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第24回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催!

2015/12/01

平成27年11月7日(土)・8日(日)の両日、「朱鷺メッセ」新潟コンベンションセンターで第24回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催され、日本全国から多くの柔道整復師が一堂に会した。

 

大会会長講演 『災害医療について』

新潟医療技術専門学校校長・吉川惠次氏

吉川氏は講演で、〝世界に目をむけると各地で頻発する爆弾テロ等、様々な災害が増えています。阪神淡路大震災、地元新潟での新潟中越地震、新潟中越沖地震、更には東日本大震災と矢継ぎ早に大震災が発生し、その度に課題が明らかになり、対策が強化されてきました。災害医療は災害対策全体の中の一部で、行政、自衛隊、警察、消防、保安庁、更にボランティア等々様々な組織の活動と併行して初めて上手くいくとして阪神淡路大震災以降総合的な災害対策がかなりキチンとしてきています。

災害医療の基本的なコンセプトは、限られた医療資源(人的、物的資源)を可能な限り有効に使い、出来るだけ多くの傷病者を救うということです。医療の効率を強く意識する点が、平常時の医療と大きく異なる点です。災害医療の内容は、発災からの時間経過において、外傷治療、避難所で悪化した持病への対応、さらには心のケアまで刻々と変化して幅広い。N(nuclear:核兵器)、B(Biological:生物兵器)、C(Chemical:化学兵器)による、いわゆるNBC災害(NBC terrorism など)においては、通常の災害医療対応のほか、兵器の検知(detection)、同定(identification)、除染(decontamination)およびゾーニング(zoning:地域規制)といった要素が加わりいっそう複雑である。ポイントは、地域の医療能力と治療を要する傷病者の数がアンバランスであることです。圧倒的な医療需要が存在し、しかも限られた時間での医療需要で、地域の供給体制が追いつかない状況下での医療になる。自然災害、人為災害、特殊災害に分けるが、最近では竜巻や土石流、雪崩等が新たに注目されている。

人為災害の中にNBCテロへの懸念が世界に拡がっている。時間が経過してからの問題として、特に阪神淡路大震災で注目された心の問題PTSD(心的外傷後ストレス障害)や圧挫症候群(クラッシュシンドローム)ありました。①トリアージ、選別(triage):triage tag(黒、赤、黄、緑)②トリートメント、応急処置(treatment)または、安定化(stabilization)③トランスポーテーション、搬送(transportation)搬出(evacuation)であり④検死、遺体管理などがある。

トリアージ(フランス語で選り分けるという意味)は、負傷者の分類に用いられ①犠牲者を外傷または疾病の重症度によって分類する。②治療の優先順位を決めるといった2つの重要な要素からなる。軽症・重症・最重症・回復の見込みのないものに選り分けし、トリアージタッグをつけて治療の優先順位をつけ、災害時の医療の効率をあげ、混乱を回避するものである。私は、1981年から1982年まで、タイのカンボジア難民キャンプに派遣され、初めてトリアージという言葉を理解しました。 東南海地震等が想定されている今日、広域搬送拠点を作る試みもなされており、各被災地と連絡を取り合うシステムもかなり改善されていますが、システムを作っても使う人がしっかり使わないと役に立たないという点もしっかり認識する必要があります。

核爆弾、生物化学兵器のほか、最近では自爆テロ(E:explosive、高性能爆弾)、放射性物質を混入したいわゆるダーティ爆弾(R:radiological---NBCとE、Rを併せてCBRNE、シーバーンテロという用語も用いられています)もあり、伊勢志摩サミットが行われるので、テロ対策をやっておりますが、これからはそういったものも含め、総合的な対応が必要になってくるのではないか〟と話した。

 

座長の櫻井康司氏から〝今は想定をこえた災害が世界で起こっており、世界全体がフラッシュバックするようなことも多分起こると思います。患者が大量に発生することになると、柔道整復師のマンパワーを地域の医療資源として、医師と連携して取り組んでいます。今日会場におみえになっている佐賀県の隈本先生は、県とリンクして佐賀県柔道整復師会で取り組まれている活動を報告願いたい〟と述べた。

佐賀県・隈本氏は、〝佐賀大学病院救急救命センターの先生から、災害訓練で柔道整復師として来てくれないかと依頼があり、会員3名が玄関前でのトリアージ等、医師や看護師さん達と一緒に活動させて頂きました。神戸、東日本にも仲間達と行きましたが、柔道整復師は外傷を取り扱う専門職として災害医療において大事な役目をしていると思います。東日本には群馬県から日赤の一員として石巻病院に行くなど、信頼関係を構築しています。信頼を頂くために災害時における活動は勿論、平時における教育制度をプロモートできないかお願いしたい。医療の先生方に柔道整復師を社会の医療資源の一つとして活用頂きますようお願いします〟等、報告。

再び櫻井座長が〝病院或いは地域の信頼関係のもと、全人医学的な部分をもっている柔道整復を吉川先生のフィールドの中で活用頂ける普及・啓発にご尽力頂ければと思います〟と述べ、吉川氏は〝やはり医療従事者同士の顔の見える関係が普段からあると上手くいきますので、そういう関係をしっかり作らないといけないと思っております〟と話された。最も時宜を得た貴重な講演が終了した。

 

インターナショナルセッション
『モンゴルにおける日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトについて(第2報)』

インターナショナルセッションが行われ、現在モンゴル国バガノール病院の准医師・看護師であるオユンバートル・ダリルチュルンさんが『モンゴルにおける日本伝統治療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクトについて(第2報)』と題し、発表を行った。

モンゴルバガノール健康センターにおける介助・治療の援助・評価をさせて頂きます。モンゴル国の地方では医療のインフラが整っていない。政府は地方での医療サービスの向上を課題としています。私が働くバガノール病院での外傷数と治療情報を報告し、柔道整復術を使った治療の効果と課題を検討することを目的としました。健康センターに来院する患者数は1日に474人、その内、外傷等の患者数は1日平均68人、全体の14%です。中でも多いのは膝や足首等の軟部損傷です。骨折・脱臼では頭部骨折、鎖骨骨折、肩関節脱臼、下腿骨骨折などが多い。健康センターには、3人の整形外科医がいます。徒手整復を行うドクターもいてコーレス骨折、肩関節脱臼などは徒手整復を行っています。また、下腿骨骨折、アキレス腱損傷等整復が困難な怪我についてはオペを行っています。私は主にリハビリテーションを担当しています。温熱療法や牽引の機械もあります。1日平均20人~30人の患者を治療しています。中でも変形治癒、関節拘縮になった患者さんの治療はとても難しいです。保存療法を行った患者さんとオペを行った患者さん、どちらも関節拘縮が改善されていない。これは外傷に対する初期処置とリハビリテーションが確立していないことに問題があります。早く損傷部が改善するために固定中にも出来ること、治療計画を確立する必要があります。柔道整復術は発症から治癒まで診ることが出来る技術ですので、どの期間で何をすれば良いのか、これをしっかり学んでいきたいと思います。今年、JICAプロジェクトの中で作られた柔道整復の技術に関するテキストブックとハンドブックを健康センターの先生方に配布しました。その後オペの数が減り、徒手整復の数が増えています。徒手整復について理解してオペを少なくすることで国の社会保障にも貢献できるので、大事なことと思います。モンゴルの医療の良いところと柔道整復術をうまくミックスさせ変形治癒や関節拘縮等で困らないように努力することが大事です。現在ここに参加している3人を含めて5人の指導者候補生が自分たちの故郷や夫々の地域で活動しています。病院でみる患者さん、治療の方法が難しいとも感じていますが楽しいです。現在の柔道セラピーをFacebookで公開しています。いろいろな怪我の情報や痛みを予防する情報をどんどんアプローチ、柔道整復術の広報を行っていきたいと思います。まだまだやらなければいけないことは、沢山ありますが一つ一つクリアし、モンゴルの医療が良くなるようこれからも努力したいと思います〟と纏め終了した。

続いて准医師のアルタン・エルディネ氏は〝5年前に柔道整復師の治療を勉強しました。私はモンゴルの一番遠い所で働いています。モンゴルでは骨折も打撲も脱臼もいっぱいあります。初めは大体手術をしました。今は柔道整復を行い成功しました。田舎で一般の骨折は肘の骨折、原因は馬から落ちて怪我します。医療機器のない病院のため診断はできません。患者さんの写真を撮って日本の先生たちに送ってウランバートルの病院に送りました。私の考えでは、モンゴルで患者さんに直ぐ近い医療であると感じました〟と話した。

次に准医師・ボロール・トゥーヤさんが〝私は2012年、初めて日本の九州に来ました。2008年、学生の時に初めて先生たちと会ってこのプロジェクトに入りました。いろいろな所で研修していろいろな術を勉強して、特徴がいろいろでした。モンゴルの人たちの中には少し痛みある時には病院に来ないです。自分の心で大丈夫って考える時がいっぱいあります。モンゴルと日本の違うところは患者さんのため、患者さんが病院に来る時に話をする、患者さんの心のこととか全部知っている、どうやって知っているかというと治療しながらその人と話して優しく心にも熱く入れて、痛みをとるためにすることは多かった。モンゴルでいろいろ問題があるんですが、この心の問題が多いなと考えることがありました。帰ったらやりたいこともありますし、モンゴルの何所でもこの指導者になりたいことも多いです。5人の仲間で頑張ってモンゴルの医学システムに本当に必要な柔道整復術は入りたいです〟と話した。

モンゴル発表

座長の橋本昇氏から〝お三方から発表がありました。いま発表された中で、この柔道整復術の最も良い点は、人の心に触れる、よく話しを聞いて、全ての事情を理解して施術を行うと。まさに我々が忘れていた言葉を思い出させてくれました。日本柔道整復師会国際部の人たちは今まで一生懸命努力をされ、漸く終了を迎える5年間の努力が決して無駄ではなく支えて頂いた日整の会員の先生方に深く感謝を申し上げたい。また日本での研修で本日おみえになっている栗原先生を中心とした整形外科の先生方、全国各地の会員の先生方に対し、お力添えを頂いたことを申し添えておきます〟と述べた。

この後、フロアの神奈川県・横山氏から感謝と労いの弁があり、日本柔道整復師会国際部・根來氏は、〝まず会場におられる方々、本当にいろんな方々に支えられ、天国にいる先輩も今日見てくれていると思います。このプロジェクトというのは心と心が通い合うもので、日本柔道整復師会そして外務省より国民の税金を使い活動していることに我々誇りを持ってやっております。有難うございました〟。

次に国際部・金井氏は、〝このプロジェクトを10年間携わってきまして、正直彼女たちがここまで成長して頂いて本当に嬉しく思っています。故・亀山先生は、「人づくりが一番大事」ということを常々申していました。彼女たちだけではなく、これから先彼女たちの後進が育っていくことを願っています〟。

最後に萩原国際部長から、〝5年間のプロジェクトでしたが、その前もあり約8年間活動して参りました。私は4年目ですが、やはり過去のいろんな先生方の活動の成果が表れてきたと思います。来年の9月からモンゴル国立医科大学に伝統医療としての柔道整復を学ぶコースの計画が進められています。この後は大学間同士の協定の中で進んでいくことと思います。日整の立場としても今後携わっていきたいと思います。よろしくお願いします〟等、総括と謝辞を述べた。柔道整復の「技と心」がモンゴルの研修生達に確実に伝承されたと言えよう。

 

平成27年度日本柔道整復接骨医学会賞の授賞式が行われ、櫻井会長から中澤正孝会員と井上知会員の2名が表彰状を授与された。

表彰

 

 
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