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第25回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催!

2017/01/01
「平成28年熊本地震」における活動状況報告

公益社団法人熊本県柔道整復師会 松村圭一郎氏

全国の皆様方には、今回の「熊本地震」発生に際しまして、心温まるお見舞い、ご支援を賜り誠に有難うございました。心より厚く御礼申し上げます。

熊本地震は1回目4月14日午後9時26分震度7が発生し、2回目16日午前1時25分に震度7が発生しました。

当会では4月14日、1回目の地震が発生した翌日の15日から、被災者救護活動を実施致しました。持続的に活動していくためのチーム編成等、準備を進めていた最中、2晩続けてとなる震度7の地震が再び発生し、県内広域に亘り甚大な被害が更に拡がりました。

当会でも会員の多くが被害を受け、車中泊や避難所生活を余儀なくされた会員が、全会員の43%にも上りました。

現時点では、柔道整復師はDMATのような体制にはありません。

当会は県と「防災協定」を結んでおり、被災したにも拘わらず半数を超える会員が被災直後より災害医療活動を行いました。無論、当会からの強制ではなく会員の意思によるものです。

また、全国の柔道整復師の皆様から災害医療活動を支援して頂くためにも、まずは(公社)熊本県柔道整復師会が行政、避難所等と協議・了承の下、災害医療活動を行い、受け入れ態勢を整えることが必要です。

日本赤十字社本部からの依頼により、心身のケア活動として当会会員で構成している熊本県接骨・整骨赤十字奉仕団が行政職員の方々へ、6月11日~7月3日(実働5日)、延べ130名を対象に施術を行いました。

今回、災害医療活動を行う中、観えてきたものが多くありご報告します。

2回目となる震度7が発生して、状況が一変し予定を変更せざるを得なくなり地域で徹夜の必至の救護活動を行いました。肋骨骨折、鎖骨骨折を含む外傷性疾患を多数施術致しました。

当会としては会員が行いやすい地域での救護活動を指示しました。救護活動は強制ではない。我々誰もが被災者なんだ、夫々に行動する事情があるとして会員全員に周知しました。

前震から9日目の4月22日、会員に限界がきました。初動期はどうしても被災県の会員が動かなければなりません。施術所の復帰、また不安を抱える家族等を守る立場でもあります。

車中泊の会員も多数おり疲労がかなり蓄積していました。九州各県へ応援を要請しました。

4月23日、九州各県より応援に来て頂き、担当地区を割り当てて同じ県同士の会員の方でやって頂くというコーディネートをさせて頂きました。

避難所責任者等と意見交換を行って、医療機関復旧に伴いまして、「病院への回帰を促す」が当会の方針です。

日赤関係者の方から〝あなた達のお仕事は大変素晴らしいお仕事ですね〟という言葉を頂きました。良かったと思うことは、災害医療活動の理念を思いました。

会員が使命感を感じること、責任をもってやるということで、行政等との信頼関係の構築ができると考えます。日赤との共有関係が構築されていたので大変ご協力を頂いたと思います。

県との防災協定を締結しており、活動のお墨付きをもらえたことも良かったと思います。

災害担当理事を2名担当させたことも良かったと思っています。4年連続で災害医療の研修会を開催し、何をすべきかを理解していましたので対応が早かったと思います。

また災害活動の予算提示をして、県の補助金も組んでおります。会員間の連絡体制、ラインが有効でした。

その他、重要と思われることは、各県に精鋭チームを編成する必要があると私は思います。

被災地の会員の活動は1週間が限界とみています。各県合同でのチーム編成も必要だと思います。県内単一では、不十分ではないでしょうか。応援要請の派遣を明確にすべきです。

ガイドラインの作成が必要だと思います。財源の確保が必要です。参加することによって人の交流に繋がるのではないでしょうか。

「災害医療柔道整復師」について、災害医療は歴史的にも柔道整復師の原点です。柔道整復師に対する誇りがもてると思います。

外傷性疾患に対応できる柔道整復師は数少ない職種です。トリアージ「緑色」が可能です。

人によっては、「黄色」であっても対応できる方は多数いらっしゃると思います。停電や機器を使用できない環境でも対応が可能です。災害派遣、会の活動には限界があります。

組織力を活かした取り組みが必要であり、ボランティア活動には限界があると考えております。

※発表終了後にディスカッションが行われ、長尾座長より〝被災地の方にしか分らないことで、他府県からボランティアとして入られ帰った後に地元の人たちからのクレームや、これは困った、これだけはやめて欲しい、やってはいけないことを聞かせて頂きたい〟との質問に対し

〝来ただけで終わってしまった〟〝当たり前のことを当たり前にやる。アピール度を強くしない〟〝日曜日はいっぱい居たが月曜日は誰も居ないという、行ったり行かなかったりでは信頼関係は成り立たない〟等々出された。またフロアから〝「コーディネート」と「災害支援ガイドライン」という言葉が出てきているが、先生方の県ではどの程度進んでいるか?各都道府県で作ったほうが良いのか、全国統一形式みたいなものがあったほうが良いのか?〟や〝今後「多職種連携」がキーワードになってくると思いますが?〟といった意見が出され、それに対し〝多職種連携も良いと思うが、多職種との棲み分けも必要である〟等の考えが述べられ、盛大な拍手の中、終了した。

 

特別講演Ⅰ『心身の健康と呼吸』

東京有明医療大学副学長 本間生夫氏

座長は、一般社団法人日本柔道整復接骨医学会理事・松岡保氏が務めた。

心には「情動」が絡んできます。情動というのは、喜怒哀楽の感情といってもよく、情動にはポジティブな感情とネガティブな感情があります。
こういう感情は、脳の中で作られています。
大脳系の扁桃体が情動を中枢する第一中枢と言ってもよいと思います。

ここに呼吸がものすごく関わってきます。情動がないと社会で人々と一緒に生活することは出来ませんし、人との絆を強固にするのも情動のお蔭です。この感情・情動は4才までの間に確立されてしまいますから、それまでの教育が非常に重要です。

情動は5、6歳までに教育しないと、固まってしまいます。
小学校に入る前に情動の教育をしなければいけませんが、幼児教育の取り組みは中々されていません。

東日本大震災が起こった時に〝日本人というのは奪い合いをしない〟〝絆が強いと感じた〟と外国から称賛されましたが、おにぎり一個でもちゃんとみんなで分け合っている。ここはやはり情動というものが出来ていることになります。

情動の中でも不安というのはネガティブな情動の最も代表的なもので、誰もが経験したことのある感情です。不安は非常にストレスに結びつきます。不安尺度というのは、不安の度合を点数化したものです。非常に不安になってくる時に呼吸数が増えています。

呼吸数と不安度は相関します。呼吸数の研究は動物実験でも出来ますが感情の研究は出来ません。扁桃体には呼吸が絡んでおり、この扁桃体で感情と呼吸が一体となって生まれているということになります。

2011年3月11日に東日本大震災が起こってから、政府はいろいろな対策、被災地の子どもにどのように支援介入していくかを考えました。当時どのように心に添って介入するかという方法論があまり確立されていませんでした。この研究班に私も加わり、私のテーマは、子どものリラクゼーションのための呼吸法でした。

東日本大震災被災地のこどもの心のケアを、岩手県宮古市の熊野地区の鍬ケ崎小学校で、呼吸体操で体を動かすことと生け花で美しいものに触れる、この2つのことを行いました。

呼吸筋ストレッチ体操"ラッタッタ体操"は、呼吸で心を癒しリラックスすることでストレスから解放されるものです。この体操をよりやり易くするために体操の歌も作りました。子ども達の笑い声が聞こえてきたり笑顔が見られます。

感情と呼吸は密接に関係しています。被災地に限らずいろんな所で活用されればと思っています。子どもに限らず、感情の癒しとか、どの年代でも誰が行っても良いものです。

日本は高齢社会ですから健康寿命を伸ばすことが重要になってきます。高齢者は加齢によって呼吸機能だけではなく、様々な機能が低下します。

ラッタッタ体操を高齢者の方にやって頂くと最大吸気量が増えて肺機能が上がります。また介護の支援者は、仕事でストレスを感じている人が60%位います。

呼吸筋のストレッチ体操の効果は、

1.情動・気分の改善(不安の解消)
2.肺機能の改善(老化予防)
3.息苦しさの軽減(胸がスッキリ)などの効果が得られます。

文化というのは非常に重要で、特に日本の伝統芸能である「能」は、呼吸法と非常に絡みます。呼吸が変わると身体の様相が変わる。能というのは、心の表象、内的な表象である等を話し、最後に会場のみんなでストレッチ体操を行って和やかに終了した。

 

※口頭発表は、【Abstract】を記載しましたが、紙面の都合で【方法】を割愛させて頂きました。

 

 
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