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スペシャルインタビュー:日野市長・大坪 冬彦 氏

2016/05/01

―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。日野市において、人材は足りているのでしょうか。

八王子にハローワークがありますが、そこの有効求人倍率を見ますと、27年12月の常用的パートタイムでは、介護職が2.2です。東京全体では10を超えていますから、それに比べると少しましであるとは思います。ただし、常用的なフルタイムで見ますと1を下回って0.95です。介護事業所はいろいろな人材を求めており、スポットの勤務形態を求めている一方で、逆に働きたい方は安定的な収入を求めて常勤職での採用を望んでいますから、ミスマッチの部分があるのかなというところはあります。従って、全国的にみれば勿論人材不足でしょうけれども、多摩地域の日野市では未だそれ程ではないということが言えるように思います。いずれにしても何所の介護事業所も経営が厳しいため、これから更に2025年に向かって深刻な人材不足が予想されます。

平成25年に当市では「介護保険事業計画」策定のための調査を行っており、その時に介護事業所に対して実施した調査では、保健師、看護師、介護福祉士の採用が困難であるという結果が出ております。また、当市では市立病院をもっておりまして、全国に案内をして看護師さんに来てもらうことをやっておりますが、所謂奪い合いで中々厳しいと実感しております。当市の場合は、市内の介護業界の団体とお会いして、ハローワークとの連携等も行っておりますし、その上で介護職の求人説明会もやっておりますが、中々決め手がなくて厳しい。今回、介護報酬が少し下がりました。ただ加算が少し増えましたから、加算を頑張ってとっている所は何とかやれておりますが、やはり経営体力がありますから中小、小さい所は非常に厳しい。という訳で人が集まらないという状況が続いておりまして、これから市としてもどう対処すべきか悩ましい問題であります。

当市では一時、ヘルパーさんの資格を取るための講座を受講する方にお金を一部助成をすることを行っていましたが、自治体単独で人材育成を目指すのは、どうしても厳しいところがありますから、今後行うとすれば複数の自治体で取り組む、或いは東京都を動かすなど、そういうアクションを起こしていかなければ、この問題は中々解決しないと思います。

 

―古来から地域医療を支えてきた医療職種である柔道整復師は、骨接ぎ・接骨院の先生として地域住民の方々に親しまれてきました。また柔道整復師はスポーツ現場でもスポーツトレーナーとしてアスリートの怪我やパフォーマンスの向上に役立つ指導を行ってきました。今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。運動能力を維持していくには、単に痛みを取るという考えではなく、能力そのものへの取り組みとしてトレーナー的な業務は必要と感じます。介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種であります。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能でしょうか。大坪市長のお考えをお聞かせ下さい。

今年度から「介護予防・日常生活支援総合事業」という、昨年まで行っていた所謂介護予防ですが、要支援者を対象に新しいサービスとして機能訓練等のサービスを通所施設で行う第1号の通所事業が出来ました。それについては接骨院等でも可能ではないかと考えておりまして、既に市内の接骨院の方から参入する意向を頂いております。

私ども「介護予防・日常生活支援総合事業」を組み立てる上で既存の介護事業所だけではなく、様々な力をお借りしたいということで多様な主体の中の多様なサービスの展開が特徴ですから、柔道整復師の方の参入も頂いて、新たな機能訓練の手段という位置づけでこれから始めていきたいと思っております。所謂西洋医学的なアプローチではない形でのアプローチの能力とノウハウをお持ちですから、やはり当市としては、健康長寿を目標に市民の皆様に運動して頂きたいといった方向でありますし、既存の介護事業所の中の介護予防という点で活躍の場所はますます大きいと思っています。西洋医学的に治すというよりも生活の中で如何に使えるようにするかが一番大事です。私自身、町の接骨院にも随分行きましたけれども、単純に治すだけではない、QOL向上のためのより良い処方をして頂きましたから、その辺は分っておりますので、是非そういう面で期待しています。

 

―やはり、医療のいきづまりといいますか、今後は治す医療ではなく、生活支援型の医療を目指すといわれているお医者様も多くいらっしゃいます。生活支援、QOLの向上をはかっていくことは今後重要になっていくと思います。日野市でも健康教室、転倒予防教室、市民ウオーキング等、予防医療の取り組み並びに様々な取り組みをされていることが分ります。たとえば転倒予防教室などはどのような方を対象に行われ、その指導者はどうやって選ばれているのでしょうか?よろしければ教えてください。

介護予防事業としては、先ほど申し上げました介護保険の流れの中で地域の方々が自発的に取り組む事業へと今転換をはかっているところです。 現時点で、地域包括支援センターの保健師さんが、中心となって予防知識の普及・啓蒙活動を行っております。その中でいろいろな方に参加して頂きたいというのが今の1つの方向です。

日野市が行っている代表的な運動事業としては「さわやか健康体操」と「悠々元気体操」があります。「さわやか健康体操」というのは、65歳以上の方で運動習慣がない市民を対象に、これまで市内26会場で約2200人が参加しており、かなりの歴史があります。軽度のストレッチ、足腰の筋力トレーニング、リズム体操等を行っています。これについては、健康運動指導士等の専門の運動指導員に担当していただいております。

しかし、高齢化が進む中、資格を有する専門の運動指導員がすべて指導するには限界があります。そこで、当市は市民の力を健康行政に生かしていくため、健康体操サポーターという市民ボランティアの体操指導者の養成も行っております。1年間の養成講座受講後、市民への体操指導を行っていただいており、年間330回派遣をしております。

もう1つの「悠々元気体操」の方も、健康運動指導士等の専門の運動指導員に担当していただいております。対象を70歳以上とし、「さわやか健康体操」よりも運動強度を低くして、より転倒予防、寝たきり防止の側面が強いものとなっています。 もうちょっと緩やかなところでは、平成15年度から「健康づくり推進員」という方を募って、もう10年以上の歴史をもっていますが、現在44名の方が参加され、ウォーキングであったり、ゲームを行ったり、運動も兼ねて緩やかな形で市民自らが主導し参加者の募集も行って、現在44名の方夫々が地域で活躍しています。

 

―今後、病院で死ぬことが出来ない時代がやってくる中で、どのような地域社会を構築できるか。地域における健康づくりを従来型の健康政策のみではなく、機能の集約化、住居環境及び交通網の整備などまちづくりの視点も加えた総合的な施策の構築等についてはどのようなお考えをおもちでしょうか。

日野市の面積は、27.1平方キロで狭いんですね。ですから既にコンパクトシティであります(笑)。面積が非常に大きい自治体は都市部の部分と過疎の部分をどうするかということで、ギュッと圧縮してコンパクトにするという話がありますが、それは当市では全く考えておりません。

日野市の課題は、先ほど高齢化と申し上げましたが、特に市内中央を横断す河川の南側、京王線沿線の丘陵地を中心に高齢化のピッチが急速で、まさに其の地域は高度成長期にいろんなデベロッパーさんが開発して、一斉にドーンと居住して、その後子供たちは出て行ってしまって、一斉に高齢化が進みました。しかも、そういう方々が外出困難者であり、買物難民でもありますので、市としては面積が狭いので、そういう方々を高台から下ろすのではなく、ミニバスやワゴンタクシーをかなり以前から市内を走らせています。そうすることによって、そういう方々の外出機会を増やして、それを通じてQOLを上げていきたいと考えています。

又、先ほど申し上げたヘルスケアウェルネス、「健康長寿のまちづくり」の一貫として「歩きたくなるまちづくり」を今進めています。ハード面で、例えば川沿いの遊歩道のコースにウォーキングサインを付けたり、ベンチやトイレを設置したり、公園に健康運動器具を設置する等、其処にお誘いをして楽しくなって歩きだしたくなるような、そんなまちづくりを考えて、やり始めているところです。あと、もう1つは、空き家条例を今年度作成する予定です。空き家を如何に活用するか、高齢者のサロンなど福祉目的に活用するようなこともやって行きたいと思っておりまして、そういうまちづくりの動きと「地域包括ケア」をセットにした総合的な動きをこれからつくろうとしているのが日野市の現状です。

 

●大坪冬彦氏プロフィール

昭和32年12月8日、東京都大田区生まれ。同51年3月、桐朋高校卒業。同56年3月、一橋大学経済学部卒業。同56年4月、日野市役所入所。平成17年2月、資産税課長に就任。同18年4月、高齢福祉課長に就任。同20年2月、健康福祉部長に就任。同23年2月、まちづくり部長に就任。同25年2月、日野市役所退職。同25年4月、日野市長就任、現在に至る。
趣味:読書。体を動かすこと。
座右の銘:「人への感謝を忘れずに」

 

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