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スペシャルインタビュー:日野市長・大坪 冬彦 氏

2016/05/01

日野市の人口は182,787人である(平成28年3月現在)。日野市は知る人ぞ知る新選組の副長として活躍した土方歳三の出身地である。また国内トラック・バス業界最大手日野自動車の本社所在地でもある。市内には、179ヶ所の湧水が確認され、これらの特徴を生かした緑豊かなゆとりとうるおいのあるまちづくりを推進する等、望ましい環境を次世代へ継承できるよう市民・民間団体・事業者の各主体が一緒になって地球環境に優しいまちづくりに取り組んでいる。

そんなまちづくりのトップリーダーとして恵まれた才能と市民目線で人望あふれる日野市の大坪市長に日野市のグランドデザインを話していただいた。

 

市民自らが繋がり合う支援体制と「地域包括ケアシステムの構築」を一体化し、心身ともに健康長寿のまちづくりを目指しています!
大坪氏

日野市長
大坪 冬彦 氏

 

―日本の社会保障制度について大坪市長のお考えをお聞かせください。

これからどの国も経験したことがない超高齢化社会に向かっていきますので、それに伴って年金・医療・介護等の社会保障費が右肩上がりに膨張していくことになります。一方、少子化のためにこの社会保障の財源を捻出する生産年齢層が減っていくという意味で今後社会保障制度の存続が危うくなっていくという危機感を抱いております。また、少子化の原因となっている若者雇用の劣化や最近話題になっている子どもの貧困率が史上最悪ということで、日本は子育て支援等の政策についてはかなり貧弱で、OECD諸国と比較すると教育も含めて子どもや若い世代への支出が少ないというのが日本の特徴であると思っております。但し、先ほど申し上げましたように年金・医療・介護の支出が膨らみ高齢者にシフトしておりますが、一方で高齢者の中にも「下流老人」という言葉が昨年流行りましたように、そういう意味で格差が生じていると思っています。日本の社会保障の特徴は、最近は「地域包括ケアシステムの構築」が言われている中で、近年少しずつ解消されてはおりますが、やはりまだまだ施設入所中心或いは病院中心の社会保障制度であるというのが特徴と思っております。

 

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展と少子化に対する日野市の取組みを教えてください。

増田寛也さんの「896の自治体が消滅する」という衝撃的な宣言の前から私ども日野市では、団塊の世代が75歳以上になる2025年、団塊ジュニアが65歳以上になる2040年を見据えて、明らかにもっと高齢化が進めば、当然医療・介護の費用がパンクするぐらい大きくなり、しかも人口減少で生産年齢人口が減ってきますから、担い手が少なくなってくる。其処を見据えて具体的にどうして行くかということで、基本的に3つの戦略を組み立てました。

1つは、人口のバランスと定住化を図っていく。2つ目は、産業立地を強化して雇用を確保していく。3つ目は、ヘルスケアウェルネスということで「健康長寿のまちづくり」です。つまり、医療や介護費用の右肩上がりを出来るだけ減らすには、様々な世代が健康づくりに励み、医療・介護費用を少しでも減らしたいという考えです。そうした3つのテーマでの戦略のフレームを決めて、いろんな企画を進めていこうと取組み始めたところです。

そうこうしている内に増田さんの発言があり、政府が動いて「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を打ち出した訳ですが、基本的には今お話した3つの戦略がほぼ地方創生の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」にそのままシフトしたという感があります。ただ若干「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は人口減少問題、特に希望出生率を1.8以上にするところにシフトしていますけれども、課題認識は同じですから、それに沿って進めていくということです。少子化対策といっても、人口をいきなり増やすことは難しいですし、人口が減少しても、要はバランスなんですね。極端に高齢者にシフトしていないように、いろいろな世代が活力ある地域社会を目指そうということで取り組んでおります。しかも今のシニア層は非常に元気ですし、70歳を超えても高度な技能や知識を持っている方が大勢いらっしゃいますので、そういう方々も経済活動の主体として働けるように地域サービスの支え手になって頂くような環境を作っていきたいと考えております。また長期的には出生率の改善もはからなければなりませんから、当然保育園の整備とか待期児童の解消等、子育て支援もしていかなければなりません。しかも第2子、第3子の子どもの出産を思いとどまる方が多いので、そのためにはどうしたら良いのかということで、行政だけではなく地域の企業、大学等、産学官が連携して課題解決に向かっていきたいという考えです。

総合的にみて、我々が出しているのは「ポストベッドタウン構想」という計画です。日野市もそうですが、東京の近郊である三多摩はほぼ同じで、都心・都区内で働く方が「寝に帰るまち」ということで、それが高齢化してしまいますと市全体が沈んでしまいますので、やはり働き方というのは「職」と「住」が分かれているのをなるべく近密にして、それをベースに多様な働き方をして頂けるような、また女性の働き方も含めて、いま女性が進出していますけれども更に活躍するためにも「ポストベッドタウン構想」を打ち出していきたいと考えています。そのためには当然雇用も含めて働き方を見直さなければなりませんし、いま日野市の大手の工場が撤退の動きもありますので、その跡地に新しい産業を誘致することで、新しい職住近接の雇用を生み出していきたい。しかも女性の働き方を支援し、子育て支援もしていきたいと考えております。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、私どもは生活価値を共に創り上げるという「共創の都市」ということでポストベッドタウンを掲げておりまして、これらが日野市の人口減少社会に対する基本政策であり、取組みを開始したところです。

 

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。日野市で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況についてお聞かせください。

今後一番大きな中心となるテーマだと思います。しかしながら、中々簡単ではありません。それについては、国も私どもも言っておりますけれども、地域包括ケアシステムの中心的な考え方として、一番取り組まなければならないのは、「医療と介護の連携の構築」だと思います。

社会資源として、例えば介護保険系の訪問看護ステーションなどいろいろ出来ていますし、様々な訪問事業所も出来ておりますので、在宅サービスを支える事業者は沢山いらっしゃいます。一方、お医者さんも沢山いらっしゃって、夫々が一緒に歩んで連携していく仕組みが重要です。それを如何に構築するかというのが、地域包括ケアシステムを作りあげていく上で一番のポイントであると思います。そういうことで当市は、医療と介護の関係者団体で構成される「在宅高齢者の療養推進協議会」を設置して、その中で多くの部会をもちながら介護と医療の連携をはかることを目的に「多職種連携ガイド」を作っており、「介護と医療の連携シート」とツールの作成も行っております。それらを活用して、一人一人の患者さんや在宅医療・介護を受ける方に対して一つの共通の認識を持って臨んでいくための仕組みづくりを今始めております。そういった専門の多職種間の連携基盤を如何に構築するかというのが、地域包括ケアシステムを進める上で大きなポイントになりますので、勉強会を行うなど色々顔の見える関係づくりを進めてきました。

やはり以前に比べると医師会、そして介護の業界、行政も含めていろんな方々との関係がよくなって顔の見える関係を築けてきておりますので、かなり垣根は低くなったように感じております。しかしながらまだまだ夫々がバラバラに動いていることもありますし、連携が上手くいっていないところもありますから、その辺を如何に、点と点を組み合わせて面にしていくのかというのは、これからの大きな課題と思います。それが上手くいかないと地域包括ケアといっても掛け声だおれになってしまいます。在宅医療については医師会との関係で在宅療養・介護連携支援センターを作る予定です。丁度、医師会が医師会館を新しく移設しまして、そこにセンターを作って、連携の仕組みづくりの拠点としていきたいという構想を進めており、それらが現時点での到達点であります。

 

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