menu

スペシャルインタビュー:  相模原市長・加山  俊夫  氏

2014/09/16

―昨今、地球規模で大災害が多発しています。相模原市の防災計画について教えてください。また、東日本大震災では相模原市はどのような支援をされましたか?

相模原市は、内陸部にあり、比較的安定した地盤に位置しているため、これまで、わが国の災害の歴史に残るような大きな被害を受けた例はないと認識しています。しかしながら、東日本大震災のような大地震やゲリラ豪雨災害など、いつ起こるか分からない災害に対し、各地の事例を検証しながら、あらゆる想像力を働かせて、万全な備えを行っておくことは、基礎自治体の重要な責務の一つであり、また、そのことが市民の安心につながり、日ごろからの市民生活や経済活動を支えていくものであることから、地域防災力は、都市の重要インフラの一つであるともいえます。

防災対策において重要なことは、大きく3点あり、1点目は、大災害時には行政も被災するということで、行政による公助の力を円滑に発揮できない現実をはっきり認識しておくことが必要であると感じています。このため、庁舎や学校、その他公共インフラの強靭化、職員の安否確認や情報伝達手段の確保とともに、災害時の優先業務の整理、他の自治体からの職員派遣やボランティアの受入れなど受援の体制づくり等が重要となります。具体的には、これまで本市では、職員参集システムや災害情報共有システムの整備とともに、業務継続計画の策定を進めてきました。さらに今年度は、災害受援計画の策定に取り組んでいきます。

2点目は、自分の身は自分で守ること、地域で助け合うという取組み、いわゆる自助・共助こそが災害対策の基本であることをみんなで理解し、備えを進めることが重要だということです。こうした認識のもと、本年3月に防災条例を制定するとともに、「防災・減災プログラム」に基づき、様々な取組みを進めています。本市では、平成25年度から27年度を集中取組期間として必要な事業を「防災・減災プログラム」としてまとめ、市民や議会の理解をいただきながら、パッケージで進めているところで、他都市には例のない思い切った取組みと自負しているところです。

(具体的な取組み)

防災スクールによる「防災マイスター」の養成(平成25年度~)
「防災マイスター」の地域への派遣(平成26年度~)
自主防災組織への小型消防ポンプの配備(平成25年度~)
自主防災力向上事業交付金(平成25年度~)
地区防災計画の策定(平成26・27年度に策定予定)
市内事業者の業務継続計画(BCP)策定支援(平成25年度~)

3点目は、都県や政令指定都市などとの広域的な連携体制を構築することです。災害対応が中長期化した場合、救援物資の確保や復旧・復興に向けた取組などを、自治体間でカウンターパート方式により支援する仕組みが非常に有効です。その主な内容としては、指定都市市長会において「広域・大規模災害時における指定都市市長会行動計画」をまとめたほか、九都県市災害時相互応援に関する協定、21大都市災害時相互応援に関する協定を締結しています。このほか、今後の取組として、まちづくりにおける広域防災拠点機能の検討、広域的な運用を想定した防災備蓄倉庫の整備等があります。

来る9月1日には、九都県市(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市)の合同防災訓練を行います。①九都県市の連携・協力体制の充実を図る、②九都県市と国・他自治体及び防災関係機関等との連携強化を図る、③九都県市約3,500万人の住民の防災意識の高揚及び減災への備えの向上を図る、④九都県市に共通する防災上の諸問題の解決に資する、この4つを目的に相模原市で第35回九都県市合同防災訓練を実施します。毎年、九都県市の防災力を向上させるということで九都県市が持ち回りで総合訓練を行っている訳ですが、今年度は主会場が本市ですから、消防は勿論のこと災害に対応する各機関や団体も含めて全てこの総合防災訓練に参加しますし、自衛隊、そしてまた米軍も参加します。多くの市民をはじめ関係者が参加する大がかりな訓練を予定しております。

東日本大震災での被災地支援については、本市は発災後、ただちに緊急消防援助隊を被災地に派遣するとともに、岩手県大船渡市の支援に取り組みました。大船渡市は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究施設を有する縁で、長年にわたり、行政、市民、経済など多様な交流を行っていることから、市職員の派遣とともに、市民、事業者からの協力も得ながら様々な支援を行っています。このほか、石巻市、福島県新地町(しんちまち)に職員を派遣しており、着実な復興に向け、息の長い支援を続けて参りたいと考えております。

(支援の内容)

平成23年3月11日から平成26年4月1日までの間、被災地への職員派遣は528名(短期493名、長期35名)の内、大船渡市26.9名、仙台市140名、福島県90名等。
平成23年3月21日から5月15日緊急支援物資の輸送を実施(個人からの応援物資4,084人、2,982箱。企業や団体等による緊急支援物資166企業・団体)。
市内各種団体に被災地支援の協力を要請
被災地への義援金総額2億8,826万9,380円(平成26年5月末日現在)
日本赤十字社義援金1億403万4,551円
大船渡応援金  1億8,423万4,829円

 

―柔道整復は阪神淡路の大震災、東日本大震災時においても活躍してきました。柔道整復は、高度診断機器、薬物を用いることなく救護にあたれる医療職種として、また近年盛んに言われ出したエコ医療であると言えます。加山市長から見て、柔道整復は今後どのような活用が望まれるでしょうか。

東日本大震災では、本市の柔道整復師会の皆さんは、被災者の方々の支援のため、大船渡市を訪問されました。震災初期では、ケガした方の外科系医療の場面で、避難生活が長期に及ぶ場合には、健康維持の場面で、柔道整復師さんの役割は幅広くかつ重要であると考えております。また、柔道整復師会の皆さんには、本市の防災体制の中でも、特に「救護所」の運営を担う一員として、ケガをされた方の応急処置をお願いし、訓練にも参加いただいています。災害時などにおいて、機器や設備が不十分な環境でも、柔道整復師の技能をもって応急処置をしていただくなど、重要な役割を果たしていただくことは、大変心強いと思っているところで、また平時においても、加齢とともに身体的機能や運動能力が低下した高齢者の健康維持、増進に、柔道整復師さんの活躍する場面は多くなってくると考えております。全国的にも、特に大都市圏を中心に病院や接骨院などに就業する柔道整復師が増え続けており、施術所も増加していると聞いておりますが、その有用な人的資源を本市に限らず上手く活用させていただければと思っております。また、福祉や介護の現場でも機能訓練指導員として活躍する柔道整復師さんもかなりいらっしゃるとお聞きしておりますので、今後充実を図る地域包括ケアシステムを支えていただく面でも大いに期待しているところです。

 

●加山俊夫氏プロフィール

 

昭和  20年2月   生まれ
        42年3月   東京経済大学経済学部卒業
        38年3月   相模原市職員に採用
平成   元年4月   同相模大野駅周辺整備事務所長
          9年4月   同都市整備部長
        12年4月   同経済部長
        14年4月   同消防長
        14年7月   同都市部長
        16年4月   同助役
        19年4月   相模原市長(1期)
        23年4月   相模原市長(2期)
現在に至る。
神奈川県市長会顧問、神奈川県基地関係県市連絡協議会副会長、相模原市米軍基地返還促進等市民協議会会長、首都圏産業活性化協会理事、リニア中央新幹線建設促進神奈川県期成同盟会副会長、その他多くの役職を務める。

座右の銘:   至誠一貫

前のページ 次のページ
大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー