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患者代表インタビュー 『患者と柔整師の会  菅道子  氏』

2014/06/01

―患者照会が届いたことはありますか?患者照会についてどのように思われていますか?

照会の手紙のことは知っています。皆さん迷惑しています。何か悪いことしたのかみたいな、自分は健康保険組合に目をつけられるようなことをしているのか、と。そういう風に恐れる人もいれば、ちょっと前のことなんか忘れてしまったのに、出すのは面倒くさいという人もいるようです。私自身、患者として困ります。柔整師さんにかかっている人の多くは新鮮な怪我ではない人が多いですから実際あういうものが来たら正直には書けない訳です。特に高齢者の方達はそうでしょうし、私みたいな疾患は困るというのもそうですが、それよりもっと基本的なことは、プライバシーの問題です。語弊があるかもしれませんが人権蹂躙に近いんじゃないかと感じます。何故なら個人的に怪我して困って行った所のことをそうやって根掘り葉掘り人に言わなければならない義務は無いと思うんです。仮にお医者さんに行った場合、患者調査なんて行われていません。

結局、患者が自分の勤めている会社に縛られている訳で、そのために守秘義務や権利を主張出来ないでいるのではないでしょうか。長いものには巻かれろみたいに仕方がなくて書いている。接骨院の先生のほうからこれは困りますとは中々言えないみたいなので患者さんが問題意識を持って、こういうことはしたくないとみんなで言わない限りはやりようがないのかなと考えています。『からだサイエンス』前号で埼玉県農協健保の常務さんが話されたように領収書の提出等、内容の改善をしていって、あういうアンケートや患者調査が必要なくなるように働きかけるしかないと思っています。結局、接骨院の治療内容をもう少し公けにして痛み全般のことをやっているということを少しずつ認めていってもらわないと問題は解決しないのではないでしょうか。そういうことは保険者さんには伝わっていないのか、ご自身の周りのお年寄りのこと等を考えるとかなり想像はつきますよね。

とにかく欧米と日本では凄く違いがあります。アメリカはともかくとして、フランスとかドイツなどヨーロッパでは東洋系の医学とか自然医学に対する認識がもっと温かくて、例えば温泉療法なんかに物凄く保険を割いています。温泉で治るというので券が発行されて、保険で温泉に入れたり、イギリスでは聞くところによると心霊治療も効果があれば保険が下りるそうです。私が一番思うのは、患者が選べることをもっと大事にして欲しいということです。自身が健康保険料を支払っている訳ですから、どういう医療が適切かどうか自分が選択できるような、例えば骨折で、医師の指示書がないと骨接ぎでは保険が使えないなんて本当に被保険者である患者を無視したやり方です。自分が行きたいところで治療を受けられるというのが一番なってほしいと思うことです。そういうことをするとべらぼうなことになって歯止めがかからないというのであれば、そういうことをしても歯止めがかかるような知恵を出して作っていけば良い訳です。

 

―接骨院の治療内容について、患者サイドとして、改善してもらいたい点がありますか?また、接骨院の治療で問題だと思う点をお聞かせください。

私が接骨院に望む治療は手技を大事にして欲しいということで、あまりいろんな機器をつかったり、高度なものを多く求めて経済的に高くつくようなことをしなくても良いと思っています。なるべく素朴で人と人とのスキンシップを重視して大切にして欲しい。高度な医療であるならばお医者さんに行けば良い訳ですから。もっと民間療法の研究をしたりケガや病気には、日本に生えている草であったり、例えば枇杷の葉とか、そういうものにも詳しくなって、接骨院の先生からもっといろいろなアドバイスがいただけたらいいなって思います。お年寄りだけではなく、お子さんに対しても、今のお母さんはお年寄りからいろんなことを習ったり、文化を引き継いでいないので、そういうことを接骨院の先生は勉強をして〝こういう時にはシップしてあげればいいよ〟〝こういうところを擦ってあげれば治るよ〟等、助言してくだされば、お母さんも安心出来ます。だからもっとそういう人と人との繋がりとか触れ合うことを大事にして高度で高額な医療を受けないで済むような砦になってほしいですし、本来骨接ぎはそうだったと思うんです。

 

―第3回のガイドライン委員会で、道子さんは確か「マッサージ」という用語は入れないほうが良いと発言されたように記憶していますが、その理由等を聞かせてください。

あの会議では、マッサージという用語をガイドラインの文言に入れるかどうかとして議論が交わされました。実は、私はマッサージ師なんです。自分がこういう体なので、手を使って治ることに興味をもちました。それで子供が大きくなって40歳過ぎてからですけど、小田原の神奈川衛生専門学校でマッサージの資格を取りました。

柔整で手技を受けていると確かにマッサージのようなことはされるのですが、普通のマッサージとは印象が異なるので、柔整のガイドラインに〝マッサージをします〟と謳うと誤解されるのではと思ったからです。後で、「柔整マッサージ」という名称が存在するとお聞きして、なるほどと納得しました。

柔整マッサージは、軽く摩る手技が中心で、まず患者に手でふれ安心させる。左右の手足や体のバランス、動きなどを手で看る。体をゆるめて整復を受け入れられる下地をつくる。整復をしながら摩ることで、痛みを和らげる。その後、拘縮や可動域の変化を評価したりする、といったことに焦点を絞ったマッサージだと思います。時間的にも短く、シンプルですがそれぞれの柔整師さんが、知識や経験や体力を生かし、各自で磨かれてきた技です。マッサージ師のマッサージが小説や詩だとすると柔整マッサージは俳句のようかなと…(笑)。

 

―もし道子さんが『患者と柔整師の会』の今後の活動において、最も力を入れていく点、訴えていかれる内容をお聞かせください。

先ほど申し上げた患者の選択権といいますか、『患者と柔整師の会』で、それを少し主張していけるようなことが出来たらと思っています。やはり、アンケート調査の問題にしろ、類似負傷といいますか、昔の怪我、或いは慢性的なものにしろ患者さんが切実に思っていることが外に向かって自由に言えていないですね。私たち患者の考えや意見を外に向かってちゃんと発信していけたらいいんじゃないかと思っています。

 

―今、地域包括型ケアシステムを構築している最中ですが、柔整師の先生は機能訓練指導員として介護分野で活躍できるんですが、柔整師の先生方がその中に入っていただくようなことは希望されますか?

柔整の専門学校を卒業して、医療チームや介護のチームの中に入ったりすることで力を伸ばすであろうと思われる若者は沢山いると思います。従ってそういう人たちを地域包括型のケアシステムに組み込んでいただいて地域の医療を支えていただけたら良いと思います。接骨院自体が地域のプライマリケアを担っていると思いますし、そういった役目も昔からあった訳ですから〝こういう場合には接骨院へ行って治してもらってください〟というような仕組みの中に入ってしかるべきだと思っています。お医者さんに行くよりは気楽に行けてずっと敷居が低いですからね。私はマッサージ師ですから在宅マッサージみたいなこともしたことがあるんですが、寝た切りにならないで少し動けるようになったら、歩けたり動けると保険で在宅マッサージは出来なくなるんですね。お医者さんに関節拘縮で歩行不能とか歩行困難といった同意書を書いていただかないと。ですから治るとマッサージに行って上げられなくなるんです。通ってきていただいても中々保険が適用されない。お医者さんに行ってレントゲン撮ってもらったりする必要は殆どないと思いますので、近くの接骨院に行くのが良いと思います。接骨院が増えすぎているという話もよく耳にしますが、接骨院が沢山出来たら出来たなりに活用する方法はあると思います。怪我だけではなく、こういうことを接骨院というのは出来るんだっていうのを、出来ればガイドラインにも入れてほしいですね。

 

●板村論子氏プロフィール

日本ホメオパシー医学会専門医・専務理事、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心身医学会専門医、日本心療内科学会登録医、日本森田療法学会認定医、日本統合医療学会認定医・代表代議員。統合医療女性の会世話人。

1984年関西医科大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。医学博士。マウントシナイ医科大学(米国)留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬病院を経て帯津三敬塾クリニック院長としてホメオパシーを担当。日本ホメオパシー医学会の第1号の専門医資格取得者で、日本のホメオパシー医学の推進者。また2003年日本人初の英国Faculty of Homeopathy専門医となる。心療内科、皮膚科が専門だが心身医学全般に対応。森田療法をはじめとする精神療法も行う。二男一女の母でお子様の診療も多く行っている。

『花粉症にホメオパシーがいい』共著、『医療従事者のためのホメオパシー』、『ホメオパシー医学の実践』の翻訳など多数。

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