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第24回日本柔道整復接骨医学会学術大会が開催!

2015/12/01

第24回学術大会特別講演『心因性偽脊椎脊髄障害』亀田第一病院・新潟脊椎外科センター・本間隆夫氏、座長は(一社)日本柔道整復接骨医学会副会長・木山時雨氏が務めた。

シンポジウム

以下、主なシンポジウム・セミナー・分科会フォーラムの演題名・演者・座長名である。

シンポジウム 
柔道整復師の『今出来ること・今すべきこと』医師からの提言

『整形外科医と柔道整復師が補完し合う医療の実践』医療法人堺整形外科医院・堺研二氏、『当院における医師と柔道整復師の連携』医療法人社団宏友会栗原整形外科・栗原友介氏、座長・明治国際医療大学・長尾淳彦氏。

教育研修セミナー
『感染症について その知識と対策』

東京検疫所・東京空港検疫所支所・佐々木滋氏、座長・東京有明医療大学・山口登一郎氏。

実践スポーツ医科学セミナー
『ストーリーとしての肩関節疾患の治療戦略』

医療法人社団KOSMIこん整形外科クリニック・近良明氏、座長・前橋東洋医学専門学校・北澤正人氏。

整復治療手技固定分科会フォーラム 

『テーマ―足部外傷とその対応―』整復治療手技固定分科会・青柳康史氏・加藤義之氏、『足・足関節付近の外傷~日常診療で特によく見られる外傷とその合併症・鑑別診断~』かつしか江戸川病院院長・江戸川病院スポーツ医学・岡田尚之氏、『足根洞症候群について』富山県・高崎接骨院・高崎浩氏、『非外傷性足部疼痛軽減のアプローチ法の一例』共立総合整骨院・岩本大生氏。『足関節捻挫の既往の有無による下肢筋の反応時間の変化』帝京大学医療技術学部柔道整復学科・田口大輔氏、『Lisfranc 関節損傷 ~マクロ解剖からみた治療の考え方~』了徳寺大学健康科学・山本清氏。座長・山本清氏。

等、2つのセミナーと8つのフォーラムが開かれ、中でも「基礎医学研究分科会」が本年新しく発足、期待したい。

 

基礎医学研究分科会フォーラム
『マクロとミクロの視点から足関節捻挫を眺める~基礎と臨床の架け橋~』

東京有明医療大学・成瀬秀夫氏

【Abstract】

はじめに 基礎医学研究分科会は平成27年度に新しく設立され、第24回学術大会から本格的に活動することとなりました。本分科会の設立にご協力頂いた会員の皆様に心より感謝申し上げます。本学会の長年にわたる学術への取組みに触発された柔道整復師が解剖学、生理学および病理学などの基礎医学分野の研究に従事し、その研究成果が上がりつつあります。また、それらの成果はこれまで本学会の中で報告されてきました。しかしながら、その研究成果が十分に伝え切れていないのではないかとの思いから、基礎医学の研究成果を発表し、臨床を中心に行っている会員の皆様と議論する機会を頂きました。本分科会の目的は2つあります。1つ目は発表を聞いたフロアの皆様からコメントを頂き、その臨床現場の声を研究に還元することです。2つ目は臨床現場に基礎医学的研究成果を応用すること、すなわち、「このような根拠があるからこの治療を行うのだ」と明言できる研究成果を1つでも多く提供することを目指します。このように、本分科会の目的は臨床と基礎研究をリンクさせ、相補関係をしっかり築くことに他なりません。この目的を達成し、会員の皆様が行う臨床研究が盛んになることで柔道整復術発展の道がさらに開かれるものと考えています。さて、今回は足関節捻挫を取り上げます。損傷頻度の高い前距腓靭帯と踵腓靭帯に焦点を当て、それぞれ異なる視点で3人の研究者から発表して頂きます。皆様のご参加、そして活発な議論が交わされることを楽しみにしております。

 

『マクロ的視点から足関節周囲の靭帯の構造を眺める―機能解剖学的観点から―』

帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科・信州大学医学部人体構造学・掛川晃氏

【Abstract】

足部の複雑な動きには、距腿関節・距骨下関節・下脛腓関節など複数の関節の連動した運動が必要となる。距腿関節では、背屈時に距骨滑車がankle mortis にはまり込むため動きの自由度が低下するのに対し、底屈時はankle mortisの幅に対し距骨滑車後部の幅が狭いため、距骨の動きの自由度が増加するため、底屈位では靭帯が関節の安定性を担う。そのため、底屈位を伴う内がえし捻挫をした際に足関節外側の靭帯損傷が発生しやすくなる。また、内がえしなどにより距骨の内旋や背屈動作によって、下脛腓関節に離開力が働き前下脛腓靭帯(AITFL)損傷を起こすことがある。距骨下関節を構成する踵骨の後距骨関節面は凸、距骨の後踵骨関節面は凹となる構造をとり、距骨下関節の多方向への運動を可能にする。前距腓靭帯(ATFL)は、足関節の内がえし捻挫の際に最も損傷しやすい靭帯である。ATFLは長さが約20mm、幅は約8-10mm、腓骨下端部前縁から距骨外側結節の前下方に付着する靭帯である。上部線維と下部線維の2つの線維束に分かれることが多く、その間を血管が走行する。ATFLは距骨側付着部の手前で距骨外側結節に接する構造をとる。接触部には力学的な負荷が加わるため靭帯内に線維軟骨層が見られることがある。また、ATFLの腓骨側付着部は距骨側に比べ狭い範囲に付着するため牽引力が集中しやすく、裂離骨折を生じることがある。踵腓靭帯(CFL)は腓骨筋腱の深層に位置する索状の靭帯である。足関節の底屈位では弛緩しているが、背屈するにつれ緊張度を増し、中間位から背屈位の内がえしで損傷されやすい靭帯である。またCFLの前方部はATFLの下部線維と線維性に連絡することが多いため、複合損傷を起こすことがある。AITFLは、下部に分離したBassett 靭帯を有することが多い。この靭帯が広くせり出している場合は、背屈時にインピンジメントを起こすことがある。距骨下関節を補強する靭帯は実に複雑な構造を持ち、外側距踵靭帯、骨間距踵靭帯、距骨頚靭帯、伸筋支帯の線維束、前関節包靭帯、CFL、三角靭帯などの複数の靭帯によって様々な動きに対し安定化を保っている。アトラスや模型では理解し難い靭帯の付着部構造を解剖により正確に把握することは、柔道整復師の圧痛所見の取り方において重要であると考える。本発表では、足関節捻挫による外側側副靭帯損傷にフォーカスを当て、足部の関節構造とそれらの関節を補強する靭帯の構造や機能についてマクロ的視点から眺めた点を述べる。

 

『組織から足関節捻挫の治療をうかがう
―分子病態学的観点から―』

森ノ宮医療学園専門学校柔道整復学科・
森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科・外林大輔氏

【Abstract】

足関節捻挫は最も発生頻度が高く、柔道整復師も頻繁に遭遇する外傷のひとつである。またその判断・鑑別においては、近年超音波画像診断装置が広く用いられるようになり、治療方針に一定の指針を与えている。しかしその固定除去や後療法の開始などにおいて重要な情報となる「靭帯修復」については深く検討されていないのが現状である。すなわち固定除去や後療法の開始時期などについては、靭帯の修復状況から判断することは少なく、症状で判断されることがほとんどである。したがってその後に何らかの別の症状を訴える場合も多く、足関節捻挫の経験者のうち約70%が継続する疼痛や不安定感を訴えるとの報告もある。これは慢性足関節不安定症(CAI:Chronic Ankle Instability)と呼ばれ、構造的不安定性と機能的不安定性の双方が要因とされている。このうち捻挫における構造的不安定性は靭帯の修復不全によるものであり、これを解決するためには正確な靭帯損傷の修復機序を理解しておく必要がある。足関節外側に存在する前・後距腓靭帯、踵腓靭帯は足関節および距骨下関節の安定性を維持しており、靭帯を組織学的に観察すると、中央部はコラーゲンに富んだ線維性の組織であり、付着部は線維性組織から骨組織へ移行していくenthesis と呼ばれる4層構造をとっているが、足関節の靭帯損傷の多くは、中央部の実質での断裂が生じるとされている。つまり靭帯損傷の治療において、不安定性を遺残しないためにも、いかに断裂部を正確に癒合させることが重要となる。したがって靭帯損傷に対しては一般的に固定が施されるが、近年靭帯を含めた軟部組織の修復過程において、生理的な関節運動がその治癒を促進させるとされている。すなわち損傷した靭帯を正確に癒合させるためには、治癒過程中の適切な時期に、損傷靭帯に適切な力学的負荷を加えることが必要なのであるが、これについてはほとんど検討されていないのが現状である。つまり靭帯損傷の治療はその多くが組織学的な根拠を十分に持たず、未だに経験的な情報をもとに行われているのである。そこで我々は組織や細胞、分子のレベルで靭帯損傷の修復過程を眺め、さらにその修復に影響を与える力学的負荷となる低出力超音波パルス(LIPUS)の影響についても検討したので報告し、靭帯損傷の治療に一定の指針を与える。

 

『足関節捻挫の損傷組織を嗅ぎ分ける疼痛情報―疼痛学的観点から―』

名古屋大学大学院医学系研究科機能組織学分野・安井正佐也氏

【Abstract】

足関節捻挫は柔道整復師が最も遭遇する外傷の一つです。先ず我々は、目の前の症例が骨折なのか捻挫なのかを画像診断なしに判断する事が必要になります。また、どの組織がどの程度損傷されているのかを的確に判断する損傷の鑑別力(臨床スキル)が要求されます。この臨床スキルは「経験的な判断」が有効な場合もありますが、客観性に欠けるといった反面があります。私は障害部位の組織を同定するためには、様々な科学的根拠が必要であると考えます。解剖学・組織学・生理学・病理学などの基礎医科学を元に組み立てられた医療の現場では医科学検査で客観的に障害部位を同定する事が求められています。しかし、他覚的所見に加え障害組織を同定する最終的な決め手は「痛み」です。痛みの発信源が何処であるか詳細に解析することで、障害(傷害)された組織が骨組織であるのか、靭帯であるのか、あるいは筋組織・軟骨組織・皮下組織であるのか、といった組織別に判断することが可能であると考えます。「痛み」を手がかりに詳細に解析する徒手検査については、卓越した技能を身につける必要がありますが、それには「構造」と「痛みの特性」を知っている必要があると考えます。「痛み」の発生メカニズムを理解し、病理学・組織学や分子生物学などの基礎医科学の情報を熟知すれば、損傷後の時間経過による炎症の広がりや組織治癒過程中の化学的因子(サイトカインや増殖因子など)の作用を考慮して「痛みを多面的に捉える」ことができるようになります。さらに効果的に組織ごとに機械刺激を加えることができれば、痛みの発信源(障害部位)の特定へと核心に迫ることができます。この判断が的確にできれば、その後の固定方法や固定範囲の決定、運動療法の選択や治癒過程が良好であるかの判断においても同様の方法で可能となります。つまり、我々が行うべきこれらの判断基準は「痛みを中心とした基礎医学的根拠」であることが大切であり、この根拠を元に判断することができれば、臨床現場において大きな間違いを起こすことがなくなるはずです。今回は臨床で障害(傷害)される組織を判断するための軸となる「疼痛学」にクローズアップして、足関節捻挫における基礎医学的判断基準について皆様と情報を共有したいと思います。

 

 

 
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