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『核兵器のない地球のつくり方』~戦争ではなく平和の準備を~

2023/09/16

いつ終わりになるんですか?というのは、ある意味で私たち次第です。私たちがどれくらい一生懸命にやりたいのかということだと思います。例えば核兵器禁止条約にアメリカは入っていません。日本も入っていません。しかしアメリカの銀行も日本の銀行も入っています。具体的に核兵器は非人道的だという批判が起きると、非人道的な核兵器を作っている企業を非人道的な行為と評価するのと同じです。化石燃料を殆ど使用しているような会社には投資できない。むしろ再生可能なエネルギーで行っているような会社に投資する。こういう一連の社会的責任を考えた投資、或いはSDGsを考えた投資等、世界的にそういう状況になっています。何が言いたいかというと、禁止条約の効果は出てきています。

非人道に関する国際会議では、被爆者の発言のみならず、被爆三世の方が話をしています。被爆者の平均年齢はいま非常に高くなっており、直接自分の言葉でお話ができる時間は本当に限られています。若い二世や三世の役割というのは、国際的にも注目されている訳です。この会議に日本政府は、条約契約会議には参加しないという立場を表明していたので、日本の学生たちがおかしいじゃないか参加してくれという署名を集めて日本政府の代表に詰め寄っていることも報道されました。この非人道的に関する国際会議では、オーストリアが議長を務めました。議長のまとめとして、ロシアによる核の威嚇は核保有国による戦争開始を後押ししている、よって核抑止に基づく安全保障というのは、持続可能じゃないということを結論付けており、まとめとしてとても重要です。その翌日、核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開催され、この冒頭で世界の核被害者を代表して発言したのはカザフスタンの男性です。カザフスタンは、過去400回以上の核実験の放射能の影響で、多くの人達が健康上の被害を被りました。カザフスタンはこの条約にいち早く署名し批准しました。日本は、唯一の被爆国という言い方をしますが、これは正確ではありません。日本は戦争の時に核兵器を受けたということで言えば唯一の被爆国ですが、戦争以外で核兵器は物凄い数、2000回の核実験が世界では行われてきている訳で、そのことによって被爆者が出ているのです。つまり、この歴史的な核兵器禁止条約の第1回締約国会議のオープニングで発言したのは日本ではなく、カザフスタンの核のヒバクシャだったということは、私たちはよく知っておくべきだろうと思います。

約80カ国以上から約1000人の参加、この中にはオブザーバーも含まれています。オブザーバー参加の主要な国としては、ノルウェー、ドイツ、オランダ、ベルギーで、この4カ国は北太平洋条約機構(NATO)の加盟国ですから、アメリカの核の傘下にあり、日本と同様に二国間の条約の中でアメリカと同盟関係を結んでいます。それ以外では、スペイン・フィンランド等もオブザーバー参加をしています。残念なことに広島選出の岸田首相は核兵器の廃絶を目指すと言っていますが、ここにオブザーバー参加すらしなかった。一方、市民は多く参加し、若い世代がこのウィーンの会議に多数参加をして、SNS等を駆使して世界に発信するということも行っていました。この会議では、最後に宣言が採択されました。直ぐには難しいけれども、核兵器を廃絶するまで前に進むんだという、とても力強い言葉が含まれています。この宣言が出たということだけではなく、具体的で様々な行動が始まっていることも強調しておきたい。例えば、今年の11月末から1週間の間、ニューヨークで開かれる第2回の締約国会議に向けて、条約の普遍化、核被害者援助と環境回復、核兵器の廃棄の検証といった具体的なワーキンググループが立ち上がって会議を進めています。また核兵器とジェンダーの関係について、核兵器禁止条約の中で議論が始まっています。放射能による被害は、医学的な見地からいっても社会的差別等の見地からいっても女性に非常に偏っているにも関わらず核兵器に関する政策の意思決定等は殆ど男性が支配するような会議であり、それを変えていかなければなりません。

 

まとめ

核抑止力という考え方が抜けない人はたくさんいます。核抑止力は現実的には仕方ないんだという人のために、私は次のことを考えてくださいと申し上げたい。

1つ目は、道徳性、核兵器を本気で使うという判断ができるはずがないということ。広島や長崎に何が起きたかということを知っている私たちが、そのあやまちを繰り返すことはそもそも道徳的に許されない。2つ目は、実効性。事故が起きる可能性もありますし、核兵器が発射された、ミサイルの燃料が漏れて爆破したがたまたま爆破しなかった、ということも報告されています。3つ目は伝染性。核兵器を持っていたら安全となれば、「我も我も」と核兵器を持つ国が増え、かえって危険度が上がります。4つ目は結果責任。間違って核抑止が破れてしまって戦争になり核戦争になってしまったら、いったい誰が結果責任を取れるんですか?誰も取れないんです。

2019年、ローマ教皇が長崎・広島に来られた時に〝核兵器の使用も保有も倫理に反する〟と世界に言ったのです。使用は勿論のこと、保有もいけないということを2回繰り返しています。

2年前にピースボートとICANの共催で核被害者フォーラムというオンラインのフォーラムを行いました。日本だけでなく全世界の核の被害者の証言を集めたオンラインの国際会議でした。核を使用しなければ保有はしていても良いという抑止論に立てば、こういった被害者は一斉無視されてしまうのです。保有をするために核実験を行うのですから。アメリカでも国内で核実験は行われており、アメリカにも核の被害者は存在するのです。更に2022年夏のNPTの会議で、18歳のウクライナの女性が語ったことは、ロシアの核の威嚇によって我々は犠牲になっているということでした。ロシアはウクライナに対して核兵器を使っていませんが、核兵器を使うと脅しながら戦争を続けているために、彼女の家族や同胞たちは傷つけられていると力強く訴えたのです。つまり、核兵器を使用していないけれども威嚇の犠牲者であると。核を抑止のために保有しておくという考え方は、全ての犠牲者を無視することによって成り立っているのです。私はそういう抑止論を認めることはできないと考えます。

そして、国連は様々な課題を扱っており、その中で一番重要なことは、紛争は国家間で平和的に解決しなければならないということですが、いま戦争が続く中で、国連の国際法の役割自体を軽んじてしまうような議論が増えており、大変良くないことだと思っています。核兵器禁止条約は、核兵器を一瞬にしてなくせる訳ではない、国連は戦争を一瞬にして全部無くす訳ではない。それは現実です。しかし、そういった決まりごとがなくなってしまったら、世界はより混沌としておかしくなります。やはり国連には国際法があり、この国際社会で何が許されるのか、何が許されないのかということをきちんと条約や、権利で明らかにすることが、この世界の秩序を形作るのです。日本も今は、アメリカの核の傘の下にあるけれども、それを乗り越えて朝鮮半島の南北共に、中国や極東アジア、またアメリカも協力する形で非核化への道を地道に目指して頂きたい。モンゴルの市民団体をモンゴル政府が後押ししています。モンゴルという国は、核を保有するロシアと中国に挟まれています。しかし自分たちは持たないということを宣言し、しかも韓国や北朝鮮とも対等に外交関係を結んでいます。

最後に核兵器禁止条約に日本に参加してもらうには、具体的にはどうすれば良いのか。

日本はいかなる場合にも核兵器の保有に援助や協力はしないということを宣言をすることが大事です。日本は核兵器について、我が国はNATOの進行は出来ませんと通告すれば良いだけです。冷静な判断を日本の政治家が言わなければいけないということです。日本の政治家たちの禁止条約の賛同はどのくらいあるのかということをサイトで見られるようにしていますから是非ご覧になって頂きたい。この禁止条約に参加してもらうために、本格的なサイトを来年に立ち上げようと準備をしておりますし、クラウドファンディングもやっております。ご協力いただければと思っております。〟と述べ、終了した。

(この後のディスカッション部分は省略)

 

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●川崎哲(あきら)氏

ピースボート共同代表。2017年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の国際運営委員兼会長(2012~14年同共同代表、14年から国際運営委員、21年から会長兼任)。核兵器廃絶日本NGO連絡会の共同代表として、NGO間の連携および政府との対話促進に尽力してきた。ピースボートでは、地球大学プログラムや「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」をコーディネート。2009~2010年、日豪両政府主導の「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」でNGOアドバイザーをつとめた。恵泉女学園大学、立教大学などで非常勤講師。日本平和学会理事。著書に『核兵器 禁止から廃絶へ』(岩波ブックレット、2021)、『核兵器はなくせる』(岩波ジュニア新書、2018)、『僕の仕事は、世界を平和にすること。』(旬報社、2023)など。2021年、第33回谷本清平和賞受賞。

 

 
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