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柔道整復師国家試験対策
【第10回:柔道整復学の必修項目 ―総論・上肢骨折編―】

2015/11/16
肩峰下インピンジメント症候群
1)
インピンジメントが起こる部位

烏口肩峰アーチ(肩峰、烏口肩峰靭帯、烏口突起による)
棘上筋出口の狭小化

2)
病態

腱板の炎症、変性、肩峰下滑液包炎

3)
発生機序

外転位での最大外旋位から内旋位動作

 

上腕二頭筋腱損傷
1)
好発年齢、好発者

40~50歳肉体労働者

2)
断裂損傷と、炎症性損傷の発生機序を答えよ

断裂損傷:重量物の挙上(収縮、緊張した筋に突発的に伸長力)
炎症性損傷:肩関節外転外旋運動により、長頭腱の小結節との摩擦
(腱の変性を基盤としている)

3)
徒手検査法

ヤーガソン:直角位、回外抵抗
スピード:伸展位で屈曲
エルボーフレキション:屈曲抵抗

 

その他の肩部軟部組織損傷
1)
ベネット損傷とはなにか

肩関節窩後下方の骨増殖による骨棘

2)
ベネット損傷時の骨棘形成部位

上腕三頭筋長頭起始部付近、関節窩後下縁部

3)
ベネット損傷時に絞扼される神経部位と神経

クアドリアテラルスペース部の腋窩神経

4)
SLAP損傷とは何か

肩関節上方関節唇(上腕二頭筋腱付着部)の裂離、断裂

5)
リトルリーガー肩とは何か

上腕骨近位骨端軟骨板の炎症、離開(疲労骨折)

6)
動揺性肩関節とは何か

肩関節構成骨や構成筋に明らかな異常がなく、肩関節に動揺性を認めるもの

7)
動揺性肩関節の主要な動揺方向と誘発テスト

下方  サルカス徴候

 

膝部軟部組織損傷

側副靭帯損傷
1)
好発部

内側側副靭帯>外側側副靭帯  近位、遠位付着部

2)
単独損傷と合併損傷どちらが多いか、また合併損傷部位

合併損傷>単独損傷
前十字靭帯、内側半月⇒unhappy triad

3)
検査法と実施法

側方動揺テスト:膝関節伸展位、軽度屈曲位で内外反(損傷高いと伸展陽性)
牽引アプレイ:腹臥位、牽引内外旋

 

前後十字靭帯損傷
1)
前十字靭帯単独損傷と合併損傷の発生機序

前十字靭帯単独損傷: 
ジャンプ等の着地、急停止、方向転換(非接触多い)、大腿四頭筋の強い収縮
合併損傷:外転、外旋(回旋)による(接触が多い)
後十字靭帯:過屈曲、過伸展、脛骨前面からの強打

2)
特徴的な症状

関節血腫(膝蓋跳動)、膝崩れ(慢性期)、膝部不安定性 階段の下り、しゃがみから立ち上がり等の不安感

3)
検査法と実施法

前方引き出し、ラックマン(角度の違いは、腫脹度)
→エンドポイントの確認
Nテスト:屈曲(膝関節前方回旋不安定性)、伸展時に外反内旋40〜20°で出現 ザグサイン、後方押し込み

4)
予後

前十字:観血例でないと十分な修復はない
→一般的に腫脹が退くまで実施しない          
→四頭筋、内側広筋、屈筋伸筋の同時収縮訓練で様子見     
 伸展は絶対禁忌、膝崩れ現象の頻度が高い→Ope
後十字:修復不能

5)
前十字靭帯の運動療法

膝関節拘縮の予防、膝関節安定性の確保、膝関節関連筋の筋萎縮 、完全伸展位と成らない範囲での膝関節屈曲伸展運動(CPM)、等尺性収縮運動(パテラセッティング、quadriceps setting exercize) 、下肢伸展位挙上訓練

 

半月板損傷
1)
好発部位、年齢

内側半月板、若いスポーツ外傷
※形態異常として、外側の円盤状半月でおこる

2)
発生機序

膝関節屈曲、伸展時に下腿に回旋が生じ発生(屈曲>伸展)
内側:外旋、外側:内旋

3)
特徴的な症状

関節血腫(膝蓋跳動)、嵌頓症状(完全伸展不能)、弾発症状、膝崩れ

4)
検査法を答えよ

マクマレー:屈曲位、内旋(外側)外旋(内側)角度浅い程前方
圧アプレー:内外旋
ワトソンジョーンズ:伸展強制
ステインマン:内外旋しながら伸展

 

足部軟部組織損傷

距腿関節損傷
1)
好発部

内側靭帯<外側靭帯
前距腓>踵腓>後距腓 重症度によって進む、
裂離(剥離)骨折もある
※外返し→三角靭帯、脛腓靭帯、剥離あり得る

2)
圧痛部、腫脹部、皮下出血斑部

前距腓:外果前方、
踵腓:外果下方、
後距腓:外果後方
外果周辺に腫脹、外果下方に皮下出血斑

3)
テスト法

前方引き出し:
①前距腓完全断裂:前方に移動        
②部分断裂:内旋を加える、外果前方に間隙
内(外)反動揺(距骨傾斜角):踵腓靭帯の確認
X線ストレステスト:5−15° 前距腓:15−30° 踵腓:30°完全

4)
代表的な損傷予防のトレーニング

チューブによる長短腓骨筋の外反(求心性収縮)トレーニング

 

肩鎖関節脱臼
1)
チューブによる長短腓骨筋の外反(求心性収縮)トレーニング

上方脱臼、下方脱臼、後方脱臼、上方脱臼好発
※男性に多く、15〜30歳に多い

2)
肩鎖関節脱臼の損傷分類

Ⅰ度:関節包、肩鎖靭帯の部分断裂 関節安定性良好 捻挫型
Ⅱ度:関節包、肩鎖靭帯完全断裂 関節安定性不安定 不全脱臼
Ⅲ度:Ⅱ度+烏口鎖骨靭帯完全断裂 完全脱臼→観血療法

3)
肩鎖関節上方脱臼における固有症状

階段状変形、反跳症状(ピアノキー、弾発性固定)

4)
肩鎖関節脱臼と外見上類症鑑別しなければならないもの

鎖骨外端部骨折

5)
予後について

固定が困難な為に、変形治癒(階段状変形)を残すことが多い
→機能障害は、陳旧例では、鎖骨遠位端部の肥大変形、石灰沈着例もある

 

如何でしたか。柔整は必修問題14題、一般問題45題出題されます。一般問題の約4割程度は必修問題の範囲から出題されている傾向となりますので、柔整の必修問題をしっかりと把握しておけば、ある程度の対応は可能になると思います。必須問題においては、14題中、悪くても2ペケ以内に抑えておかないと合格は厳しくなります。著者の経験上、柔整で3ペケとなった人で合格した人はおりません。また、一般問題45題のうち、合格のボーダーは35題ぐらいです。したがって、柔整の必修問題の範囲を高い精度で自分の知識とすることは大変重要となってきます。

これまでの解剖、生理の苦手意識の克服と共に、柔整必修項目に関しては得意としなければなりません。柔整が得意というアドバンテージは今後の勉強をすすめる上で、精神的にもかなり有意となります。今回の部分をまずはしっかりと自分自身のものとなるように励んで下さい。年内に解剖、生理、柔整必修項目をかなりの精度で把握しておくとかなり勉強上でも精神的にも楽になります。逆にこれらの教科を年明けまで伸ばしてしまうと、年明け精神的にもかなり追い込まれてしまいますのでしっかりと準備して下さい。

来月は2回にわたり一般臨床医学の主要ポイントをお送りします。

 

●プロフィール

西村 雅道
柔道整復師、鍼灸師、柔道整復専科教員、医科学修士
北斗総合整骨院院長 (一社)日本整体協会NSTインストラクター、柔道整復師、鍼灸師、、柔道整復専科教員、医科学修士 
平成15年より平成26年まで学校法人杏文学園東京柔道整復専門学校に在職、同校の国家試験対策を牽引。また国家試験対策塾『杏文塾』の代表として同塾を運営。著書に一般臨床ポイントマスター。現在北里大学大学院博士課程に在学。

 
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