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ビッグインタビュー:帯津三敬塾クリニック院長 板村論子氏

2014/06/01

今、統合医療学会が脚光を浴びている。緩やかに、一歩一歩着実に活動を展開し続けてきた結果、ここに来て一気に実を結んだものである。

近年、我が国は超高齢化と人口減少社会に突入。多くの人たちが人間の生き方はどうあるべきか、医療は如何あるべきかを真剣に考え始めた。その先駆けであり、牽引してきたのが統合医療の考え方そのものであったと思われる。

帯津三敬塾クリニック院長の板村論子氏に示唆していただいた。

 

『“人”が中心の統合医療を推進続けて』
菅道子氏

帯津三敬塾クリニック院長
板村  論子   氏

 

 

―板村論子先生のこれまでの経緯をお聞かせください。

私は大学院では基礎医学を研究しておりました。ウイルス学の研究ができる慈恵医大の皮膚科に入局しまして、そこで留学もさせていただき、皮膚科の専門医も取らせていただきました。丁度、3人目の子供が出来た頃に大学を辞めることにしました。大学では、がん或いはウイルスに関係する皮膚科系や内科系の疾患、膠原病等を専門にしていました。その後、市民病院に勤務した時にアトピー性皮膚炎で長期の患者さんや重症の患者さんを多く診るようになりました。それまで大学ではアトピー性皮膚炎が専門でなかったのですが、専門外来を受け持つようになり、カウンセリングを行ったところ、効果があると感じました。それで一人一人に対応できる治療法を勉強しようと、臨床心理学や精神療法等を何所かの大学で学んでみようと思いました。

 

仕事を辞めて、どうしようかなと思っていた時にイギリス人の友人の医師が〝イギリスではホメオパシーがあるんだよ〟と言ってホメオパシーを教えてくれたんです。〝心理学とか精神医学に興味があるんだったらこういう本もあるよ〟と勧められて、それを読んだ後に勉強したいと伝えると、イギリスには『ファカルティ オブ ホメオパシー(英国ホメオパシー医学会)』があるよと教えていただきました。其の学会とコンタクトを取るようになり、留学は出来ない状況でしたので、グラスゴーのホメオパシー病院の通信講座を選びました。丁度その頃医師でない民間の人が行っているコースにも出席したりしました。そこでは、ホメオパシーが宗教みたいで違和感を感じていたのですが、イギリスの通信講座を取ってみると全く違って医療の中にしっかり組み込まれていました。

 

その後、2000年1月に日本で日本ホメオパシー医学会が立ち上がった時にイギリスの『ファカルティ オブ ホメオパシー』がバックアップをしてくれまして、学会の研修が実施されるようになりました。今の『一般社団法人日本ホメオパシー医学会』の体制が整って、社会的に医学レベルで教育していると認められるようになりました。日本ホメオパシー医学会は帯津先生が理事長で、川嶋朗先生をはじめホメオパシーを真摯に取り組んでいる会員からなっています。私自身、学会発足時はまだ開業医の先生の所でホメオパシーの治療をボランティアでやらせていただいて、その後、帯津先生の病院でホメオパシーと皮膚科を専門に診るようになりました。帯津先生が池袋にクリニックを創るということで〝ホメオパシーをやらないか〟と仰られて、参加させていただきました。2005年の4月に医療法人財団となって以来、帯津先生とずっとご一緒で、もう10年になります。

 

―ホメオパシーは未だ日本人にはあまり知られていない治療法であると思います。どういった治療法なのか、分り易く教えていただけますか?

現在、世界の80か国以上でホメオパシーが通常の医療の一つとして用いられています。世界保健機関(WHO)は2001年、ホメオパシーを広く世界規模に用いられている医療体系として認め、多くの国で医療保険に組み込まれていると報告しました。また2009年、ホメオパシー薬に関する安全指針についての決議を行い、翌2010年に"Safety issues in the preparation of homeopathic medicines"として発刊されました。

残念ながら日本では、ホメオパシーを知っている人は、まだ0.5%位です。それにはいろいろ理由があると思いますが、ホメオパシーは、220年前にドイツ人医師のサミュエル・ハーネマンによって確立されました。これまで何回か日本に紹介されましたが、やはり日本は漢方が強いんですね。漢方も国によっては、保険適用されていない国もあり、ヨーロッパでは保険適用されてない国がほとんどです。ホメオパシーはその逆の立場と考えると理解しやすいと思います。つまり、歴史的な流れがあってヨーロッパでホメオパシーは、日本の漢方以上に知られています。国連で働いている人を国際公務員といいますが、日本にいても国際公務員の人には、ホメオパシーは保険適用されるのです。それぐらいヨーロッパでホメオパシーは医療として知られています。

 

ホメオパシーは、人のもつ自然治癒力に刺激を与えて回復の手助けをすると考えられています。ただそのメカニズムは、自然治癒力自体が今の科学では解明されていないため、未だ科学的に立証出来ていないんですね。漢方もそういう時期があったと思いますし、アーユルベェーダにしてもそうです。ヨーロッパでも認めている国と認めない国と違いは各々あります。一番大きな違いは、やはりホメオパシーを誰が行うかで、認めるか認めないか国の対応がかなり異なってきて、医師のみがホメオパシーを行っている国はホメオパシーに対してバッシングみたいなことは起こらないんです。ところが医師以外の方が存在するイギリスやオースオラリアもそうですが、医師ではない人がホメオパシーを行っている国では絶えずバッシングがあります。その最先端がイギリスで、その流れで日本も何の法的規制もなく、誰でも出来るということでホメオパシーが医療として認識されるには大変厳しい状況にあります。私が最初始めた時にはそういったことは実感出来ませんでしたが、これまでやってみてそう思います。医師のみが行うということであれば、患者さんも安全だと思います。治療というのは、やはり病気が分って治療する訳で、病気が分らない人がやるのは本末転倒です。そういう意味でホメオパシーを治療として用いる場合、やはり医師が行うのが当然であると私自身は思っています。

 

日本ホメオパシー医学会の会員構成は、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師で、医療従事者のみです。規約があって薬剤師は処方しません。ただし日本では医師でない人たちによる民間の団体がいくつか乱立しています。それは日本には何も規制がないからで、例えば国が、ホメオパシーに関して〝治療行為は医師がやるべきである〟と定義をしていただければ、もっともっと普及するでしょう。ホメオパシーの薬をレメディと称しますが、レメディを医薬として国が認可した場合、必然的に医師以外処方できなくなる訳で、そういう国もあるんですね。ヨーロッパでもずっと認可されていなくて、様々な治療者がいたんですが、政府が〝ホメオパシーは薬です〟と認可した途端に治療者は限定されて、健全にいったケースもあります。こういったことは自分一人の力ではどうすることも出来ません。せめて私達が出来ることは、いろんな情報がある中で、正しい情報を選んでいただけるように、ホメオパシーはこういう治療であると。しかもその治療を受けるためには何所に行くのかとした時に、私たちの学会がそういう治療者を育成するところまでやらなければなりません。つまり、正しい広報活動を行うことと、その治療法を行っている医療機関で患者さんに安全に受診をしていただけるように地道な啓蒙活動を続けています。

 

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