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第17回日本統合医療学会が華々しく開催!<前篇>

2014/02/01
大会初日・12月21日(土)朝8時35分から大会会長講演が行われた。

『第17回大会の意義と方向性』
「統合医療の世紀-持続可能な社会における医療:エコ・ヘルスケアの実現」
公益財団法人医療機器センター理事長・菊地眞氏

近代科学、医療技術なくして現代の医療はなさない。11月に新しい薬事法が成立し、今後1年以内に施行令の詳細が決まり実施されることで医療機器業界も注目している。2011年に国民皆保険制度50年を迎え、ランセットの編集長が日本に来て今後の日本の在り方を世界が注目するとした大シンポジウムを開催した。12月5日には社会保障改革法が成立。まさに医療の問題だけではなく、社会保障制度全体をインフォートするような問題の渦中に我々が置かれている。「超高齢社会への処方箋」をテーマに国際シンポジウムが開かれ、社会保険診療報酬支払基金理事長で内閣官房社会保障改革担当室長の中村秀一氏は〝社会保障費(109.5兆円から2025年は148.9兆円)医療費は1.54倍、介護費は2.34倍〟と述べ、国立長寿医療研究センター理事長・総長の大島伸一氏は〝「治す医療」から「生活を支える医療」への転換が必要〟。厚生労働省保健局医療課長・宇都宮啓氏は〝「治すこと、救うこと」だけでなく、「癒すこと、時には看取ること」が求められる〟。日本慢性期医療協会会長・武久洋三氏は〝慢性疾患への良質な医療提供がポイント〟。国際医療福祉大学総長・矢崎義雄氏は〝「治す医療」から「支える医療」へのパラダイム・シフト〟等、各氏の意見を紹介。高齢社会ということで、ヘルスケアと経済をいかに科学をとおして回そうというのが問題でありセルフメディケアの構築と実施が喫緊の課題である。これまでの医療経済の制度では給付或いは措置という考えが根強く、それに期待する部分が多すぎたのではないか。今後、セルフケメディケアは個人の自立を目指すことからも、経済的に応分な負担をしていただいてもいいのではないかというのが経済産業省の健康サービス産業の基本的な考え方で、近代西洋医学だけにすがって我々は生き延びることが出来るのだろうかを示唆しており、そのためにも統合医療を考える必要があると思われる等、近年の経済的な背景と今後統合医療が求められているバックグラウンドを説明。また、内閣府総合科学技術会議・ライフイノベーション戦略協議会委員を務められ日本版NIHの「医療分野の開発に関する専門調査会」委員である演者は、わが国の健康・医療戦略の司令塔機能を果たす「日本版NIH」併設が実現される運びとなったことを報告。今後のわが国における健康・医療の進め方に関して科学的根拠に基づく近代西洋医学的アプローチと伝統医学、相補・代替等とを統合させた統合医療をさらに深化させ未来医療にまで発展させる道のりと可能性について考察した。

 

基調講演:『統合医療の意味-人口減少社会という希望-』
千葉大学法経学部教授・広井良典氏

ジャパンシンドロームと称される高齢化と人口減少、特に高齢化は日本が世界の先頭に立って直面していくことになるため、日本がどう対応していくかが世界が注目しており、世界にとって意味のあるテーマである。我が国はいわば拡大成長という道を歩んできた。物質的な豊かさも得られてきた中で、失ってきたものも沢山あるだろう。少しこの歩くスピードを緩めて本当の意味の豊かさ・幸福といったものを見つけ出していく、実現していく一つの転換期、そういう時代になっていると思われる。最近、幸福についての研究が非常に活発になり、日本は世界で相当低いランクである。自然環境との関わり、精神的、広い意味での宗教的な心などが重要になり、これらはいずれも統合医療と非常に深い関係がある。環境の質が健康に深くかかわる。ソーシャルキャピタル、人と人との繋がりがしっかりしている処とそうでない処との健康度が非常に深く相関している。医療とエコロジーは重要な視点の1つになっていくと考えている。ソーシャルキャピタルや関係性という視点が非常に重要で、また健康・病気に関するエコロジカルモデルは重要である。先端的な方向性と統合医療の視点とがクロスする形、科学の在り方そのものをより発展的なものにしていく、そういう流れと呼応しているという視点が重要ではないか。また、2006年から病院で亡くなる人の割合が初めて減少に転じた。人口減少社会・成熟社会の1つのベクトルとして死生観が重要で死生観を深めていく状況になっていくのではないか。自然との関わりで生と死というものを捉えることが大事な視点になっていく。 日本古来の鎮守の森が全国に8万か所位神社とお寺がある。鎮守の森セラピーという試み、コミュニテイと一体となった日本の伝統的な自然観というものを再評価していくべきではないか。先進国と途上国を繋げるポジションで動いて行く、そういった意味でまさに統合医療にふさわしいポジションである。人口減少社会をポジティブで新しい形で発展させていくと提唱。

 

教育講演1:『病院の世紀』は終ったか?
一橋大学大学院社会学研究科教授・猪飼周平氏

今、ケアの世界で起きていることは何かというと、一言でいうと「生活のモデル化」です。生活のモデル化というのは、従来の医療と何が違うのか、生活モデルといわれる考え方に2つ特徴があり、脳卒中でいえば病気が治るのであれば治せばいい。治らなければリハビリテーション、それも上手くいかなければ字が書けるようなトレーニングをしたり、様々な人たちの支えによってQOLを挙げていけば良いというのが生活モデルの考え方の原型で、QOLか患者の救命かの違いがあるが、もう1つは通常我々が原因を考える時に、究極の原因は存在しない。結果があって原因があるが、結果を引き起こす原因になるような現象もその原因を窺うことが出来て原因の原因も窺え無数の原因があることを前提に、無数の対策があるということが生活モデルの考え方の基本である。20世紀においては医学モデルが圧倒的に優勢だったが、既に生活モデルがこの社会全体に浸透しまっている。2011年の震災の時に、日本医学会のシンポジウムで、医学会の重鎮5人の方の意見と私の意見がそれ程違わなかった。医学の世界で何が起きつつあるかということをかなり分っていて、それに向けて動きだしている。QOLと地域ケアは密接に結びついているが、QOLを求める声が上がっている地域は、実は都市部であり、高齢化率の高い過疎で農山村の人々は病院が大事でQOL重視の声は上がっていない。高齢化が進み病気の性質が変わるということは単純に生活モデルを求めていくということとは繋がらない。医療の生活モデル化というのは、医療の福祉化で、生活モデル化によってチェンジしてしまった医療の世界において、何が起こるのか。1つは、地域包括ケア化であるが、地域包括化と地域ケア化とを分けていく。包括ケア化が出来るのであれば望ましい。実は20世紀の初頭から包括ケア化の重要性を医学の内部でもずっと言われていた。その典型的な言葉が全人的な医療で統合的に支援しなければいけない。それをつきつめると必ず包括的な医療になる。おおよそ100年ぶり位に包括化のチャンスで元々包括化したほうが効率がいいということが分っていた。重要なことは今新しく流動的なシステムが動いている時にこの大きな地図の中で誰が誰をどの場所で行うかというのは未だ全然決まっていない。どういう形で人々の健康、或いはQOLに貢献するかということを、みんなが探し求めている。その時に凄く重要なことは自分たちにしかできないことは何かということを探してはいけない。スペシャリティとは何かという方向で自分たちの仕事を探していくのでではなく、自分たちで積極的にどういう公共性を担うかということを探していく。そのことが重要ではないか。

 

教育講演2:コミュニティーと健康増進 ―ソーシャルキャピタルとスマートウエルネスシティ―
『今なぜ歩いて暮らせるまちづくりが求められるのか
-健幸社会の構築を目指すSmart Wellness City-』
筑波大学体育系教授・久野譜也氏

高齢化が抱えている問題は一律ではなく、特徴をもって考えていかなくてはならない。75歳以上が増えると自動車を運転できなくなる人が社会に増えていく、地方では基本的に車がないと生活が出来ない、歩いていける場所にお店がないと生活できない人が増えるが、日本の町の状態がそうなっていないという問題がある。病院で死ぬことが出来無い時代がやってくる中でどういう地域社会を構築できるかを考えていく必要がある。我々の研究グループ(筑波大学・㈱つくばウエルネスリサーチ)は、科学的根拠による個別処方を基礎とした運動と食事による健康サービスをICTによりシステム化し、全国の約50自治体に提供して生活習慣病の予防効果、加えて一定の医療費の抑制効果を得た(年間1人約10万円)。全国の自治体がこの方向に舵を切る成功例づくりが求められる。これに応えるために我々は、地域における健康づくりを従来型の健康政策のみではなく、機能の集約化、住居環境及び公共交通網の整備など、街づくりの視点も加えた総合的な施策の構築を目指している。これを実現するために、自治体の首長と大学の研究者等が中心となって「Smart Wellness City 首長研究会(SWC)」を2009年に筑波大学が事務局機能を担う形で全国の8名の市長により発足した(会長:久住時男新潟県見附市長)。ソーシャルキャピタルや地域コミュニテイを作りなおしていく再編のためにも基本的には歩いて暮らせる町づくりということが健康な人を増やしていくことに貢献できるのではないかと確信をもっている。昨年、日本で初めて国保と社保のデータの一元化に成功。市によって若干違うが住民の7~8割位のデータをカバーできる。科学技術が発達して豊かな生活が可能になったが、今後はそれをベースに健康になれるようなライフスタイルに変えていく社会の技術を研究者が開発していくことが求められているだろう。

 

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