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第24回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催!

2015/12/01

<口頭発表の中から抽出>

『スポーツトレーナー派遣事業が部活動時の外傷・障害発生件数に及ぼす効果』

橋口浩治氏(はしぐち整骨院)

【Abstract】

背景
文部科学省による「運動部活動指導の工夫・改善支援事業」等の運動部活動改善事業の趣旨を受け、長崎県教育委員会では平成24年度から「スポーツ医・科学等を活用した高度な運動部活動指導体制の構築」等を目的として、スポーツトレーナー派遣事業(以下、本事業)を行った。そこで本研究においては、本事業が外傷・障害発生件数に及ぼす効果を検証することを目的とし、N高校を対象に本事業介入前後のスポーツ傷害発生件数の推移を調査した。
方法
派遣期間は平成24年10月1日~平成27年2月12日、派遣回数は106回。申し込みがあった運動部に対し、傷害予防のトレーニング法やコンディショニング法の全体指導、およびケガに対する個別指導を行った。部活動時の外傷・障害発生件数は、養護教諭管理の災害発生記録を基に抽出し、X2検定を用いて介入前(平成23、24年度)と介入後(平成25、26年度)の値を比較した。
結果
平成23年度(総部員563名)の発生件数は77件、平成24年度(総部員613名)の発生件数は81件であったが、介入後の平成25年度(総部員599名)は65件、平成26年度(総部員618名)は67件となり、介入後は外傷・障害発生件数が有意に低下した(P<0.05)。
考察とまとめ
2年以上継続的に全体及び個別の細やかな指導を行ったことでN高校における比較においては一定の傷害予防となったことが示唆された。このことはトレーナーの介入が部活動における安全面での効果を発揮する可能性も示唆する。先行研究も少ないため、今後は長期的に介入し、特にどのような指導内容が、どのような外傷・障害に効果が高いかなどを検証したい。また、本事業に対応できるトレーナーの育成も課題となる。
『柔道整復診療ガイドライン』(腰部捻挫の治療)

伊藤篤氏(鶴亀整骨院)

【Abstract】

国民生活センターに寄せられている健康危害相談の中で、最も多い部位は腰部・臀部である。そして関係機関への要望として「一定以上の安全性を担保するためのガイドライン等を作成するよう要望する」とある。昨年の学術大会において、柔道整復診療ガイドライン(腰部捻挫の診断基準解説)を発表したので、今回は治療篇を発表する。7つの分類「急性型腰部捻挫」「神経症状を伴う急性型腰部捻挫」「骨損傷型腰部捻挫」「腰椎分離症型腰部捻挫」「一般的腰痛症型腰部捻挫」「複合型腰部捻挫」「仙腸関節型腰部捻挫」それぞれに対する基本的な処置と注意点を解説する。腰部捻挫治療のガイドラインを作成するにあたり、誰もができる簡単な方法であることに重点をおきまとめてみた。内容はまだ触り程度なため具体的な部分が足りないが、これからさらに研究を続け深めていくようにしたいと思う。また柔整の治療は、患部に直接手をかけることをするため、やり方を間違えると悪くなることがある。そのため安全性を担保するためには、脊椎・骨盤への強いマニピュレーション(回転伸展等の急激な操作)は禁止にする必要があると考える。

『前頭前野の脳活動からみた施術効果の評価』

松田康宏氏(日体柔整専門学校・日本体育大学)

【Abstract】

目的
柔道整復師が行う施術結果の評価は、患者の主観であり、客観的な評価方法は確立されていない。近年、身体に痛みや不快感を生じさせると、脳の種々の部位が賦活化され、情動変化を伴い様々な痛み情報や不快情報は脳の前頭前野へ入力され、痛みや不快感が表出されることが報告されている。そこで我々は脳の前頭前野に注目し接骨院を訪れる患者に対する施術効果の客観的な評価方法を見出すための研究を行った。
方法
本研究では、NIRS装置と電子角度計、VASを用いて、大腿部後方筋群の柔軟性低下を訴える対象者にSLR(膝関節伸展位からの股関節屈曲運動による筋の伸展)を行った。施術前・施術後のSLR実施時の股関節屈曲角度と前頭前野の活動の変化(Ox-Hb濃度の変化)、VASによる心理的評価を併用し計測した。全対象者の施術は柔道整復師の手技療法のうち軽擦法、揉捏法、圧迫法を行い、手技療法の範囲は計測側の殿部から大腿部後方の筋群とした。
考察
何らかの痛み刺激が生じた際に発生する感覚情報の伝導路は、一次体性感覚野に投影され、二次体性感覚野を経由して前頭前野に入力すると報告されている。今回の研究において前頭前野のOx-Hb濃度の上昇は、前頭前野が興奮したことによると考えられる。
結果
前頭前野のoxy-Hb濃度の変化は全対象者に認められた。全対象者において、施術前に計測した股関節最大屈曲角度で見られたoxy-Hb濃度の上昇とVAS値が、施術後、施術前と同じ股関節最大屈曲角度に於いてoxy-Hb濃度とVAS値が減少した。そして、施術後においては股関節最大屈曲角度が増大した。更にoxy-Hb濃度の変化とVAS値の変化にもパラレルな関係があることが判明した。これらの結果から、柔道整復師の施術によって施術効果を前頭前野の神経活動から客観的に評価できることが示唆されると考えられる。
『医業類似行為の変遷―昭和35年最高裁判決以後―』

酒井正彦氏(酒井整骨院)

【Abstract】

昨年、昭和35年最高裁判決までの医業類似行為について発表したが、その定義は、①無害な無資格医業②按摩、はり、きゅう、柔道整復以外の電気光線器具などによる医業という二つの側面を持っていた。そこで今回は昭和35年以降現在までの間に、何が起こったのかを、厚生労働省通達を中心に調査した。その結果、厚生労働省は昭和35年最高裁判決の結果を受け、昭和35年6月13日(医発第467号)付通達では、判決の示した医業類似行為は、法第12条の行為であって、法第1条「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう」の無資格行為を含まず、法第1条の無資格行為は禁止行為であり法第1条により第14条第1号で処罰されると明確に示した。しかし昭和41年9月26日(医事第108号)では広義の医業類似行為の概念を示し法第1条の無資格行為と、12条の行為を同一視した通達を出している。そうした内容は前述の通達とは矛盾している。その後、平成3年6月28日(医事第58号)「医業類似行為に対する取扱いについて」とする通達では、法第1条の行為は医業類似行為であり無資格で行えば法第12条により法第13条の5で処罰されるとして適用条文を間違った通達を出している。これらの通達は一貫性がなく、適用条文の間違いも見られることから、厚生労働省では、医業類似行為に対し正しい解釈が出来ていないと思われる。

『保険者への対応―療養費の支給対象―』

牛山正実氏(牛山接骨院)

【Abstract】

保険者は患者調査により「療養費の支給対象となる負傷とは認められないため」とする一文で不支給を通知してくる。今回はこのような保険者からの返戻に対する対応について発表する。保険者の不支給通知の問題点は、不支給理由にある「療養費の支給対象は負傷だけ」なのか、また「負傷とは認められないとした診断基準」はなにか、ということになる。第一点は、療養費の対象疾患は「負傷だけ」とする厚生労働省の文書はなく、保険者の根拠は不明確である。では逆に対象疾患は何であろうか。業界の統一見解が必要である。第二点は、保険者の外傷ではないとした診断基準はどのようなものであろうか。保険者は、「患者調査によって患者等に負傷の事実を確認する」とし、柔道整復師に対して「負傷の事実が明らかとなる患者自身が記載した予診票」あるいは「患者からカルテ等にその内容に相違ない旨の署名を求めるなどでご対応ください」としている。しかし厚労省は診断の内容に関する通知は出しておらず、また臨床上の診断基準とはなり得ない。では柔道整復師はどのように診断したのであろうか。業界では診療の基準いわゆるガイドラインを備え、それによって診断する対応が逆に求められている。学会による統一見解や、診療基準いわゆるガイドラインの作成により業界の能力が高まることが期待される。

 

以上、口頭発表146題、ポスター発表70題が行われ好評を博した。

 

 

 
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