柔整ホットニュース

特集

東京製本健康保険組合・米沢幸也氏に聞く!

2011/06/01

―将来、保険者さんが料金改定の話し合いに参加するようなことになっていくと思われますか?

ここ数年では難しいと思います。というのは、健康保険制度だけではなくいろいろな社会保障制度がありますが、例えば、先般話題になった後期高齢者医療制度も広く国民の声を聞きたいということで多くの会議が立ち上げられました。しかしながらニュースや報道を見ている限りでは、メンバーに一人も一般のお年寄りがいない。みんな学者とか、有識者と呼ばれるような人たちです。其処に何もよく分からないお祖母ちゃんが一人入ったら、〝どう思いますか?〟と聞くと〝何がなんだか私にはよく訳分からないけれど〟と言って、本当の声が聞けます。政権が民主党になってから代替医療ではありませんが、パラメディカルの方向性も打ち立てたいという意向も出てきました。医師会はあまり賛成しないでしょうけれども、そういう分野の保険適用についても考えていきたいという方向性が出てきたのではないでしょうか。そういった研究を進めると同時に、しっかり討議を行っていくことで今度は保険を適用していくかどうかの段階に移行し、その時どういうルールが必要であるのか、或いはそれを審議する監督庁が必要であるといったシミュレーションをされたほうが私・個人としては良いのではないかと考えます。

 

―神奈川県石油業健康保険組合常務理事・廣部正義氏が柔道整復療養費請求システムの改善(私案)を提言されていますが、どのように思われますか?

基本的に異議はありません。さらに私見でありますが療養費からは独立させ柔道整復療養補助費として新設するのが望ましいでしょう。給付も保険医療機関とは別にして一部負担率制ではなく標準負担額制が必要であると考えます。また高額療養費の合算対象外とする等、斯様な視座に立脚して三者が納得いく施術料金を具現化することが望まれます。本来的にはもっと厳格なものであろうと思いますが、廣部先生も広く研究され、提言を出されてきたのではないかなと個人的には思っています。療養費というと巾が広く、お腹が痛くなって病院で受診したけれど、たまたま保険証を持っていなくて10割負担で支払った、或いは治療用装具等、保険がその場で使えないもののあくまでも代替であるということ。ところが今の柔整を見ていると、保険証を持ってかかってしまう訳ですからそういう療養費の範疇ではない。現物給付に限りなく近い。それを療養費の縛りの中でやっていくのはどうなのかなと。療養費ではなく独立させて、柔整にかかるための制度を新設する。独立させてしまえば、何も3割負担である必要は無い訳で、標準負担額制にする。通常、骨折・不全骨折・脱臼的なものは応急処置であり、脱臼は嵌ってしまえばそれで終了ですが、捻挫・打撲・挫傷でずっと部位をとっかえひっかえ長くかかっているのであれば、結局恐ろしく命にかかわるということは無いので、高額医療費の対象からも外れることになります。その辺の厳格さはあって良いと私は思います。

 

―不公平や不正がなくなる規律を業界内部でも、どうにかしたいとする考えの柔道整復師は多くいますが、米沢次長の仰った、保険請求上のルールの他に、診療における学術的なルールが必要だという意見が少ないように感じます。いずれにしましても具体的には両者の不正撲滅連絡協議会などを設置するなど、柔道整復師と協力して不正を撲滅して行くという考えについてはどう思われますか。

健康保険事業の給付事務は事務の範疇に収束される事においては、我々は療術専門家ではありません。しかし、実際に即した給付事務を適正に執行するのであれば、柔道整復療法という概容を知悉する事は大切であろうと思料するものです。ただし、私達保険者は柔整師の方々に対して指導をできる立場ではございませんが、やはり柔道整復療法というものがどういうものなのかということを我々は知悉する必要があるのではないかと思います。例えば医科のレセプトがきます。そうするとその点検を当然組合でも行いますが、医科は柔整よりももっともっと細分化されています。当然ルールもありますが、長年点検業務に携わっておりますと、この病気に対してこの治療、この薬はおかしいということが分かります。勿論それは一つ一つ調べて長年それを担当してスキルを高めていく訳で〝医者じゃないからこんなの分からない〟というスタンスでは出来ません。やはり興味を持って診療内容、更に新薬に関して我々保険者も、深い専門的なことは難しいかもしれませんが、広くそういうことを知悉していくべきではないでしょうか。また不正を正すとすれば、被保険者や被扶養者の方の協力がない限り無理です。勿論〝俺行ってないよ、そんなの〟と口で答えられるだけではなく、それを文書化することと行政庁がそれについて調査をする場合に個人情報に対し同意をしてくださること、この2つが無いと出来ません。〝イヤそんな面倒くさくなるならいいよ〟と断られてしまえば、それまでです。当事者である柔整師の先生達が気づいていることをしっかり批判していただく、そういう取組みが拡がっていくと良いのではないでしょうか。