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フランスベッドグループ健康保険組合・土屋誠一郎常務理事に聞く!

2013/06/01

近年、保険財政はいよいよ厳しくなるいっぽうである。そういった中で、健康保険組合は様々な努力を強いられている。

昨年3月に厚労省からの通知が出されたことで、適正化の名目で患者照会調査があたり前になり、しかも民間への委託が増加の一途である。結果的に受診抑制を招き、柔整の存続は危機に瀕している。果たしてそれが全体の医療費を抑える効果に繋がるのかどうかは、全く不明である。

健康保険組合は柔整業界をどのように見て、またどのようであって欲しいと考えているのであろうか。

 

スペシャルインタビュー「保険者に聞く!」
フランスベッドグループ健康保険組合常務理事   土屋  誠一郎  氏

―先ずはじめに貴保険組合の設立の経緯と理念についてお聞かせ願います。

当組合は昭和40年に設立したフランスベッド健康保険組合と昭和46年設立のフランスベッド販売健康保険組合(平成9年にフランスベッドメディカルサービス健康保険組合に名称変更)が平成16年に合併し、現在の9事業所で構成するフランスベッドグループ健康保険組合となりました。合併の主な経緯は、フランスベッド健保組合は厳しい財政状況が続いており年々保険料率が上昇、一方、メディカルサービス健保組合は被保険者数の減少により900人を切る状態になった事がきっかけとなったようです。現在、被保険者が2300人、被扶養者を合わせ約4300人の規模となっています。当組合の理念ですが、私を含め全職員が健保業務については5年以内であり、従って、まだ健保組合が何ぞやということが分っていない部分もあります。又組合員も健康保険制度や健保組合の意味合いをよく理解していない方が意外に多いので、現段階では健保組合の事業内容や存在意義を事業主や組合員にしっかりと理解してもらう事を一義と考えております。そういう考えで今は健保の骨組・土台作りを原点に戻り、確りやらさせてもらっています。同時に"保険者判断"という非常に重要な判定を迫られるケースも多々あるので法令遵守を念頭におき、個人情報の管理・公正・平等の精神で取組んでいます。今更グループ内に健保組合をPRするのもおかしいかなと思いますが、切り口を変えて取組むと意外な発見や賛同者も現れ、地道で継続的な活動も効果的であり、非常に大切なことであると感じています。

 

―土屋常務は、柔整療養費において何が問題であるとお考えでしょうか?

柔整療養費の問題については個々の案件というよりも、制度自体の問題と財政を基本に考える必要があると考えます。特に制度については自由診療と保険適用が当たり前に混在し、その決定は各々の立場や判断で決定され、その事が財政問題にも大きく影響する訳ですから必然的に受診抑制や不正糾弾が中心となってしまうのでしょうね。保険者は法に基づいて活動している訳ですが、その法が余りにもアバウト過ぎるのではないかと考えています。運営上にも問題点はあると思いますが、判定者が肯定的に考えるか、否かによってジャッジが真逆となる、誠に不可解な制度であることが根本的な問題であると常々思っています。つまり、基本的なルールがあってもそれを適切に運用出来ない実態の見直しを行なわない限り、埒が明かなと感じます。当然、管轄省庁は実態を掌握し対応はなされているように思えますが、もっと現状を直視し迅速に対応してくれていれば、ここまでにはならなかったと思っています。患者が悪い、保険者が悪い、柔整師が悪い等と責任のなすり合いをしているようでは解決案は期待できず、法律を変える事は大変なこととは思いますが、柔整問題は現状の制度とその運用の見直しを行なう事が必要と考えます。不正者に対する指導や罰則についても逃げ道があるように思います。財政問題は制度自体が正常化されれば役割が明確となり、ある程度は解消していくと思います。その他には立場上、日常化された"保険適応可"の話法も気になります。患者は保険が効くから行こうといった程度の感覚でありそこには悪意も不正もありません。〝こういう場合は接骨院に行ったらダメですよ〟と言われて〝何故ダメなの?〟という感覚です。柔整師の方にも保険適用の可否も含め、正しいルールでの対応を患者さんには説明をして頂きたいと思います。余談ですが"健康保険で禁煙しましょう"というキャンペーンを聞きますがタバコを吸わない人は趣味嗜好で吸っているのに何故、保険適用なの?と疑問に思う方もいると思います。国が健康指導としてメタボ対策や禁煙を呼びかけることは大切であると思いますが、保険適用についてはもう少し多面的に捉えてもらう事も必要かなと考えます。他にも「医師の了解を得て、医師の判断で診てもらって施術されるのは良い」とされるなら、医者と柔整師さんが連携を組めるような行政指導やルール改正があっても良いのではないかと思っています。そうすれば患者も安心して接骨院にかかれますし、それで完治すれば医療費や調剤費の削減にもなりますし、又頻回受診だとか回数制限の問題もなくなってくると思います。個々の問題解決の為にもその壁となる法整備や制度改革を早急に期待するところです。当然、自分たちの襟を正す事も重要であり、全部を一緒くたにして柔整師が悪い、保険者が厳しい、なんて主張していたら何時まで経っても平行線のままでしょうね。

 

―療養費適正化の徹底をはかるということで2012年3月12日に厚労省から各保険者に通知が出されましたが、貴組合ではそれより以前から療養費の適正化に取り組まれていらっしゃいましたか?またこの通知以後、どのように取り組みを開始されましたでしょうか?

昔のフランスベッド健保組合は適正化の為の審査基準は厳しかったそうです。逆にメディカル健保組合の審査はどちらかというと緩かったそうで、それが一緒になった訳ですから、どっちつかずの状態が続いていましたが、この通知以降は当健保では内容審査についても適時におこなっています。柔整照会は月の診療回数が少なくても、3ヶ月以上継続しているものには行なうようにしています。今般の法令改定もあり、もう少しシビアに審査や照会をおこなっていこうとも考えています。ただし、外部に委託し誰も彼も厳しくやるというのではなく、当健保の規模では3人でチェックすることになりますので、自然と〝この方は何回目だね、そろそろ照会を出そうか〟という形になっておりこれを継続していくつもりです。近年、照会を行った中で、22年に3軒、23年は2件、24年に1件不支給通知を出したことがあります。数ヶ月にわたり15回以上の頻回受診、それも多部位を繰り返す内容でしたので本人に〝多部位受診でもありこのままでは治癒が見込めないため、自費でお願いします。不服があったらお申し出ください〟という文書を送りました。柔整師さんには不支給で申請書の返却したことはありませんが、電話で申し出たことはあります。明細には月20回以上治療を行っていたことから本人に照会したところ〝私は行ってませんよ〟と回答があった為です。結論としその柔整師は患者の高校時代からの知人で、勝手に名前を使い請求をおこなったのです。訴えこそしませんでしたが、残念ながらこのときは業界への不信感を身をもって感じました。何万人もいる健保さんではそういうケースも目立ち、敢えて外部に審査委託したり、厳しく照会を行なうのは業務遂行上ごく当たり前の業務であると考えます。当健保では母体企業の事業の関係で60歳以上の方の雇用も多く、国保より当健保に加入してくるケースが結構ありますが、それらの中で柔整の頻回受診・多部位治療が目立っており保険者間の審査ギャップを感じています。これらの対応策も現在、検討しているところです。

 

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