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『柔道整復基礎医科学シンポジウム2012』-柔整大学教育と柔整研究の在り方を考える-が開催!

2012/07/01

科学的価値が低いとされる研究方法

1.
自ら経験した症例の一例報告
2.
自ら経験した一連の経験の蓄積 
3.
ある時点の横断的研究(日本国内の疾病の発症率など)
4.
疾病群と非疾病群の比較研究(ケースコントロール研究)

科学的価値が高いとされる研究方法

1.
前向きコホート研究(ある集団を登録。その後の経過を観察。)
2.
無作為ランダム化二重盲検試験
3.
無作為ランダム化二重盲検試験のメタ解析(同様の試験の複数の結果を、定量的に評価)

中でもFramingham Heart Study(フラミンガム研究、1948~)というのは、ボストン近郊の小さな町Framinghamの住民を登録して、継続的に心筋梗塞、脳梗塞、発ガン、死亡などを追跡し続けている前向きコホート研究である。「過去」10年を振り返り、心筋梗塞、心血管死亡を起した症例の特徴を「観察」することにより、心筋梗塞、心血管死亡の発症に関与する因子をモデル化する、という「過去を向いたモデル化」が可能である。日本では九州大学が福岡県糟屋郡久山町で同じような方法のモデルを作っています。今回の東日本大震災にあわせて東北地方で同じようなことをやろうとメディカルゲノムメガバンク構想を東北大学を中心に始まっています。実際に過去の経験の蓄積をすることによって、人類の医療革新に貢献した例では、日本人の脳卒中の発症率が食塩の摂取制限で減少、またアメリカの心筋梗塞の発症率、コレステロールの摂取制限や運動習慣を入れることで改善した。ではそれでいいのか?それはそれで全然良いのです。ただ、それでは現状打破はできない。革新的な医療を行うには、将来予測を行うことです。物理学では、論理的思考による理論物理があり、実験で理論を検証するが医学の場合は、それが無い。残念なことに医療ファージの妥当性を裏付ける医療学というのが無い。実はEBMと言っていますが、そんなに凄いことをやっている訳ではありません。私達の先祖がやってきたことと同じです。ただそれを科学的なやり方に則ってやっているかどうかだけの違いです。では、どういうことが期待されるのか。一つは定型的な理論医学ができると体系的な理論の根拠ができます。それを実践するには膨大な費用がかかる。スーパーコンピュータを使って最終的には理論医学を作ろうという方向で今動いています。いろいろあるが、検証から予測に向かおう、予防医学と同じでそっちの方向に行っている。従って今行っている個別対応の時に医学の世界を考えると理論医学を作り、今まで実験的に理論や経験を検証していたことから予想に向かおうというのが今の考えです。実際にそのように検証しモデル化をした後、最終的には可視化される。何か一つの学問をやると、いろいろな学問、全ての治験を融合させトータルで見るような総体的な視点によって、理解していくことが必要になってきます。

もう一つは、情報を使って臨床研究をしようという流れがある。臨床試験に代わる方法の一つです。西洋医学のほうで普及した電子カルテを使って、どんな患者にどんな状況で治療したら最善かを比較解析する方法です。何故こんなことが始まったかというと、電子カルテのCRを使って行うとランダム化試験の大体100分の1の費用で同じデータがとれる。実際にそれが出来るのかをやってみました。厚労省が出したデータを性別・年齢別にアソシエーション解析、確実にとれていたのは肝臓癌、肺癌、狭心症のリスクファクターの3つで、全部男性のほうが高いことが分かりました。また処方と注射オーダを使って治療の妥当性を調べました。日本の流れとして厚労省を中心に病院のカルテを統合化するという話と健康関係の情報の統合化を行っています。

 

基礎医学と臨床医学の関係について

TRの概念というのは、基礎研究の成果を医療に直接的に結合されるように、集学的に専門分野の人たちが集まってチームを組んで研究開発を行うことである。研究成果について、途中でキチッと評価をしていく、夫々が全体をキチッと管理して単に寄せ集めの研究はしない。今年になってから出てきたトレンドとしては、今年のネーチャーに掲載されていたが、前臨床段階の研究と臨床研究を平行してやる平行臨床試験という方法が最近始まりました。同時並行的に行うやり方です。要するに医学研究というのは、基礎だけでもダメ、臨床だけでもダメです。それを融合させたような研究になっていっているのが、今の医学の世界のトレンドです。どういうことかというと、基礎研究の裏付け、基礎的な理論の裏付けがある上に臨床研究が行われる。その臨床研究はここにあげたような厳しい品質管理のもとに担保されている。翻って鍼灸の世界をいうとこれだけのことを担保している臨床研究はどれだけあるのかなと考えます。皆さんの世界はどうですか?基礎・臨床を融合して厳しい品質管理、品質というのは研究のクオリティのことで、担保されている訳です。これが今の現代医学の状況です。