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スペシャルインタビュー:稲城市長・高橋 勝浩 氏

2016/03/09

―また地域包括支援センターの力量差も言われており、地域力が弱くなっている現在、「互助」による支援体制が機能する可能性についてもお聞かせください。

都会では「互助・共助」というのは深刻な問題で、また稲城市においても最近ニュータウン化された団地住民の方などは、やはり同じような問題があると思っています。それでも稲城市は、長らく地域密接型で地域力の強い純農村みたいな土地柄でしたから、良い意味での田舎らしさは今でもかなり残っている所がありまして、自治会や民生委員さんなどがある程度現役で機能している部分はあります。実は平成16年度から東京都の介護予防推進モデル地区として指定を受け、東京都で制度化する前から既に介護予防事業を開始していました。人を集めて〝なるべく転倒や骨折をしないように筋力をアップしましょう〟といった介護予防事業を始めまして、しかも将来的にはその教わった人たちが今度は自分たちが各地区で自主グループを作って欲しいということを最初から織り込んで実施しまして、今では沢山の自主グループ・介護予防グループが出来ました。それはある意味、防災でいうところの「自助・共助」だと思います。

公助の部分というのは、措置であったり、共助は保険給付の部分についてであり、自助・互助については、平成19年度から全国に先駆けて「介護支援ボランティア制度」という、困ったら介護保険をすぐに利用するのではなく、出来れば介護保険の世話にならないように動ける内から介護の現場に行って支援する側のボランティアをして頂くことが介護予防であり、それに対し一定のポイントをつけてキャッシュバックしようというものです。稲城市が特区提案したその後、国の制度そのものに取り込まれて今では全国的に定着しています。そんなことで「自助・互助・共助・公助」については当初から取組みを行っています。十分かどうかはいろんなご評価があると思いますが、今後も当市は、防犯面、防災面、そして高齢化問題、環境面も含めて当然行政が最後に行う必要不可欠な部分はある訳ですが、出来るところは自分たちで行う。自分の家の前にゴミが落ちていたら市内一斉環境美化運動として、みんなでゴミを拾いましょう。防犯面でも自分の家の近所の防犯パトロールは自分たちでやってください、そして年に数回はみんなで全域の防犯パトロールを市内一斉にやりましょう。消防や市の職員が回ったりするだけではなく、青パトの車を走らせていますので夫々の団体みんなで、自分たちができる範囲で防犯パトロールをやってもらう。「互助・共助」は全ての分野にわたってやっていきましょうということで市民との協働をどんどん進めています。私はその総トータルを『地域力』と呼ばせてもらっています。『地域力』が稲城の今の原動力であり、源なんだろうと思っています。

 

―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。稲城市においては人材は足りているのでしょうか。

稲城市では、介護だけではなく、慢性的に看護師不足という状況です。全国津々浦々求人が難しいという話は事業者からお聞きしています。ただ稲城市の現状は、市内の施設や事業所で人材不足が原因で休業や廃業、或いは事業縮小という話はありませんので、今のところは何とか成り立っているとは思います。しかし、人材育成とか人材確保は正直いって一市で出来る話ではありませんので、当然国をあげての話になります。私は口をはさむ立場にはありませんが、今後の人口減少を考えると看護・介護をする人が足りないのは誰が見ても分かることです。所謂外国人労働力の活用というのは、課題として避けて通れないと思います。これについては違う次元での問題になり感情的な議論になり中々前に進展するのは難しい様相で、移民問題を口に出すこと自体がはばかれる状況に今なっているようです。

日本が国際化をしていく中で、しかもこの超高齢化少子化人口減少を如何切り抜けていくのか。単に人口が減って明治維新の頃までの人口が適正規模で6000万人位になってもへっちゃらだよという人がいますが、全く人口構成が違います。純粋なピラミッド型のまま減少して、それで6000万人であれば国力はそがれませんし、ヨーロッパの国は大体そんな規模で国力を維持している訳です。そうではなく胴長型の人口構成がそのまま縮小したらどうなるかというのは、全く違う議論です。単なる人数で見るべきではありませんし金銭的な問題ではなく、支える人がいなくなる、ハンドサービスをやる人がいなくなるのです。いずれ介護・看護の職に外国人を入れなければいけないのであれば、勤務形態や報酬の在りようについて議論があって然りと思います。安かろう悪かろうではいけませんが、同等の給料を払うべきだという結論が先にありきであったとしたら絶対に進まないと思います。

 

―今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種であります。稲城市では地域包括型ケアシステムに柔道整復師が既に参入しているとお聞きしました。柔道整復は阪神淡路の大震災、2011年の東日本大震災時においても活躍してきました。高橋市長から見て、柔道整復は今後どのような活用が望まれるでしょうか。

既に柔道整復師の方たちには、参入して頂いております。先述しましたように27年4月から国立市と稲城市では「介護予防日常生活支援総合事業」を開始しておりまして、従来の保険給付の枠組みから市町村の総合事業へ移行し、多様な地域のニーズに応じたきめ細やかな事業、まさにその部分の通所介護Cを現時点で4事業所でやって頂いています。これは希望があればもっとやっていただいても良いと思っています。柔道整復師を医療・介護の分野から締め出そうという声も一部にあるのかもしれませんが、稲城市は私も含めてそんなことは全く考えておりません。医師会の会長先生ご自身が、柔整について非常にご理解があって、寧ろ頼りにされております。従って地域包括ケアシステムの構築にあたって柔整の先生方には現に介護保険事業の市の総合事業もやって頂いており、今後の参加をお願いしている側で、いろんなご意見を頂きたいと思っています。

稲城市の医師会の今の会長さんは非常にリベラルな方で、東日本大震災後に各避難所に医療救護所を構築する体制を築かれました。怪我した人全部が市立病院に来られたら収容しきれない。クリニックに入れないとなるとやはりトリアージして軽度の方は避難所で、中度の方はクリニックで、重度の方は病院に搬送という風に。避難所に医療救護所を設けて開業医の先生方に来てもらって、臨時に軽症の方を手当てするような医療救護所を作りました。おそらく怪我、骨折とか捻挫について緊急時の現場において、柔整の先生方に補助として関わっていただく、連携をとって頂くとして災害時の協定を結ばせていただいています。災害医療の提供体制の中でのお付き合いもあるから当然ですが、地域包括ケアシステムの中でメンバーとして活動してもらわなければいけないと考えております。

 

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