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痛みの診える柔整師【瑞穂接骨院】
―X線みたいな分かり易い画像が出るようになったら導入したい。
もちろん見やすいに越したことはありませんが、現在のエコー機器のレベルは、私にとってとても満足の出来るものです。例えば、産婦人科の先生方が、エコーで3D、4Dなど胎児の立体画像をお母さん方にお見せしているところもありますが、とてもわかりやすいものです。ではこの技術を運動器で応用出来ないか?というと、わずか髪の毛1本分程度のコンマ数ミリといった不全骨折を判断するには不向きであり、現在のBモード画像の方が正確な判断が可能です。産婦人科においては、こういった立体画像は有効な方法だと思いますが、我々のような僅かな異常を判断する者には合わない訳です。しかし、最近のデジタルエコー機器にはドプラーという血流情報をみる機能が付いているものが多く、この機能は運動器分野においては大変役立っており、例えば骨折や靭帯損傷時の修復過程でこの血流反応をみて、損傷された部分が現在どういう状態なのか判断するという指標になっております。また軟骨損傷などレ線で映らないもの、(Bモード)エコーでも判断が微妙なものも、この血流反応を1週間ほど経ってからみることで判断出来るケースがあります。さらに、当院ではティッシュエラストグラフィー(以下、エラスト)という硬さを評価するソフトを入れておりますが、これも例えば頸部のツッパリ感を訴える筋肉の緊張の強い患者さんなど評価しますと、表層にある僧帽筋が硬いのか、その深層にある肩甲挙筋が硬いのかなどの評価も出来るので、漠然と頸部全体の筋を触るのではなく、ピンポイントで硬くなっている筋のみアプローチ出来ますので、時間短縮と効果的な治療法の選択が出来、そして治療の経過が良好か治療効果の判断指標にもなります。また、このエラストは肉離れ時の判断にも使っており、例えば下腿三頭筋の肉離れ時、損傷の程度がわずかな場合、Bモードでfibrillar patternの乱れや低輝度領域の存在が微妙で判断に迷う時がありますが、このようなケースでは異常所見があるのか、あるいは単なるアーチファクトなのかの判断は治療方針を決定する上で大切なことです。この判断は予後に大きく影響しますので、こんな時に私は通常のBモード+血流反応に加えて、エラストを使って正確な判断をするように気をつけています。また余談ですが、私の実習先だった病院に先日お邪魔した際に、整形外科医である院長より「超音波エコーは柔整の先生たちにぴったりのツールだね」というお言葉を頂きました。エコーをすることで解剖の知識が向上し、高いクオリティーを身につけることが可能となり、運動器の殆どを診ることが出来るとお話されました。こちらの整形外科でも運動器エコーを導入されておりますが、それほど現在のエコーはかなりのレベルまで達しているということだと思います。
―貴院の施術の流れの中での、超音波診断装置の位置付けとはどういうものでしょうか?
我々は柔道整復師ですので、学校で履修した柔道整復理論に基づいた『問診・視診・触診』を中心に、整形外科的検査などをして外傷を診ています。ここで判断した外傷疾患を確認するために、超音波エコーで患部を撮り、確認をする。そういう位置づけです。スタッフにも言っていますが、絶対してはならないことは『とりあえず、エコーを撮ってみる』という行為です。これでは自分の外傷を見る能力も上がりませんし、エコー画像が先頭に立つと必ずミスを犯します。要は「どこかに何か写っていないかな?」ではなく、「見たいところを診る」という意識が大切だということです。いろいろ調べた結果、おそらくこの部位でこういう現象が起こっているかもしれないという仮説のもと、エコーでこの仮説を確認する。こういうスタンスで使用することがとても大切です。また、画像だけが先行すると臨床症状を軽視してしまい、骨折など無いのに、画像だけで骨折があると判断してしまう可能性もあります。これは私も含め、エコーを扱う先生方皆さんが留意するべき点だと思います。
―これから超音波診断装置の導入を検討される方にアドバイスをお願いします!
一言で言えば、迷っている暇もないくらい、超音波エコーの勉強を早く始めてください。これが私から贈る言葉です。私は学生に対する授業でも、現代における柔道整復術は進化を迫られていると話しています。古くから先人たちに培われてきた柔道整復術が、素晴らしいものだということを後世に残すためにも、evidenceに基づいた柔道整復術が必要であると思っております。そういう意味では、現代において生体内情報を画像で見ることが出来るということはとても大きな意義があります。学校の授業でも超音波エコーを取り入れておりますし、教科書の外傷疾患の説明ではレ線画像が掲載されているので、エコー画像と対比させて解説しております。学生たちも、超音波エコーの必要性のようなものは感じているようですし、日本超音波骨軟組織学会への学生参加者も少しずつ増えてきております。そういう教育環境で育った人たちが多くなってくると、これから開業される若い先生たちによって、超音波エコーを完備した接骨院が今よりも益々増えてくることでしょう。もし仮に、将来多くの接骨院でエコーが導入される時代が来てから、慌てて最新機器を導入したとしてもすぐには使えません。撮り方や読影の仕方などはたくさん症例を見た分だけ力がつきますし、ある医師からは、『2000症例以上の画像を見ないと何も始まらない。』と言われ、それだけ経験値も必要と言うことだと思います。日本超音波骨軟組織学会では教育セミナーが充実しておりますので、昔のように一人で試行錯誤しなくても、学会を活用して多くの方に色々聞けますし、学べる環境も整備されております。
あとは先生方の気持ち次第ではないでしょうか?