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元厚労副大臣・武見敬三氏にこれからの社会保障を聞く!

2014/06/01

日本が皆保険制度を導入して半世紀が過ぎ、2011年9月1日には『ランセット』日本特集号「日本:国民皆保険達成から50年」が刊行された。その特集号発刊にあたり研究チームを組織、武見氏はそのリーダーとして重責を果たされた。

これまでも日本の皆保険制度は世界から高い評価を受けてきたが、このランセット特集号の影響も大きく、ますます注目を集めているところである。いっぽう国内では日本の社会保障制度そのものが危うくなっているようである。日本の皆保険制度の尊い理念を守り、盤石とした制度に再構築するには、どのような道筋、方策がとられていくべきなのか?

武見敬三氏に今後のことを話していただいた。

 

UHCの定義に合致し世界の模範となる日本の皆保険制度を持続可能な制度としていくための努力を続けます!

元厚生労働副大臣・東海大学教授
自民党参議院議員  武見  敬三  氏

―世界的に有名な『ランセット』に日本の皆保険制度について掲載された評価や影響はどのようであったのか教えてください。

やはり相当の効果・影響があったと実感しております。もともと日本の皆保険制度に対する関心というものが背景にあって、ランセット日本特集号が組まれた訳です。私は、たまたまその責任者として研究チームを組織し、6つの論文と8つのコメンタリーからなる特集号を編纂しました。これには国際的な研究者がみんな1つの研究チームに入ってデータを解析し論文を作成する等、特集を組んだ訳ですが、おおよそ其処でみんなが得た共通の認識というのは、日本の医療制度というのは、貧富の格差無く効率的に健康社会を作ったという大変有難い評価が既にあった訳です。それで2011年9月にランセット日本特集号が発表されると同時にまず世界銀行がユニバーサル・ヘルス・カバレージ(universal health cov-erage)に関する共同研究をやりたいと申し入れをしてきました。ユニバーサル・ヘルス・カバレージ(universal health coverage)はUHCと呼んでいますけれども、これは言うなれば、「誰もが負担可能なコストで予防を含む適切な医療サービスにアクセス出来る」というのがWHOの2005年総会の時に採択されたUHCの定義です。これが今日、保険システムを強化するという考え方を象徴する重要な考え方に今なってきています。日本の皆保険制度は正にこのUHCを制度の中で実現しております。保険証1枚あれば何所でも医療機関で自分で患者負担分だけ支払えば適切な医療が受けられる訳ですから日本は正にこれを50年も前に実現していたということになります。

このランセット特集号を編纂する時の主体となった組織が日本国際交流センターで、私はそこのシニアフェローをしております。ここが日本の財務省の国際局と連携をしている世界銀行側の人材開発局と共同研究を開始しました。これは日本を一つの主要なケーススタデイとした上で、その他約8カ国のケーススタデイを行って国際的な比較分析をしながらUHCを実現するための政策論を組み立てていくという目的で既に共同研究が始まりました。この共同研究は今年の12月に完了することになっており、その成果を踏まえて大規模な国際セミナーを東京で開催する予定です。こうした皆保険制度をこれから創設したいという途上国・中進国が沢山ある中で、それらの国々が先ず必要とするのは、政策人材です。UHCというのは、夫々の国の実情に応じてどういう風に制度を作っていけば実現するかを考えて実行していく重要な役割をもち、それについては政策人材が担うことになります。しかも、そういう方達は政府で仕事をしていたり、或いは研究所の研究者であったりする訳ですが、そういった政策人材がやはり途上国・中進国では不十分です。そこで世界銀行がこうした政策人材を養成するためのフラッグシップ・セミナー(flag  ship  seminar)というのを行っています。従って、我々の共同研究の成果を踏まえて是非日本とタイアップでこのフラッグシップ・セミナーを東京で開催したいと今提案してきております。ということで共同研究のための国際セミナーの直後に東京で第一回開催に向けて準備が進められています。私は合同で設置した準備委員会の共同議長を務めています。

しかも国際機関から出てきた様々な反応に合わせて、今度は単独で国家レベルで日本の皆保険制度について関心を持っている国が現われてきまして、例えばタイは今年の1月に日本の医療保険制度を調査するための代表団をわざわざ派遣され、タイの保健省を中心として構成された調査団の団長は、インラック首相の首席補佐官でした。この調査団の方たちは国立病院の改革等が目的で、厚労省の保険局を実際に見学していかれました。彼らの関心は、日本の皆保険制度は2年に1度診療報酬制度を改定することで「医療の質とコスト管理」を同時に行っている、世界中でこんなに上手く「医療の質とコスト管理」を同時に行う仕組みを持った国は日本以外に無いと。従って是非タイも今後UHCを実現していく過程でこの日本の制度を参考にしたいということを言ってきまして、この5月にはそれをテーマにしたセミナーをバンコクで開いて日本からも保険局の担当者が参加することになっています。また3月下旬にはベトナムの保健大臣が来日されて、やはりこの日本の皆保険制度について、非常に関心を持たれ、これからいろんな形で日本の制度についての研究調査を進めたいということを話されました。他にも厚労省のほうに数カ国から日本の皆保険制度について研究調査をしたいといった申し出が来ているという話を聞いていますから、このベトナムとタイだけではないんですね。従って、どこまでランセットが発火点になったのか分りませんが、日本の皆保険制度というものが今途上国・中進国の間で参考になる一つの制度として大変見直されております。

 

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