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第17回日本統合医療学会が華々しく開催!<前篇>

2014/02/01

日本統合医療学会第17回大会が「統合医療の世紀 持続可能な社会における医療:エコ・ヘルスケアの実現」をテーマに昨年12月20日~22日まで、日本赤十字看護大学広尾キャンパスで開催された。今大会は各領域の中でも第一人者といわれる研究者を多数招き、実に中味の濃い内容で転換期の時代を象徴し時代を先取りする学会となった。

 

12月20日(金)に公開講座が行われ、公開講座Ⅰでは吉備国際大学准教授・京極真氏による『なぜ、医療と福祉は分り合えないのか―「いのち」をめぐる信念対立の克服Ⅰ』と題した講演が行われた。

信念対立は職場での様々なトラブルの総称で、信念対立が起こっている時、この人と話しても無駄だ、人間関係で疲れる、時間を共有できないという感じを抱いた場合、背景に信念対立があると考えて良い。誰しも一回や二回はこういうことを感じたはずで、信念対立は日常の中で頻繁に起きている問題である。信念対立の問題を最初に学問として扱おうとしたのが、フッサールの現象学だと言われており学問間の信念対立を扱おうとした。信念対立解明アプローチは、実際の現実の世界のトラブルに対応できるように応用理論として組み立てなおした。医師と看護師の意見の対立、患者さんと医療従事者の対立、回復リハビリテーションの領域では患者さんの約9割近くが信念対立を体験し、患者さんは我慢している。信念対立でいろいろトラブルが起こるが、その理由は立場によって見えているものが異なる。例えば、病院とか施設で一緒に働いている、同じ現場で働いているけれども体験していることが違うと気づける人は信念対立化しにくい。医療・福祉・保健では体験する世界が違うだろうと言われている。同じ一人の患者さんに関わっていても福祉の観点から関わるのと医療の観点から関わるのか保健の観点から関わるのかによって見えているものが違っている。そのトラブルの源泉にあるのは信念対立という問題である。信念対立とストレスはイコールではない。意見のぶつかりあいを通して人間の成長、社会の発展に役立つような対立のことを弁証法的対立という。信念対立の究極には戦争があると指摘されている。意見の対立、価値観の対立を通して人や組織を成長させていくためにも信念対立は克服したほうが良い。西洋医学の中にも医学・看護学・作業療法学等いろいろあるが「状況・目的・方法」の3つの概念は、専門領域や立場を超えて共通している要素がある。信念対立は立場の違いで生じるため共通のプラットフォームが必要で、出来るだけシンプルなものを作っていく努力を行なう。緩和ケア、整形外科領域、臨床検査、音楽療法、ハーブセラピー、精神医療、いろんな領域における共通の原理として信念対立解明アプローチはもう展開している。状況・目的・方法に応じて解明アプローチを使っていきましょう、と提唱した。

 

公開講座Ⅰ・対談は『看護と介護、医療と福祉は1つになれるのか』聖隷クリストファー大学社会福祉学部・大学院特任教授・太田貞司氏と日本赤十字看護大学名誉教授・川嶋みどり氏の対談が開かれ、対談の前に2人が約10分程度口頭発表を行った。司会は、日本赤十字看護大学学部長・教授・守田美奈子氏が務めた。

太田氏は〝厚労省・政府は地域包括ケアシステムの構築を政策に掲げており、昨年は構築元年ともいわれている。病院完結型から地域完結型へ大きく転換し、介護も地域包括ケアシステムということで転換し始めている。もっとコミュニティの力を引き出そう、住民の力を引き出して地域づくりをしていこうという、大枠はこういう方向で行くのではないか。医療の人材と介護の人材を育てるには、20万人位の都市では7.8千人、将来的には倍確保できるのかが一つの大きな課題で、これらの人材を作れなければ、人口減少社会に対応できなくなってしまう。医療と福祉は原点が違うため隔たりや支援のポイントの違い等あるが様々な実践の積み重ねの中で医療と介護の一体化はできると思っている。日本の介護は特徴があり世界と違うのは福祉職で、それ故に医療との連携がどうしても欠かせない。医療的な知識も欠かせない。地域の中で医療と福祉の統合、病院だけではなく、地域の中で統合していくことが最大の課題と思っている。地域の中で日常生活を営むということが凄く重要だが「日常生活」という言葉は難問で、夫々の地域の日常生活、或いは認知症や要介護者の日常生活が分っているようで分っていない。お互いに共通理解を深めていけばこれからの医療と介護は統合・一体化していく〟等、話した。

次に川嶋氏は、〝現場で働く医療職と介護職が一つになれるかなれないのかがあり、ひとまとめに言うことは大変困難で今日は時間の関係で「看護と介護」に絞って話したい。被災地の支援にあたって地域の人たちのニーズにあったいろんなことを行おうとした際、行政の人が貴方たちがやろうとしていることは、医療ですか?福祉ですか?ハッキリしてと言われた。医療を必要としている在宅の高齢者もおり、ここから先が医療、ここから先が介護と明確に分れるものではない。その人らしく生きる、生活と生活向上のための支援が必要で、重要なことは、他人が変わってやることは出来ない。看護と介護はケアという共通語で繋がる、現場レベルで繋がる、そのシステムを作ること、既成の概念や制度を超えた発想が必要。利用者さんの状況に応じてトリアージする必要がある。行政は分れていても一つになれるのではないか〟等、簡潔に述べた。

対談では、太田氏が〝日本の社会的ケアでは医療と看護を中心に介護士が生まれたがどういう風に広めるかというのはいろんな議論がある。特に認知症の専門的なケア、基本的な見守りとか社会参加を含めて看護とどういう風に連携するか。そこで暮らすという価値というのはまだまだ未熟で、所謂生活を支援するというところではそんなに固まってはいない。みんなぶつかる〟。川嶋氏は〝今要支援が切り捨てられようとしている状況とかいろいろあるが、家事援助サービスがもうちょっと制度化してくれると高齢者の自立動作が高まると思われる〟。太田氏〝いま在宅、訪問介護では身体介護が中心になっている。制度的にしばりがあって、先がみえない。先生がおっしゃるように生活を支援するという価値をどのように定着させるか〟。川嶋氏〝本当に成熟したコミュニティを作っていく意味でも、この人がどう生きてどう暮らしていくか、その辺のところを取り組んでいく必要がある〟。太田氏〝医療と看護も介護も福祉も変わって、みんなでつくっていくことが大事である〟など話し合った。

 

公開講座Ⅱは統合医療女性の会、『乳がん治療のリアル』と題し、聖路加国際病院乳腺外科ブレストセンター部長・ブレストセンター長の山内英子氏が講演。

司会を統合医療女性の会代表・渥美英子氏が務めた。はじめに渥美英子氏が〝日本統合医療学会・女性の会の公開講座です。女性の会は統合医療学会として医療関係者ばかりでなく命を育む女性の目線で多くの方々に参加していただけるようにと、今年の暑かった夏に立ち上げました。強く賢く美しくをテーマにして今の時代にふさわしい医療の在り方をみんなで考えていこうということで、一回目は賢く丁寧に食べるで「食」を取り上げました。今回は女性の「クライシス」です〟など挨拶、演者の紹介を行った。

BRCA1遺伝子/BRCA2遺伝子のどちらかに病的変異がある場合に、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」と診断される。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の特徴は、若年(40歳未満)で乳がんを発症する、両方の乳房にがんを発症する、片方の乳房に複数回乳がんを発症する、乳がんと卵巣がんの両方を発症する、男性で乳がんを発症する、膵臓や前立腺にがんを発症することがある、家族の中に乳がんや卵巣がんの人がいる、これらである。がんと診断された時からその生を全うするまでの過程を、いかにその人らしく生き抜いたかを重視した考え方、「がん患者らしく」ではなく、がんという病気と向き合いながら最後まで「自分らしく」生き抜くことである。2次性発がんの問題、妊娠・出産の問題、治療による様々な身体的問題、がんに対する不安・再発の恐怖・鬱状態・否認やいかり・孤独感など心理的問題に対応する。治療と職業生活の両立に向け医療経済などを用いた働き盛りのがん対策の一助としてのアウトカム評価など、がん拠点病院における介入モデルを紹介。Consumerism患者主権主義についても解説した。

 

立教大学現代心理学部教授・精神科医・作家の香山リカ氏と医療法人財団帯津三敬会帯津三敬塾クリニック理事長・板村論子氏による『中年期女性の喪失感』と題した公開対談。

いま注目の2人の女性が、中年期における女性の身体的問題や心の問題、価値観などさまざまに話し合った。

 

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