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第17回日本統合医療学会が華々しく開催!<前篇>

2014/02/01
12月21日(土)第2会場シンポジウム1 災害と統合医療 ―持続可能な医療システムとしての統合医療― 

『東日本大震災から今日までの被災支援活動を通して』
日本赤十字看護大学名誉教授・川嶋みどり氏

すさまじい光景を目の当たりにして、被災地を新しい医療と介護の地にしなければならないと感じた。医療の概念を問いなおし、キュアからケアへ、治すから治るへ、機械からの脱皮、脱病院、「東日本これからのケア」ということで看護と介護の支援実践の統合と構築、一時的なボランティアではなく、中・長期を目指しケアニーズにそった実践可能な基盤づくりをしなければならない。深部静脈血栓症・ロコモティブシンドローム、アルコール依存症、最近ではパチンコ依存症が問題になっている。刻々と心が変化している。その心の変化をとらえなければならない。看護師にエールを送ろうということで〝クリミアを超えよう!東北の看護師たち!〟と呼びかけた。顔の見える関係づくり、優しいコミュニティづくり、衣食住全体とりわけ住環境にしっかりとした視点をもち手を使いながらいろんなことをしていく。東松島市に地域完結型のピンピンキラリと美しく、介護保険先延ばし塾をつくった。創(はじ)めなければ始まらない。

 

『災害被災者支援とマインドフルネス』
関西学院大学人間福祉学部社会福祉科教授・池埜聡氏

災害は、人々の生活を一変させ、重層的かつ持続的なトラウマ体験を強いる。〝被災さえなければ〟という過去への悔恨。〝この先どうしていけばいいのか〟という未来への不安。被災者は生きる「足場」を失い、人生の連続性を奪われたような無力感に陥ることも少なくない。マインドフルネスの目的は、過去、未来でもなく「今、この瞬間を生きる」ことの修練による自己の再獲得にある。アメリカで多くのテークアンドケアに応用されているマインドフルネスが今大変注目されているところである。マインドフルネス学会の定義、「今この瞬間」がキーワードで、具体的には瞑想・メディケーションが大きな柱である。瞑想は悟りをしようということではなく、呼吸に注目して身体変化を築いていく。具体的な臨床方法も開発・確立され依存症の治療にも応用されている。地域に根差したプログラムをマインドフルネスを含めて再構成することが求められている。

 

『災害時における統合医療の可能性―プレホスピタルの適正化からdisaster resilienceへ―』
広島国際大学保健医療学部准教授・諌山憲司氏

消防官を19年間勤め、救助隊員・救急救命士として多くの災害現場を経験してきた。アメリカ・イスラエルを調査、アジアにおける災害発生の状況や国際協力の必要性、免疫に関する研究や災害医療に関する調査研究を行ってきた。他にJPRという現役の消防官、看護師・医師が中心となったNPOでカンボジア・インドネシアに救急救助の技術支援を行っている。昨年、宮城県・岩手県を訪問し大震災後のヘルスセンターの調査研究を行った。東日本大震災における医療支援の課題として、急性期における救援チームの調整、亜急性期以降の保健・福祉・公衆衛生を含めた調整不足。ネクストクライシスや多くの救援物資が集まることを予測するとコーディネート機能をより充実させる必要がある。被災者は仮設住宅での居住を強いられ身体的・精神的に厳しい状況となって災害関連死を招く可能性が高くなる。折角助かった命をなんとしてでも災害関連死・災害関連健康被害を減らす必要がある。災害発生前後におけるシームレスな救援活動を行う。プレホスピタルの適正化とは病院前医療においてだれがどの分野において責任を担うのかが重要であり、地域包括センターとの連携を密にすることが重要で将来このようなネットワークの構築が必要である。私自身としては救急と老人福祉との連携を強化したい。

 

『支援する側にも、適切な支援が必要』
習志野市役所危機管理監・太田清彦氏

災害が発生するとどうしても被災者のほうに目が向きます。ただし、持続可能な被災者支援を考えるならば支援する側に対してもある程度の支援が必要です。そうしないと持続可能な支援が出来ない。被災者支援をトータルで考えないと、〝sustainability〟は確保できない。習志野市の人口は約16万人、面積は22平方キロ。東日本大震災で、怪我人の被害はなかったが浦和市と同じ液状化現象が発生、3つの駅で約2000名の帰宅困難者が発生した。市の庁舎も被害を受け、情報も入ってこない発信もできない。指揮も混乱した。昨年度から新しい防災対策に取り組んでいる。防災計画を立てる時に極めて重要になるのは、何を前例として、何を想定するかです。大災害時には3万人以上の避難者が出ると予測されているが2万5千人しか収容できない。収容施設は、28か所。市内で1時間以内に徒歩で来れる職員に限定したため編成に苦労した。各学校にも地域にも名前を公表して、この人が来るということを理解してもらう。ケアを専門にする職員、伝達を専門にする職員、合せると150名位の職員が私の指揮で市内全下に散ることになっている。避難所待機職員は苦情・要望・ストレスのはけ口になる。大きな災害になると避難所待機職員も被災していて家族を置いてこの仕事にきている、それを考えると避難所待機職員や派遣された職員の負担は非常に大きい。もう1つは拘束時間の長さで、市役所の職員というのは、平常時の組織の中で仕事をする職員であり自衛隊や消防のように非常時に活動する職員ではないので意識もメンタリティも違う。疲弊した職員を如何に回復させるか。休める時間はほんの短期間、その短期間で回復してもらわなければいけない。支援する側への支援も必要である。

その後のシンポジウムで、平成17年第5次イラク派遣部隊指揮官であった太田氏は〝緊張した状態というのはずっと続かない、笑いという要素を重視します。又リーダーになるものの教育に凄く時間をかけて、信頼できるリーダーをいかに作り上げていくかということが大切で遠回しのようであるが、実際にはそれが一番効果があるというのが私の経験からくる考え〟等、話した。

 

教育講演3:進化医学―人類の進化が生み出した病―『進化生態医学から考えるこれからの疾病観』
日本医科大学名誉教授・飯野靖彦氏

長谷川敏彦先生が50代は思秋期だと言われている。これからの高齢社会は医療と福祉は同じで医療と福祉の統合である。どんな患者さんが病気になるのかが重要で環境因子が重要である。現在生き残っている種というのは、0.1%以下で、99.9%の種は絶滅してしまった。生き残っている種は環境に合わせて遺伝子を変えている。遺伝子が変わるのは1000年や1万年かかると言われていてちょっとやそっとでは遺伝子は変わらないから進化という概念が出てくる。思いっきり美味しいものが食べられるようになったのは、まだ100年で、100年では遺伝子変わらない。飢餓遺伝子がある状態で飽食の時代になり、病になっても当然で疾病は環境と遺伝子の関数であるということが言える。重要なのは食物でファーストフード店が多いところは脳卒中が多い。社会的取り組みが必要で、コーラやピザを1ドル値上げするとエネルギー消費量が下がる、体重も減ってくる。透析患者は今30万人を超えて一人にかかる医療費は400万から500万、何兆円というお金がかかっている。慢性の腎臓病を防ぐためにガイドラインを作った。日本は初めての超高齢化社会に入り今までのような政策は通用しない。進化生態医療からのアプローチが必要で個別の疾患を診るのではなく、透析などの医療よりも全人的な医療が必要。ドラスティックな医療システムの改革が必要である。

 

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