menu

インタビュー:東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科・中澤正孝 氏

2015/05/01

―目線を大事にされているんですね・・・

私が花田学園の学生の頃、担任の先生から接骨医学会に行くように言われて初めて参加したんです。確か、JR大井町駅からすぐのきゅりあんだったと思います。それ以後ずっと参加してますが、毎回必ず行くのが社会医療分科会です。前田和彦教授(九州保健福祉大学薬学部薬学科医事法学研究室)は、なぜ柔整のことをこんなに真剣に考えてくれているのかなと不思議に思いながら拝聴しています。

柔道整復師の免許を取得してから解剖や生理や病理を学ぶ人がいるように、前田先生のもとで法学を勉強したいという柔道整復師が現れてほしい。前田先生の研究室で勉強して、接骨院の経営に必携の判例集とか役立つ法学知識などを紹介してくれる人材の出現を待ち望んでいます。

私は学生の頃、この科目は本当に柔整師になるのに必要なんだろうか?と思いながら勉強した科目がありました。それは教科書が「柔整目線」の記載になってないことが原因の一つだったとようやくわかってきたんです。柔道整復師になるための教科書ですからそれに関するトピックを少し入れてほしい。そうでないと勉強している学生は柔道整復師にどう役に立つかが理解しにくいわけです。

もちろん一般臨床医学、外科学および整形外科学などはそれぞれの専門領域の目線で書いて頂くことがよいと思います。しかし、解剖学、生理学、運動学、病理学、衛生学などは、それぞれの専門領域で修士や博士の学位が柔道整復師によって取られているのですから今後、「柔整目線」で記載するよう少しずつ変えていくことが必要なのではないでしょうか。そうすれば、学生にとって親しみやすく、より学びやすい教科書ができるはずです。ただし、監修は従来通りその専門領域の先生にお願いする必要があります。

 

―東京有明医療大学に博士課程が開設されたんですね!

医療や健康を冠した名称の博士課程は既に開設されておりますが、博士(柔道整復学)というのは、東京有明医療大学が初めてです。27年度にその第1号候補者が入学予定です。その学生が博士を取得して学生を指導する立場になれば、博士(柔道整復学)が博士(柔道整復学)を育成することになり、これも本邦初の出来事になります。ますます柔道整復学の研究が盛んになるでしょう。

その点を考慮すれば、柔道整復学の構築は、研究機関である大学が多く設置され、研究者を自前で育成できるようになったこれからが本番です。これからの柔整研究者は後進を育てつつ、先人が苦心して築いてきた柔道整復術を科学的に立証すればよいのです。柔整研究者が次第に増えれば、各大学間で共同研究が盛んになり、客観性の高い、信頼に耐えうる論文が出てくると期待しています。

 

―柔道整復学の構築の目指すべき点はどんなところでしょうか。

近年、研究機関に所属して研究に励む方が増えてきました。そして、その成果を接骨医学会で発表するという流れができて、学会が益々盛況になっています。しかし、そうした発表の中には、研究内容の何が柔道整復と関係があるのか理解できない発表が混じっていることがあります。その研究は恐らく柔整師ではない方が指導して下さったのでしょうが、柔道整復領域との関連が理解できるように発表していただくことが大事ではないかと思っております。

例えば、私がある研究結果を解剖学会で発表するとします。そしてこの発表内容をそのまま接骨医学会で発表するのは好ましくないということです。なぜなら、解剖学者と柔道整復師の知りたいことは違うからです。解剖学者が知りたいのは構造ですが、柔整師が知りたいのは構造から考えられる損傷しやすい部位や、どんな治療(固定)をすれば治りやすそうなのかということであって、構造そのものではないはずです。解剖学会で発表した内容を柔整バージョンに考察し直す必要があると思いますが、そうなっていないケースが見受けられるように感じています。そのような発表がさらに増加すると臨床家が知りたい内容と研究者の発表内容に大きな乖離が生じる可能性が出てきます。柔整目線を意識しない研究は臨床家の先生から見ると、すぐわかってしまうのだろうと思います。

さらに研究者にもう一つ求められるのは、きちっとした発表プロセスが存在するということです。再び私の例で恐縮ですが、ある研究内容を解剖学会で発表して解剖学者からの客観的批判を受け、その後、接骨医学会で発表するという順序を踏む必要があると思います。そうしないと私の解剖所見が解剖学者によって、研究の質を担保されないまま接骨医学会の会員に発表することになってしまうわけです。柔道整復師は独自に(勝手に)解剖結果を提示しているということになりかねない点については気をつける必要があると思います。

研究は臨床に還元しなければならないと私は考えていますので、今後、研究者と臨床家の目線を繋げる役割を通じて、臨床家の先生方に研究の重要性を知って頂けるようにもっと努力をしていきたいと考えています。私自身未だ至らない面もございますが、臨床家への還元、すなわち患者さんへ研究成果を応用できることを目指していきたいと思います。

 

 

●中澤正孝氏プロフィール

2001年4月~2009年3月、日本柔道整復専門学校。
2009年4月~現在、東京有明医療大学。
2006年4月~2009年3月、全国柔道整復学校協会 教科書委員。
2014年5月~現在、日本超音波骨軟組織学会 諮問委員

研究分野:上肢帯の肉眼解剖
研究論文:
1.胸鎖乳突筋が定型的鎖骨骨折の近位骨片に与える影響,柔道整復・接骨医学20(3),2012.
2.Functional aspects of the coracoclavicular space. Surg Radiol Anat33(10),2011.

 

 

前のページ 次のページ
大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー