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埼玉県農協健康保険組合・坂本昌之常務理事に聞く!

2014/05/01

―照会の基準が明確化され統一されることはとても良いことと思います。坂本常務の適正化についての考え方をお聞かせ下さい。

話が前後しますが、先ほどの医療費対策委員会の中にレセプト部会があり、各健保組合の担当者が集まってレセプトの勉強会を行っています。医科歯科のレセプトの勉強が主ではありますが、その勉強会の中で、何をもって柔整の支給申請書に関して照会するのかということが議題になり、話をきくと実は基準があるようで明確な基準がありませんでした。繰り返しになりますが、厚労省から24年3月12日に出された適正化の文書がありますが、患者さんからみると施術を受けて楽になったのであれば、良い施術をしてもらったことに対して(高い安いというよりは)それに見合った対価を納得して支払うのが適正な料金だと思います。一方、柔整師の先生方は自分の持っている技術で施術を行って患者さんが良くなったとすれば、それに見合う施術費をいただくのが適正料金だと思います。最初から保険適用になるかならないかではなく、たまたまその施術が保険適用になるということだと思います。保険適用かどうかではなく、自分の施術に基づいた適正料金です。

しかし、健保組合の場合、保険適用が前提ですから厚労省から、原則としてこういう場合は調査するようにと通知が出されています。健保組合というのは皆さんから預かった保険料を元にそれを適正に公正に分配するのが役目だからです。ですから、その人が保険の適用になる施術を受ける場合は、できる限り安い料金で適切な施術が受けられることが、健保組合にとって適正な料金となります。しかし、もしそれが本当に保険適用に該当しない場合には支払ってはいけないのです。つまり「適正化とは何か」というのが夫々異なる訳です。そのためお互いの立場を理解し、みんなが合意できる原則を作る必要があると思います。例外的な事例については細則として整理し、どんどん蓄積していけばよいと思いますし、そうすることで分り難い事例についてはその細則に基づいて判断していくことができることになります。

先述の埼玉連合会が16年に出した基準では、一件2万円以上、多部位(4部位以上)、初検から3か月目の施術が20日以上の場合等について被保険者に対して照会をするようにとされています。その後出された24年3月12日付の厚労省の文書は、照会等を行う場合はこの文書を参考に具体的な基準を設け適切に実施するよう求めており、両方の整合性を考慮し1つに纏める必要が出てきた訳です。最終的に厚労省の書類を参考資料として基準に添付しました。2万円については、今までのものを根拠もなく外す訳にはいかないので、当健保組合の実情を調べたところ、去年2万円以上の支給申請が219件あり金額で574万円でした。219件の内訳を調べてみると実質89人で、何人もの方が一年に何回も2万円以上の施術を受けていました。従ってこういう場合は、調査しますよということであり、他の健保組合でも最低この基準に基づいてやって下さいということです。柔整師会の皆さんには、健保連埼玉連合会では照会の基準で被保険者の調査はこの様に決めましたと説明して理解をいただこうと思っています。これを実施するにあたっては、各健保組合が被保険者に周知徹底を図る経過期間が必要であると思います。

調査票についても厚労省が示した調査票様式1を参考にして各組織で作ってくださいと。調査の時期も適切な時期(なるべく早い時期)としました。厚労省の文書には適切な時期となっています。しかし、適切な時期というのは適切な医療費と同じで非常に分り難く誤解を生む素です。適正化について私が言いたいのは国が決めたルールを柔整師の皆さんも保険者も患者さんも再確認して守るということが前提になります。そして、発行された領収証の枚数と日数があっていればとりあえず良いのではないかということです。ただし、何かおかしいと思ったらしっかり調査して警察に届けるという法的手段をとるという必要があると思います。勿論その前に厚生労働省に相談して、ジャッジしていただきます。健保組合が勝手に決めるべきものではないと思っています。

 

―この度、本を出版された動機というのは?

私達健保組合の担当者は、病院にかかってからの医療費の流れや支払基金の役割等について知っているのは当たり前ですが、一般の人は国民皆保険制度の仕組みについて知っている人は殆どおりません。知らない人たちに医療費の財源不足や、病院のかかり方とか、薬はジェネリックにして下さいと広報しても、何のことか分りません。であれば、その仕組みから知ってもらおう、そこを知らないで医療費の抑制や削減は無理だと考えました。

当健保の医療費は年間総額約20億円です。その医療費を抑えるためには、加入者本人が意識するための仕組みを知ってもらうしかないだろうということです。健保組合の仕事というのは、各事業所の担当職員が一緒にやってくれていますが、その仕組みを知らないで仕事をするというのもおかしいと思いました。また、赤字の健康保険組合が多く、毎年いくつかの健保組合が解散しています。解散しないためには、保険料を上げるしかありません。自分のかかった医療費を誰が払っているのかみんなが考えるしかありません。消費税は、今は無理ですがあとになれば効果が出てくると思います。本当の仕組みを知った上で、自分たちで判断すべきだというのがこの本を作る切っ掛けでした。理事長に話したところ、理解促進資料をつくるのだったらマンガがいいよとアドバイスをいただきました。結果的に農業団体の20健保組合と埼玉県にある30健保組合に声をかけて、13万5千部発行することになりました。

この本の中に、高齢者医療費にかかわる納付金についても漫画で紹介しました。また、接骨院にかかる場合の受領委任についても触れさせていただきました。加入者の皆さんが負担する保険料というのは、皆さんの医療費50%、そのほかに高齢者の方々の医療費の納付金46%が平均的な健保組合です。本当のことを知ってみんなで考えなければ〝消費税を上げます、イヤだ〟〝自己負担が高くなる、イヤだ〟〝保険料の値上げ、イヤだ〟では、今世界一とされている日本の医療制度のサービスを下げてもいいんですねという話になってしまいます。この制度を持続ためには、どうやったらいいかをみんなで考えようというのが動機です。

 

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