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日本柔道整復師会主催 2023年度日整学術・生涯学習講習会 開催

2024/01/16
国内自然災害に対して柔道整復師が果たしてきた役割・活動から考える未来 ―日本柔道整復師会災害対策室よりの提案―

災害対策室 森倫範氏

はじめに、森氏は〝これまでの災害の経験を元に、これから起こる災害に対してどのように活かすかを、災害対策室からの提案も含めてお話しさせていただく〟と述べた。

〝関東大震災発生から今年で100年になる。その約220年前にも同様に大きな災害があった。今後200~300年の間にマグニチュード8クラスの災害、喫緊ではこれから30~100年の間にマグニチュード7クラスの災害が起こると予測されている。大きな地震が起こったらもう地震はないというわけではなく、大地震の前後に多くの余震が続く。2021年3月11日に発災した東日本大震災を追跡したところ、その後4年間で震度4を超えた地震は108回あった。繰り返し地震が起こり、その恐怖にさらされ続けることになる。そのため、単発の地震だけで考えず、いかに長期的な対策を講じるかが重要となる。

近代では、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震の4つの大きな地震があった。 阪神淡路大震災発生時、被災地である兵庫県は大変な被害を受けたと思われるが、他県から柔道整復師が駆け付け、20日間で延べ60人の柔道整復師が延べ40カ所で活動したということが記録として残っている。東日本大震災発生時にも各県からボランティアで参加された先生方のご尽力があったことで、厚生労働大臣から感謝状が日本柔道整復師会へ贈呈されている。このように大きな災害が発生した際に、柔道整復師は被災地の力になることができる。日本柔道整復師会が中心となって、災害現場で何ができるのかをより具体的に検討していくために、2014年に立ち上げたのがDJAT(日整災害時救護チーム)だ。DJAT結成後に発生した熊本地震では、県内・県外の柔道整復師が 8地域73の避難所において5000人を超える被災者に対し救護活動を行った。北海道胆振東部地震では、北海道DJATとして北海道庁と連携を取り、初めて災害対応マニュアルを運用した災害救護活動を行った。こうして各都道府県DJATとしての活動は行っていたものの、日本柔道整復師会DJATとして日本柔道整復師会主導で行った活動はない。そこで2022年7月に災害対策室を設置して議論を重ね、2023年7月より正式に会長直轄の機関として災害対策室の活動が始まった。

災害はいつ起こるかわからない。南海トラフ地震、首都直下地震が起こった場合、関東圏はほぼ全域が被害想定区域に含まれ、相当数の死者・行方不明者が出るだろうと予想されている。いかにこれを減災させるかは国をあげての大きな課題となっている。災害救助法の制度上、救助活動は基本的には都道府県が主体となって行う。ただし、都道府県は市区町村に救助の実施についてを委譲できる。つまり、各市区町村との関係が重要になる。行政と顔の見える関係作りをし、各自治体とそれぞれ災害協定を締結することが必要となる〟と様々なデータを提示しながら解説した。

具体的な想定として、森氏は〝震度7、マグニチュード8の地震が自県で発災したら、まず何をするか〟と問いかけた。〝自身の安全を確保しつつ、各会員の安否確認、院内の患者さんへの対応、避難所の確認、被災地以外の近隣柔道整復師会への要請、インフラ被害から考えられる活動内容の検討、医療施設の被害状況の確認など、様々な情報を集め短時間で網羅的に対応していかなければならない。通常の業務とはかなりスピード感が異なる。さらに、避難所で救護活動を行う場合、自分が支援者なのか、受援者なのかというところから考える。自分も大変な状況なのに人を助けることができるのだろうか?また、自県が被災した時に情報を収集し、被災地臨時災害対策室に赴き、関係各所と交渉するのは難しいのではないか?〟と話し、日本全国を北ブロック・中ブロック・南ブロックの3つに分け、発災時には被災したブロックとは別のブロックから駆けつけてサポートを行うことが理事会決定事項になっていることを伝えた。さらに〝実際に発災した場合、DMATに対し政府が災害派遣を依頼し、各地域災害対策本部が設置される。その後、被災地柔道整復師会側の災害対策本部が各地域災害対策本部と連携を取っていかなければならないが、被災県でこれを行うのは困難であることが想定される。そのため、緊急支援として日本柔道整復師会が本部運営の支援を行い、先遣隊として日整DJATが各災害対策本部との連携や近隣都道府県柔道整復師会からの救護チーム受け入れの調整を行いたいと考えている。発災後、急性期を過ぎ状況が安定したら、それぞれの被災県が自らの力で災害に立ち向かっていくため、その活動を後方から支援する役割を日整DJATが果たすべきだ〟と述べた。

また、今後の見通しとして〝DJATとしてこれまで作ってきたものをより良いものに再編成し、各都道府県の先生方の発災時の緊急サポートすることができればと考えている。災害時はその現場にいる人たちが全員で臨機応変に対応していくことが求められる中で、日頃から「何を」準備するか、いざという時にどう対応するかということを決めておくことが大切だ。各地域の会長職の皆様から始めていただき、日本の国民がもっと安全に暮らしていくためのきっかけとなっていただきたい。私たち柔道整復師は、手で外傷を治せる伝統医療の職種であり、医師がいない・医療資源が不足しているなど医療のインフラが整わない災害現場で提供できる技術を持っている。我々が目指すのは、被災者を支えることだと考えている。災害対策室だけでは何もできない。皆様にご協力いただいて、災害対策を進めていきたい〟とした。

 

特別講演後、徳山学術教育部長より日本柔道整復師会が取り組む「匠の技伝承プロジェクト」の意義と目的について改めて周知がなされ、閉会となった。

 

なお、本年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」でも、日本柔道整復師会災害対策室、各県柔道整復師会が活動を開始している。詳しくは公益社団法人日本柔道整復師会ホームページをご覧ください。

 

 

 
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