内側上顆 ⇒ 内側側副靭帯
- 12)
- 屈曲骨折において、骨片骨折となるもの、斜骨折を呈するものは、それぞれ何型に属しているか
骨片骨折:I型
斜骨折:Ⅱ型⇒上腕骨顆上骨折、橈骨遠位端部骨折
- 13)
- 圧迫骨折の代表的な部位をあげよ
踵骨骨折、胸腰椎移行部骨折、竹節状骨折、噛合骨折(圧潰、軸圧)
- 14)
- 剪断骨折時の骨折線の走行をあげよ
横骨折
- 15)
- 螺旋骨折の代表部位を2つあげよ
投球骨折、腕相撲骨折:上腕骨骨幹部
スキー骨折:下腿骨幹部
- 16)
- 破裂骨折の好発部位はどこか 2つあげよ
椎骨骨折(ジェファーソン骨折)、頭蓋骨骨折
- 17)
- 骨折時の全身症状を2つ答えよ
1)ショック(蒼白、冷汗、虚脱、拍動消失、呼吸不全)
2)発熱(骨折後数時間〜数日)
- 18)
- 骨折時の局所症状の一般外傷症状と固有症状を3つ答えよ
固有症状:異常可動性、軋轢音、転位と変形
一般外傷症状:(疼痛、腫脹、機能障害)
- 19)
- 異常可動性を証明しにくいものを答えよ
不全骨折 圧迫骨折 噛合骨折 関節付近の骨折
- 20)
- 軋轢音を証明しにくいものを答えよ
異常可動性を証明しにくい骨折
骨折端間が離解している骨折(延長転位、裂離骨折)
骨折端間に軟部組織が介在している骨折
- 21)
- 一次性転位と二次性転位について説明せよ
一次性:骨折時の外力による
二次性:運搬、筋、患肢重量、包帯交換等
- 22)
- 骨折の併発症には何があるか 6つ
関節損傷、軟部組織損傷、内臓損傷、脳脊髄損傷、末梢神経損傷、血管損傷
- 23)
- 関節内骨折で留意することには何があるか
骨癒合が遷延し易い、リモデリングが起きない 関節変形を来し易い
※骨髄性出血による関節血腫(脂肪滴を含む血性関節液)
- 24)
- 骨折の続発症をあげよ
外傷性皮下気腫、脂肪塞栓、仮骨の軟化・再骨折、遷延治癒、コンパートメント症候群
長期臥床による続発症
- 25)
- 外傷性皮下気腫について以下の○×に答えよ
1)肺(呼吸器)損傷時に認められる ○
2)肋骨骨折時に認められる ○
3)単発骨折よりも、多発骨折時に起こり易い ○
- 26)
- 脂肪塞栓症について以下の○×に答えよ
1)異常形成された脂肪滴によって発生する。 ○
2)受傷後24時間以内に発生する ×
3)初期症状として、発熱、点状出血を認める ○
- 27)
- 仮骨の軟化や再骨折を引き起こし易い現病歴には何があるか
丹毒、壊血病、蜂窩織炎
- 28)
- 遷延治癒・偽関節を形成し易い部位
鎖骨外端部骨折、上腕骨骨幹部骨折、上腕骨外顆骨折、前腕両骨骨折、手の舟状骨骨折、
大腿骨頸部内側骨折、脛骨骨幹部中下1/3部骨折、ジョーンズ骨折
- 29)
- コンパートメント症候群の好発部位を答えよ
前腕屈側部 下腿部
※ コンパートメントは不可逆性でない
- 30)
- 長期臥床における続発症にはどんなものがあるか 六つ答えよ
沈下性肺炎 褥瘡 深部静脈血栓症 筋萎縮 尿路感染
- 31)
- 骨折の後遺症を8つ
過剰仮骨形成、偽関節、変形治癒、骨萎縮、阻血性骨壊死(無腐性骨壊死)、
関節運動障害(関節強直・関節拘縮)、外傷性骨化性筋炎、フォルクマン拘縮
- 32)
- 過剰仮骨形成の発生要因を全てあげよ
粉砕骨折 大血腫の存在 骨膜の広範剥離
早期かつ過剰な後療法
- 33)
- 偽関節形成の恐れのある局所要因にはどんなものがあるか
剪力 捻転 屈曲 牽引力 粉砕骨折 骨折端が血腫内にない
血腫分散 複雑骨折など
- 34)
- 交感神経ジストロフィー(ズデック骨萎縮)の好発部位はどこか
四肢外傷後の四肢末端部⇒コーレス骨折 踵骨骨折
- 35)
- 交感神経ジストロフィーを疑う所見にはどんなものがあるか
疼痛 腫脹 熱感 運動障害 骨の希薄化脱灰像 浮腫
- 36)
- 無腐性骨壊死(阻血性骨壊死)の発生しやすい骨折を4つ答えよ
股関節脱臼骨折 大腿骨頸部内側骨折 手の舟状骨骨折 距骨骨折
- 37)
- 関節拘縮と関節強直の違いを答えよ
構成体の問題か否か
関節面の癒着があるか否か
保存で治るか否か
- 38)
- 外傷性骨化性筋炎の発生原因と好発部を答えよ
強引な整復、後療法
上腕、大腿 脱臼ならば肘関節脱臼、股関節脱臼
- 39)
- フォルクマン拘縮の発生部位と病態を答えよ
前腕屈筋群の阻血性壊死性筋萎縮(拘縮)
- 40)
- フォルクマン拘縮の発生を疑う症状をあげよ
疼痛 蒼白 拍動消失 感覚麻痺 運動麻痺
- 41)
- その場合の処置法を答えよ
緊迫要因を除去後、専門医へ
- 42)
- 小児骨折の特徴を答えよ
1)骨膜が厚く、柔軟性、血行性に富んでいる
⇒癒合早い 不全多い
2)骨端軟骨損傷⇒判断しにくい者もある
3)リモデリング旺盛
4)骨過成長
5)関節拘縮も早く回復
- 43)
- ソルターハリス分類で骨端軟骨が遮断されているものは何型か
また、好発するもの、予後不良となるものを答えよ
離断:Ⅲ、Ⅳ型 好発:Ⅰ、Ⅱ型 予後不良:Ⅳ、Ⅴ
- 44)
- 骨のリモデリングが期待できない転位と部位を答えよ
関節内骨折 回旋転位
- 45)
- 高齢者に好発する骨折を4つあげよ
上腕骨外科頚骨折 橈骨遠位端部骨折
大腿骨頚部骨折 胸腰椎椎体圧迫骨折
- 46)
- 高齢者の骨折治療時に、注意することにはどんなことがあるか答えよ
長期続発症(可能な限り早期離床)
解剖学的を求めすぎない
不必要に固定を長期化しない
家族等へのインフォームドコンセント
- 47)
- 骨折の治癒過程を経時的に答え、炎症反応が消失する時期を答えよ
炎症期 仮骨形成期 仮骨硬化期 リモデリング期
仮骨硬化期