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『核兵器のない地球のつくり方』~戦争ではなく平和の準備を~

2023/09/16

去る8月26日午後1時30分からあきる野ルピア ルピアホールにて川崎哲氏の講演が行われた。主催は、あきる野市中央公民館・市民企画講座、企画は「もうひとつの平和の会」のコラボで行われた。

ピースボート共同代表・ICAN国際運営委員 川崎哲氏

川崎氏は、〝私は、平和の問題に長く取り組んで参りましたが、核兵器をめぐるこれまでの状況や今の状況についてお話しします。「核兵器のない地球のつくり方」と書いてありますが、結論的にいいますと、私は核兵器をなくすことも戦争をなくすこともできると確信しています。理由は簡単で、核兵器も戦争もまるで合理的ではないからです。問題を解決するためにということで戦争を行うが、問題の解決にはならないので全く非合理的で間違っています。最低限の軍備が必要だと主張をする方がいるかもしれませんが、核兵器は全人類を皆殺しにする兵器で、核兵器の合理性はどこにもありません。それを持ち続けることが誤っていますし、失くせないだろうと思っていること自体が誤りです。世の中、合理的な方向に良くなってきた訳です。核兵器禁止条約が出来ても核兵器を持っている国があれば、意味がないという人もいますが、例えば歩きタバコ禁止条例もできています。悪いことだからと禁止する、禁止条例を作ることによって、これは迷惑だと思った人が、辞めてくださいと言えるようになる。核兵器という過ち、或いは戦争という誤った行為を仕方がないものだとして受入れなさいという様々な仕掛けや圧力がありますが、私はそういったものに一人一人がそれを拒絶していくことで世の中は自然により良い合理的な方向に動いていくだろうと思っています。

今年のG7サミットについて触れておきます。多くの報道がされ世界に響いたということには意味があったと思いますが、しかしそこで出された「広島ビジョン」とよばれる文書について、ICANは厳しく内容を検証しました。

核兵器のない世界を理想と表現したが、理想と書いてあるけれども、そもそも核兵器を廃絶するというのは国際法の義務です。その義務を達成するためにどういう行動をとるかという約束がここになかった訳で、且つ今ロシアがウクライナに行っているような核兵器の脅しを批判し、ロシアに核兵器を使用させてはならないというメッセージは強かったが、自分たちの核兵器については武力行使の抑止であるから正当であるという言い方をした訳で×をつけなければいけなかったということです。ロシアの核はダメだけど、自分たちの核は大丈夫というようなことでは、広島に落とされた核兵器の被害災害というものをきちっと認識した上でのことだとは言えないのではないか。

今でも世界には12500の核兵器があると、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)のHPにも数字が出ています。その9割はアメリカとロシアの核で大体半数ずつ持っています。それ以外の7カ国、イギリス・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル、一番切実に感じるのは北朝鮮と日本の皆さんは思うかもしれませんが、全体としては12500あり、その9割がアメリカとロシアにあるということを押さえていなければならない。中学2年生の時に私は初めて父親に連れられて広島に行きましたが、丁度この頃が世界で核が一番多かった1980年代半ばで、7万を超えていました。何故かというと、1945年に第二次世界大戦が終わってからアメリカとソ連が核の軍拡競争をずっと続けてきたために7万発になってしまった。これはいくらなんでも多すぎる、核戦争が始まったら大変なことになってしまうとアメリカとソ連の指導者たちが気付いて、軍縮を進めなければいけないとなり、1989年に東西冷戦が終わったことで90年代前半に核軍縮が劇的に進みました。

しかしながら2000年代半ばから、核兵器を持つ国々は減らすのを遅くして、今横ばいになっていますが、このままいくとまた増え始めるのではないか、核軍拡に戻るんじゃないかという意見もあります。いずれにしても7万発~12500に核は減ったけれども、1万以上ある訳です。今の核兵器は当時の核兵器に比べると数十倍から100倍以上の威力があります。それが使われる可能性が高まっている。しかも私たちが今直面しているのは、核を持っている国のリーダーが信用できないということです。ロシアのプーチン大統領をみてください。或いはアメリカのトランプ前大統領は、議会の襲撃をそそのかして刑事告訴されている人です。その人が次の選挙でもう1回返り咲くかもしれないと言われているような状況で、こういう人達が、核兵器のボタンを持っているというのが今の世界の現状であり、核が使われるリスクが高まっているという判断に繋がります。核兵器の使用を現実のものにさせないで、核兵器をきちんとコントロールしてなくしていくための取組みは様々なテーマで行われています。

NPT核不拡散条約が1970年に発効となり、その中で米・ロ・英・仏・中の5カ国は核兵器国として定められ、それ以外の圧倒的多数の186カ国は非核兵器国として核兵器を持ってはいけない。つまり核兵器を持つ国をこれ以上増やさないということがこの核不拡散条約の一番の主眼ですが、核兵器を持っている国は核軍縮を行う義務があるということも定められています。このNPTは、いま持っている5か国にずっと持っていて良いと言っている訳では全くない。むしろこのNPTという条約の下で、5年毎に開かれる再検討会議の中で、核兵器を究極的にはなくすという約束、或いは核兵器を廃絶するのを達成するという明確な文言が1990年代、2000年代に核兵器保有国も含めてなされています。2000年度にそういった約束がなされたにも関わらず、5年毎の見直しでは、合意がゼロになるという状況になってしまった。このままではいけないということで、2010年に核兵器が使われた場合の非人道的な結末への深い憂慮として核兵器禁止条約に留意しましょうという合意がなされました。2010年の合意が起点になり、新しい「核兵器禁止条約」が作られました。

2007年に出来たICAN核廃絶キャンペーンは、110カ国から650の団体と11の執行部が運営を決めており、実際に核の非人道的に関する議論を活性化したり、話し合いを前に進めてきました。世界で核兵器の非人道性が重要なキーワードになっている時に、私たちは日本で同じ人間なのに被爆者になった非人道性という言葉の中身をきちんと伝えようとしてきた訳です。こうした被爆者達の声が、核兵器と禁止条約の成立の背景にあります。実は核兵器を持つ9つの国と核兵器保有国の傘下にある国々は、殆どがこの条約交渉をボイコットしました。第1条に、核兵器を全面的に完全に禁止すると書いてあり、全面禁止というのは、核兵器を作ることも持つことも使うことも、使うと言って脅すこともそれらに協力することも、いかなる場合も禁止する。第4条には、核兵器を持っている国が今後この条約に入ってきたら、どういう段取りで核兵器をなくしてもらうかについて。第6条には、核兵器の使用、主に核実験の被害者への援助。これらが核禁止条約の一番のポイントです。

これを作ることに貢献したということで、この年にICANがノーベル平和賞を受賞し、ノルウェーのオスロで行われた式典にICANの中心的なスタッフやメンバー達が参加し、私も参加しました。(中略)

 

 
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