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デンソー健康保険組合・赤塚常勤顧問に聞く!

2013/10/16

―先ほど健保の理念について話していただきましたが、保険者機能と役割について、少し詳しく教えていただけますか?

保険者機能と役割について若干詳しく説明しますと、人間の健康のステージには、まず「健康」が基本です。次に「予備軍」といわれる検査値で少しメタボであったり、リスク値が上がっている発症前の人たち、それから既に「発症した人」、最後は「要介護」、大きく4つぐらいのステージがあります。ということで保険者機能と役割において〝健康増進をはかりましょう〟〝予防を推進しましょう〟〝早期治療を促進しましょう〟この3つの〝進〟があるので我々は「3進活動」と称して、悪化を防いで、体の改善をしていきましょうというのが、我々の仕事です。しかし、それらの活動が効果を上げているのかどうか分からないので、しっかりデータで検証をして、計側的に改善していくことが必要になってきます。いくらお金を投じてどれだけの人がどういう風に健康状態が変化していったか、良くなった人がどれだけ居て、悪くなった人がどれだけ居るのか等。更には、予防推進活動の一貫で健康増進が目的の〝ウオーキング〟〝健康教室〟〝栄養教室〟〝保健指導〟にどれだけの人が参加したか、それが増えているかどうか。継続的な変化度を見なくてはいけません。つまり、継続的な観察と検証が大事なんですね。

実は、日本で医療費をデータで見ることが出来るのは健保だけです。支払い基金にしても、6ヶ月しかデータを保留できないので、去年はどうだった、10年前はどうだったというのは分かりません。結局、縦覧点検も6ヶ月前までで限定的です。また、厚労省にデータはありますが、厚労省はそれを誰も活用できる状態にはしていません。公的な機関の公的サービスにしか使えないため、これも非常に限定的です。従って、健康保険組合だけが検診と医療のデータを持っており、定量的に検証できる唯一の機関です。カルテをもう少し分析し活用ましようという話もありますが、電子カルテの普及率は未だ半分位ですし、カルテの様式が様々で統一されていないため、データ分析が難しい。結局、日本の医療で標準化されていて、様式が統一されているのはレセプトだけなんです。それを活用出来るのは健保なので、検証しなければならない立場にあります。私が10年前に当健保に来た時にも最初にやったことは、実は医科レセプトデータの検証と分析でした。

繰り返しになりますが、保険者機能で最も重要なことは健康増進活動であり、その内容をデータで検証・分析していくことが大事で、しかもデータで交渉することが重要です。ということで今後は「データヘルス」の時代です。ただの保険事業、地域計画ではないのです。過去にいろいろ行われてきましたが、掛け声ばっかりで、目指すものはいいんですが、それをどのように行うという具体性が欠けていました。これから厚労省で、『データヘルス計画』というのが始まります。健保の存在意義が何処にあるのかというと、保険事業を行って国民の健康の向上をはかる、医療費を適正化していくことが基本的な役割であり、保険者機能です。これまで取り組んできた健保の活動は効果があるとして、その活動を標準化していきたい。今まではバラバラに夫々が勝手にやっていたことを制度的に纏めていきたい。しっかりエビデンスを作り上げていくと、健保のヘルス事業がパターン化され標準化されます。その標準パターンを協会健保なり国保に展開しましょうという計画です。つまり、健保が取り組んでいることは、医療費の増加抑制です。毎年1兆円と云われる医療費の増加を抑制するにはやはり保険者機能で健康を増進するしかありません。また、その健康増進をはかるためにはもう少し「見える化」をしましょうと。その辺のことはデンソー健保が先進的モデルとして紹介されることになっています。

 

―医療費の適正化ではないということですね?

健保が目指すものは、先ほども話した通り、「健康の向上」と「給付の充実」、それから「財政の健全化」で、これを実施するためには、限られた財源の中で、効率的で費用対効果がしっかりしたものでなければなりません。従って医療費の適正化ではなく、適正な医療の提供に努める。医療費を適正化するということは、かかった医療費を簡単に言うと安くするや値切るということではなく、不必要な医療をどうやってカットしていくか、不必要な医療はやめましょうと。その上で〝不必要な医療とは何か?〟ということになる訳で、そこがポイントなんです。「必要な医療」を「必要な時」に「必要な人」に「必要なコスト」で提供する訳ですが、それらを業績に照らして正しいか否かをみましょうと。

 

―赤塚常勤顧問は、柔整は必要であるとお考えでしょうか?また柔整療養費において何が問題であるとお考えでしょうか?

柔整は必要か必要じゃないかという議論は、意味がありません。必要だからあるんであって、問題は〝必要でない行為がされていないか〟というところです。其処が一番のポイントであり、其処が信頼感を損なっている原因の一つなんですね。信頼を損なった背景にはいろいろあります。施術者が多すぎること、様々な団体が乱立していること、教育が徹底されていないこと等が挙げられます。しかも管理監督する所が不明解で、厚労省の中での位置づけ、医療の中の位置づけが非常に不明解です。受領委任制度一つとってみても課長通達で、それも昭和11年から継続されており、既に半世紀以上を経ています。監督官庁がやるべきことをやって来なかったことも然ることながら、それに甘んじてきた業界が問題です。他にもやはり業界内部の問題ですが、教育と人材育成の問題があります。施術者ですから技術的な面は当然勉強されると思いますが〝社会にどう貢献するか〟〝社会にどういう役割を果たすか〟という観点の勉強といいますか、そういった面での教育をされていないのでは?と。その辺を皆さん軽んじられている人が多いように感じます。

我々企業は極めて厳しく人材育成を行っています。特にモラル教育を徹底的にします。そういう制度をやはり柔整業界でも取り入れてほしいですね。更に申し上げると、企業は収益を上げるのが第一、これは何所でも一緒で、これはやむを得ないことで、そのために財務的な基盤をしっかりするというのは当たり前です。しかし、問題は達成手段で、その達成手段で一番大事なことは、CS(Customer Satisfaction)といいますが、それに応える品質、品質というのは物だけではなく、サービスの品質であり、柔整でいうと施術の品質〝患者様に品質の高い施術をしていますか?〟が問われるのです。日本は、何故「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるまでに発展したかというとCS品質管理、QCクオリティコントロール、PDCAプラン・ドウー・チェック・アクションを日本は徹底的にやったからです。デンソーの製品は100万分の1単位の徹底した品質管理をしてここまで来ている訳です。従って、そういう企業から見ると柔整業界があまりにも緩いというか、しっかりした品質管理がされていない。ですから色々ある問題の中でも大きな問題は〝世の中が求めている品質のサービスを提供していますか?〟〝それを切磋琢磨してやっていますか?〟と。

医療分野に所属している人たちであるのに、患者のため国民のためという観点で施術を行っている人があまりにも少なすぎる感じを受けます。不正が多いと言われ続けていることは、確かなことなのでハッキリ言いますが〝何故不正が多いのか?〟やはりモラルの欠如、学問的知識の足りなさ、これは本人だけの問題ではなく、やはり業界として、行政としてそういう公的な仕組みを持っていないからです。医師会・歯科医師会等には統一機関があり其処の公的な場で主張すれば全て広報されることになっています。医療との棲み分け、医療としての法的な根拠、保険診療が意味するところが明確化されていない。ただ保険請求は別枠のものであり、医療を受けたかどうかに対してお金を支払うものです。出来高払いとはいうものの、治ったか治らないかに対してお金を支払っていないのです。また医療行為に対する保険料の支払いには法的なルールがあり、それが医科であれば保険点数だったりする訳ですが、柔整はそういうものが特に明確になっていない。例えば医科では適応外使用になると、極めて明確な医学的判断と保険点数解釈に基づいて厳しい査定が行われます。医療行為は自分の信念や医療的判断で何をやってもらっても結構ですが、お金に換算し請求するのはルールに従って行うというのが保険診療です。これがダメなら自由診療しかない訳です。従って、保険診療である以上はルールに従ってください。其処の理解があまりにもされていないので不正請求になってしまう可能性がある。そこが一番の問題です。

 

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