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ビッグインタビュー 【新・柔整考④】 業界内外の声をお聞きする!

2023/11/01

たとえ、どんなに柔道整復師が良い施術を行っても、学問的な裏付けがなければ社会は認めてくれません。しっかりとした学問の裏付けがあってこそ認められます。 3年前に日本柔道整復接骨医学会の会長に就任された安田秀喜氏は超音波の第一人者であり、外科医としてもトップの方である。学会の在り方や意義について話して頂いた。

柔道整復接骨医学会は日本学術会議の第7部に入っており、柔道整復師は学問的にもしっかり認められているのです!! ~柔道整復師がこれまで以上に揺るぎない医療職になるために~
(一社)日本柔道整復接骨医学会会長・安田秀喜氏

(一社)日本柔道整復接骨医学会 会長 安田秀喜氏

 

―日本柔道整復接骨医学会の会長に就任され二期目に入られましたが、これまでどのようなことを行われましたか?

2020年7月に「日本柔道整復接骨医学会の会長に推挙されました」と言われました。元々私は外科医であって柔道整復師ではないので、「何を一番望まれますか」と皆さんに聞いたところ、「柔道整復師が超音波を使えるように出来ないでしょうか?」との声が多くありました。これまでは柔道整復師は超音波を使えなかったのです。2003年4月に、日本柔道整復接骨医学会が日本学術会議のメンバーとして、自然科学部門第7部「予防医学・身体機能回復医学の分野」に団体登録が認められたということは、それだけ学問的に認められているということであります。しかも学術会議の7部といえば、医学部、薬学部、および医療関係が団体登録されています。私は外科でしたから、学術会議の7部に入るのは如何に難しいかということを理解しています。帝京大学外科在任中に日本腹部救急医学会等の学会幹事時代に、学術会議の第7部に入ろうとしましたが、中々ハードルが高く苦労致しました。第7部はそういうところであるにも関わらず、日本柔道整復接骨医学会はすでに第7部に登録されていました。それぐらい学問的に認められているのです。

ただし、私が会長を依頼された当時は日本柔道整復接骨医学会には倫理委員会や利益相反委員会がありませんでした。私が会長就任した時に、直ちに倫理委員会と利益相反委員会を作りました。従って、必ず学会発表の時にはスライドに「利益相反なし」と記載すること、論文では最後に「利益相反なし」という文言を明記する事を義務づけました。もう1つ、「今後、超音波検査を使えることを前提として教育集会や学術集会を日本超音波医学会と一緒にやりませんか?」と書面で申し込みました。しかしながら日本超音波医学会からの正式な回答は、「我々は関与しませんから、どうぞ貴学会でやってください」というものでした。

実は、私がなぜ超音波のことを一生懸命やっているかというと、1975年にLevisらが急性虫垂炎の診断で切除された1,000例のうち正常な虫垂であった頻度が20.1%であったことを報告しました(Levis et al:Arch.Surg.110:677,1975)。この頻度を低くする手段として、超音波を活用すれば改善できるという原著論文「急性虫垂炎の超音波検査の臨床的検討―とくに、計量診断との対比検討を中心に―」(安田:日本臨床外科医学会雑誌44.1055,1982)を報告しました。つまり、超音波検査が虫垂炎の診断に非常に有用であるということを報告したのです。急性炎症で腫大した虫垂を超音波で観察することが可能で、短径が10ミリまでであれば手術しないで抗生物質で治癒できますが、10ミリ以上あるいは虫垂周囲に液体を認めた場合には手術が必要であると報告しました。 私の東京女子医科大学消化器病センター外科時代の専門分野は、閉塞性黄疸です。原因が肝炎なのか、膵臓癌、胆管癌、肝臓癌なのかという診断を超音波検査で行い、超音波ガイドで減黄術(胆管ドレナージ:PTCD)を行っていました。その後、帝京大学外科では腹痛、吐血、下血、胆管炎、腹膜炎などの腹部救急疾患が多く、手術方針決定に超音波検査が極めて有用でした。現在も、私は日本超音波医学会の指導医であり専門医です。

 

―先日、日本柔道整復師会の会長に就任された長尾会長は、柔道整復業界のガバナンスとコンプライアンスの徹底及びチェックシステムを構築していくと話されていますが、安田会長はこれに関してどのようにお考えでしょうか?

考えは一緒です。私は千葉県社会保険診療報酬支払基金に17年勤務し、永年勤続表彰を受けています。やはり、保険で超音波検査を取り扱うにあたり、現段階では柔道整復師全員が扱うようになってしまうのは、まだ無理があります。先述しましたように倫理委員会および利益相反委員会をキチッと理解し、柔整師の目標が正しく理解できる人材でなければ超音波観察装置は使用出来ないようにするのが良いと考えています。そのためにも当学会の認定制度を活用すべきです。超音波検査を保険で取扱いが出来るようになるのは、認定制度の上位組織として専門柔道整復師を作った方が良いのではないかと考えています。その専門柔道整復師が超音波観察装置を取り扱いながら、専科教員というようなスタイルで認定柔道整復師を育成し、専門知識や技術を向上する事が必要です。すなわち一般柔道整復師、認定柔道整復師、さらに専門柔道整復師と階層化することが重要です。専門柔道整復師が超音波観察装置を自由に使えるのは、倫理や道義等を全て理解した人でなければなりません。その人達が認定柔道整復師を一生懸命育てていくというのが良いのではないかということです。当学会が学術会議の7部に入っているということは物凄いことなのです。第7部は日本外科学会、日本内科学会、日本超音波医学会等々の医学系・医療系学会が入っていますが、其処で認定・専門制度を確立している訳です。

 

―いま、認定柔道整復師はどの位いらっしゃいますか?認定柔道整復師の資格を取得するにはどのような仕組みになっているのでしょうか?また認定柔道整復師の資格を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

現在の会員数は4,187名で、認定柔道整復師数は365名で、1割未満です。その位の人数が指導しやすいと思います。メリットは、先述しましたように超音波観察装置を自在に使えるということです。もう1つは、認定柔道整復師の上位に専門柔道整復師を制度化することを考えています。認定柔道整復師になるための取得の条件は、本医学会に入会後3年間在籍し、所定した単位を30単位以上取得しなければなりません。有効期限は、資格取得後5年間です。更新の条件は、更新時、認定期間(5年間)内に所定した単位を30単位以上取得した者となっています。詳しくは当学会のHPをご覧ください。

どの学会でも活発に活動する評議員がおり、評議員は大体1割程です。その評議員が認定柔道整復師になれば、超音波検査に加えて骨折や特殊な技術を教えることが可能です。超音波等を全部点数制にして、専門の柔道整復師制度を当学会で作らなければなりません。今後は、当学会がキチンと体系を作り、それをお互いがフィードバックするという仕組みを構築していきたいと考えております。

 

 
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