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埼玉県農協健康保険組合・坂本昌之常務理事に聞く!

2014/05/01

―坂本常務は、柔整療養費において何が問題であるとお考えでしょうか?

先程の話と重複しますが、みんなの考えていることが一致していないように思います。何十年も継続されてきたものであるはずなのに、まさにお互いの言い分の世界です。例えば、よく総論賛成、各論反対みたいな話がありますけれども、ここではその総論自体がまだ出来ていないのではないかという印象を持っています。本当は確たるものがある筈なのに、夫々の人の解釈の仕方が異なる。理解の仕方、受け止め方がバラバラです。原理原則である総論は誤解のないよう協定書のルールに基づいて行われるべきです。所謂グレーゾーンって何なのか、グレーゾーンと言いつつ放置していることは問題です。私はこの仕事に就いて初めて、受領委任の仕組みを知りました。制度上、委任をするためには自署でなくてはいけないとなっています。そこのところを患者さんも保険者も柔整師のみなさんも、そして国も、核はこうだよということを確認しなくてはいけないと思います。見解の相違というのは必ずあると思います。

しかし、不正請求というのは、見解の相違という問題とは全然違うものです。見解の相違については、その違いの部分についてはどんどん議論すべきと思います。ところが不正請求は犯罪ですからこれは許されないことです。国家試験に合格した人がなれる柔整師の資格ですから、そんなことがあってはいけないし、あるはずがないと思うのですが、あれだけ報道されて、健保組合は厚労省から調査しなさいという文書が出ておりますから調査しない訳にはいきません。自分たちの保険料の使い方をしっかり責任を持ってやるためにも必要な調査は行うべきです。この調査についても柔整師さん達の言い分では〝やり過ぎだよ〟〝受診妨害じゃないか〟等いろいろ聞いておりますが、私の考え方は、調査はまさに健保組合のやるべき仕事であり、法律に基づいて加入者の皆さんから預かった保険料です。必要があるものについてはしっかり調査した上で支払ってこそ、初めて健保組合の責任が果たせるのだと思います。

繰り返しになりますが、じゃ〝何を持って調査なんだ〟〝何でもかんでも調査する必要はないでしょう〟ということについては、柔整師の皆さんは厚労省との協定を守って適切な施術をしますという確約書も交わされている訳です。従って調査をする場合はある程度ルールを作って、こういう形のもので調査しますよと、お互い周知徹底をはかるべきではないかと思っています。厚労省の指導は、先ず患者さんに聞きなさいということです。それはルールとして徹底していかなければならないと思います。難しいルールでなく「領収証は必ず貰ってください。調査の時はそのコピーの提出をお願いしますよ」でよいのではないかと思います。署名の時期はともかく、回数が多いものは領収証さえ揃っていれば、払ったから領収証を貰った訳で、それまで疑ったらどうにもなりません。その代わり、領収証はしっかり貰って下さいと、または貰っていなかったら貰って提出してくださいということになります。

24年度、当健保組合では柔整療養費として年間5,950件、2,700万円を支払っています。一件あたり4,550円が支払われている中で、返戻したのは44件でした。ただ金額的に50万円で一件当たりにすると高いので〝これどうしたんですか?〟と理由を聞きます。主に負傷原因が書いてなかったり長期施術の理由が書かれていないものに対しての返戻ですが、回答の無いものには支払えませんという話になります。しかし、それは所謂不支給ではないと考えています。理由を確かめてから払いなさいと厚労省から言われていますので「不支給」という言葉には当てはまらない。支払う対象であるのに「不支給」とするのであれば、それは問題ですが、疑義について質問をしたのに返答がないのであれば、それは払わなくてもいいんじゃないですかという話です。本当のところの中身の問題で払ってもらえないのであれば、これは問題視すべきですし、そうじゃないのであれば自分たちのことも正す必要があるのではないでしょうか。

先ず、私達は不正なんてしていないという姿勢が大事です。そうすれば調査しなくても済むのです。「不支給」・「照会」の問題というのは、お互いが信頼できる組織になってくれば、減ると思います。ある意味お互いに良い関係だから今まで残ってきている訳で、何十年と続いているものを誰も悪いと思っている筈がないと思います。しかしながら今言われているように仮に質の悪い柔整師の方がどんどん増えていくとなった時には、逆にそのような方は淘汰されていくことになると思います。このような状況の中で、何が求められているかというと、やはりしっかりした施術としっかりした審査支払組織だと思います。病院と違った治療技術ですが気安くかかれますし、元々地域性が強い中で互いにルールを守って有効に利用していただくことが得策であると思います。

 

―受領委任払いを償還払いに戻すといった声がよく聞かれますが、それについて坂本常務はどのようなお考えをお持ちですか?

この仕事に就いてから代理受領委任というのは、何なんだろうと思って最初にみた資料が22年5月24日付の文書でした。それは「柔道整復師の施術に係る療養費について」という〝受領委任の取り扱いの療養費についてはこれで行います〟として厚労省が出したものです。受領委任を行う場合、日本柔道整復師会(以下、日整)の会員の人たちは別添1、会員でない人たちは別添2によって行いますというもので、別添1は協定書で、別添2については、中味は一緒ですが、ただ協定ではないため個々の契約でそれを扱わせるものです。こういった資料は読み解くにはかなりの時間がかかります。日整は会員の支給申請書を審査し健保組合に送って、健保組合はそれを県審査会に審査を依頼し、金額を確定した上でお金を支払うシステムになっています。

別添2の所謂個人契約者は、日整のかわりに任意団体が入っている訳ですが、その任意団体については一切触れられていません。ここのところが何故そうなのか?個人契約の方にも受領委任取り扱いの道を認めたのであれば、任意団体も認知して〝何かあったら行政が指導します〟としなくてはならない筈なのに、それがなされていません。国の医療そのものを取り締まるのは厚労省なのだから、そこを見逃していいのかと思います。私としては、受領委任払いというのは、70年以上も続いている制度であり、それほど長く続いているので、戻せといっても戻せないだろうし、あえて戻す必要があるのかとも思います。これが認められた背景にはそれなりの経過があると思いますし、患者さんもそうですが支払う側もなるべく手間が省けたほうが良い訳で、そのために償還払いから受領委任払いになったのであるなら、お互いのためにこの制度は残しても良いのではないでしょうか。お互いにルールを守っていただければ私はそれで良いと思っています。

 

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