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スペシャルインタビュー:  相模原市長・加山  俊夫  氏

2014/09/16

―相模原市がめざす地域包括ケアシステムについて

75歳以上の高齢者は、慢性疾患による受療が多く、要介護や認知症の発生率が高い等の特徴を有しており、医療と介護の更なる連携が必要と考えています。特に在宅医療・介護の連携にあたっては、医師会をはじめ、介護関係職種など多くの職種が一緒になって取り組む必要があり、医療介護連携推進事業研修や医療と介護の連絡調整を行う「地域ケアサポート医」を平成22年度から設置しており、医師を各区に2名、歯科医師を中央区に1名、全市を対象とした精神科医を1名、合計8名を配置しています。

日本の医療は充実していると言われておりますが、今は、特定の臓器や疾患を担当する専門医が多いと思います。今後地域包括ケアシステムの構築をしていく上では、幅広い視野で患者を全体的に診ることができる「総合診療医」が求められて来ると思っています。そこで、今後の地域医療や在宅医療を担う「総合診療医」を育成・確保しようと、北里大学と連携して、昨年度から医学生に対する修学資金の貸付事業などの施策も開始しています。

 

また、毎年、市内医療関係者の皆様と、将来の相模原市の医療について語り合う「医療懇話会」を開催していますが、その中で、昨年度は医療連携などについて意見交換を行いました。本市の場合は、医師会・病院協会・大学病院などの医療関係団体と連携し、役割を分担しています。特に救急医療では、一次救急は市内4箇所の「メディカルセンター」において医師会の医師が中心となって休日・夜間の患者に対応し、二次救急は病院協会の会員病院が輪番制で対応、三次救急は北里大学病院において対応しています。その中で、救急搬送時に4回以上照会しても受け入れに至らない、または30分以上の現場滞在の状況にある場合には、北里大学病院救命救急センターで一時的な受け入れと必要な処置を行っていただく「相模原ルール」を策定しています。この「相模原ルール」に基づく万全な救急医療体制は、本市が他に誇れるものだと思っています。今後の超高齢社会の中では、医療関係者の協力を得ながら、医療連携を図るとともに、医療、介護、予防、生活支援、住まいが一体的に提供される地域包括ケアシステムを充実していきたいと考えております。

 

―地域力が弱くなっているといわれる現在、地域における新たな支援体制の構築についてお聞かせください。

先程お話しました高齢者支援センターについては、市内26の日常生活圏域に配置し、高齢者の総合相談窓口、介護予防への取組の支援などを目的に、地域の中核的機関として、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員を配置し、運営しているところですが、平成27年度には、更に3箇所増設して29箇所にする予定です。しかもセンター職員には、専門性を高め、その役割を十分に担うことができるよう、それぞれの職種ごとに計画的に研修を実施し、質的向上に努めています。

 

今回の介護保険制度の改正では、介護予防や生活支援サービスについて、ボランティアやNPO法人、民間事業者など地域の多様な主体の参加により充実を図ることが求められており、他にも高齢者のニーズと多様な主体が行うサービスを効果的に結び付けるため、地域毎にコーディネーターを配置するとされています。先程申し上げました医療体制のように地域密着型で様々な取り組みを進めており、なお一層の充実を目指しているところですが、様々な生活支援サービスが必要で、やはりそのためにはボランティアの方々、NPO法人、民間団体等多様な方々の参加による補完機能の充実も図りながら進めていきたいと思っております。こういったことのために今どういう状況なのかということで、地域資源の実態調査を行っておりますので、その結果を踏まえて現状分析をしてどういう対応をしていくべきかを検討したいと考えているところです。

 

―介護人材、在宅系看護師等の人材不足が言われておりますが、相模原市においては人材は足りているのでしょうか。

介護の現場からは、介護職員の人材の確保に苦労しているとの声があります。採用しても早期に辞めてしまう状況もあるとのことであり、給料などの処遇面での課題もあるのかもしれません。市としては、高齢化の進行による介護需要の増大に対応するため、介護人材の確保や定着、育成が重要であり喫緊の課題と考えております。こうしたことから、介護事業所が行う研修や資格取得の支援などに取り組んでいるところで、その事業内容は、介護職員キャリアアップ支援や介護職員等研修(新任研修、現任研修、施設長・管理者研修、介護従事者認知症研修、公開講座)、及び市高齢者福祉施設協議会が実施する意識啓発や技術取得のための研修に対し、費用の一部助成を行っております。また、介護雇用プログラム推進事業により、新たな人材の確保、定着にも取り組んでいます。介護雇用プログラム推進事業とは、介護分野への就労を希望する失業者等に対し、介護事業所に勤務しながら養成講座を受講してもらう事業で、介護現場における雇用促進を図っているところです。

 

看護人材については、全国的に看護職員が不足しているといわれる中、人口10万人あたりの看護職員数は、全国で1,139人、県で790人のところ、本市は992人で、全国よりも低く、看護職員は不足している状況です。市では、看護師の育成・確保策として、相模原看護専門学校等に対する運営費の助成や、看護師を目指す学生に対する修学資金の貸付けなどを実施しています。本年度は、看護師の資格を持ちながらも離職されている、いわゆる潜在看護師に対する復職支援についても、相模原市病院協会と連携し相談会や研修会など新たな取り組みを進めているところで、6月にユニコムプラザさがみはら(南区)で「ナース・ワーク・コンシェルジュ」による看護就職相談会を開催しました。今後、10月に技術研修会、2月に説明会を実施予定です。また、看護職員が復職しやすい、定着しやすい職場環境を作るという意味では、院内保育等の促進も図る必要があります。病院に勤務する医師、看護師等の乳幼児を保育する院内保育施設設置者に、平成25年度は14施設の運営費の助成を行っています。さらに、在宅系の看護師については、市内の訪問看護ステーション数(7月現在30箇所)が年々増加している中、常勤の看護師が不足しており、非常勤の看護師で補っているところも多い状況で、高齢者が急増していくことを考えると、今後の在宅医療を支える在宅系の看護師の確保・育成についても大きな課題になると認識しています。そのため、訪問看護ステーションの連携体制の強化及び研修の実施等により訪問看護師の資質向上を図るとともに、更なるサービス提供体制の充実に取り組んでいきたいと考えております。

 

―今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種であります。柔道整復師の地域包括ケアシステムへの参入の可能性について、加山市長のお考えをお聞かせ下さい。

柔道整復師の皆さんには、従来から「はり・きゅう・マッサージ施術料助成事業」の実施に当たり、御協力をいただいているところです。この事業は、70~79歳の低所得高齢者及び80歳以上の高齢者の健康保持と福祉の増進を図るため、はり、きゅう、マッサージの施術料を助成させていただくというもので、平成25年度実績は、助成券交付者数が5,084人でした。本市においては、介護保険制度の地域支援事業の中の一次予防事業(元気高齢者向け事業)として各高齢者支援センターが実施する地域介護予防事業や、一部の地域で実施している「地域版足腰体力テスト」教室の講師としても柔道整復師さんに活動していただいております。また、高齢者の方を対象に、身近な地域で運動を中心とした介護予防活動を実践する団体を支援する「生き活きシニアのための地域活動補助事業」においても、講師として主体的に活動していただいており、今後も地域包括ケアシステムの構築を推進していく中で、専門的な立場から役割を担っていただきたいと考えています。

 

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