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宮城県「柔道整復学」構築学会名誉会長 医学博士 佐藤揵氏に聞く!

2014/02/16

―佐藤元教授が日本補完代替医療学会に発表された「柔道整復の分野に今必要なこと」と題した論文に6つの目標と3つの課題を明確にされ、その目標の中で書かれている〝施術のガイドラインが作成できるか〟これが可能となれば、診断・治療が科学になるとされています。診断・治療のガイドラインを作るということは、様々な文献や整形外科学的なことも念頭にしっかりしたものを作るということで非常に難しいと思える反面、逆に日頃の診療内容を文章化するという作業ではないのかと。難しさはあると思いますが、出来ないことではないように思います。また、「柔道整復の分野に今必要なこと」の中の医療人共通言語の問題(用語法)で、他の医学医療の分野には通じると思えない勝手な造語が非常に多い。医学の複数の分野で使っているが、分野ごとに概念が異なる使われ方をしていると思われるもの、この2つの問題をどう整合させていくか。そして、独自の方法論を持っているとは思われない領域がある…測定・評価・診断の部、独断的な○○式××法が多いとされ、どう確立していくかが課題であるとされていますが、今後これらについてどのように精査・研究されれば、他の医療職にも通じる用語を統一することが可能でしょうか。少なくとも学の構築以前の問題として用語の統一、或いは問題となる事項の共通認識が必要ではないかと思います。柔道整復師相互、そして他の医療職にも説明できるものとして、先ず用語の意味を統一することが学会の役割のように感じますが、お考えをお聞かせください。

そのとおりです。これについては、第1に全国的な学会がこういうことをやってくれないと困るのです。ところが誰に聞いても、日本柔道整復接骨医学会がこういうことをやられたことが無いとのことです。学会を作ったら初めに基本用語の統一の問題を検討しなければなりません。実は、リハビリテーション医学会も設立当初は微妙に用語の使い方が違っており、これではいかんということで、用語統一のための委員会を作って、これはこういう使い方、これはこういう言い方とみんなの意見を聞いて、今は本屋にも用語集がおいてあります。そういう努力がないとおかしい。解剖学会も生理学会も自分の用語集を持っています。整形外科も臨床整形外科も不十分ですが、用語集があります。

もう1つは、独自の方法論を取り上げてみてそれが共通に認識できるか、問題はこの2つです。宮城県の上層部の方々は、其処を前から問題であると思っていたようです。亡くなられた上泉会長は特にそう思っておられて〝これでは私たち柔整師は認知されない、なんとかしよう〟と号令をかけられて、それを豊嶋前会長や櫻田会長は何とかしなければ、ただ待っていられないから独自に自分たちで土台づくりをやっていくことが中央を動かすことになるだろうと受けられ志されているのです。とにかく誰かが音頭をとるか太鼓を叩くかをしないと進まないだろうという危機感を持っていますね。待っていたら、何時まで経っても出来るか出来ないか分らない。やることによって社会的認知もされて、ご飯も食べられるようになる、そのためにはどうしたら良いかと。つまり、考えるだけではなく、自分たちでやっていこうと。それをやろうとされている時にたまたま私が加勢してくれと言われただけの話です。

柔道整復の業界にかなり詳しいドクターも2・3人居るようですが、詳しい人は少ないと聞いています。第2第3の信原先生が出てくれなければ難しい。宮城から発信していかなければと、みんなは思っているハズです。本来は接骨医学会がやるべきこととは思いますが、それを待っていられないというのが本音だと思います。

 

―同じく「柔道整復の分野に今必要なこと」のまとめとして、すべての柔道整復師が学会と学問を必要としているわけではない。しかし、伝統的手当てを行いつつも、最新の医療情報に接し、患者とのコミュニケーションをとり、指導を行い、医接連携を実行していくためには、すべての面におけるレベルアップが必要である。柔道整復の科学化、地域化、研究プロモーターの創設、近接領域の交流など、学会・業界・教育界がそろって取り組む姿勢が重要であると述べていらっしゃいますが、因みに近接領域の交流について具体的な方法と全体の足並みがそろうにはどのような取り組みがされるべきとお考えでしょうか?

やはり一番身近でやられていることは医接連携で、確実な効果がある筈です。それを名前だけではなくもっと中身をキチッとしていただけると良い。あとは医師会と仲良く上手くやっているところとそうではないところがあるみたいで、地域によってかなり温度差があるようですが、そういう温度差をどうやったら変えることが出来るか、中々難しいだろうとは思います。本当は他所の学会に行って発表するのはかまわないと思いますが、それが出来るためには、英語をも用いて発表しなければなりません。極端な話、英語で書いたカルテの医学用語、それが分るかどうか。柔整の人が患者さんを医師に廻す時に紹介状をまともに書けるかどうかというのは、具体的なエビデンスへの道になります。そうすると周りが認めてくれます。其処がないと医接連携は出来ないんです。専門用語の使い方、例えば柔整捻挫は整形外科のそれと別ですから解釈も違います。亜急性にしてもそうですが、周りの人に分ってもらうためには、西洋医学と柔整医学の両方のことを知っていないと書けない。私はしょっちゅう学生に〝専門用語でこれを英語にしたらどう言うんだ?〟と質問しています。

医療に関しては、自分自身の目標も大事ですが、患者さんのために何が出来るかという視点で、そのためにはどの方法でアプローチ出来るか、出来ないかという見極めが必要になります。其処を考えると個人のやれることは限られています。それを最善の方法で提示できるためには最も正しい診断・判断と治療法が選択できることと、やった結果こういう結果が得られたということを単純であっても示すしかない。自分がダメならば他の人に頼む。頼むといっても頼み方と患者さんへのやり方がありますが。それを恣意的な、範囲の狭い集団ではなく、全体としてやる環境を広めていくことが大事です。

東京オリンピックが開催された昭和39年頃の内科系の西洋医学というのは、ある意味で今の柔整と似たように、風邪薬を投与した、治った、だから効いただろうという発想のレベルでした。そういった過去西洋医学が歩んで来た道を今頃柔道整復界が歩んでいる感じもしなくはないのですが、昔の人が苦労してやってきたことを参考にしながら地方でも中央でも取り組んでもらえれば、それは結果的に説得力が出てきますし、西洋医学各科も問題にするでしょう。5つの傷病名でしか診療できないというのを法律を改正してもっと取り扱えるようにもっていく必要すらあるのではないでしょうか。つまり、学校教育内容と臨床の実際との乖離のひどさをなくせるかどうかです。

 

●佐藤揵(さとうけん)氏プロフィール

元帝京大学教授 宮城県「柔道整復学」構築学会名誉会長 医学博士

1966年    東北大学大学院修了
1977年    医学博士取得
1969年~1981年    東北大学鳴子分院(医学部併任講師)
1980年~2006年    仙台大学体育学部教授(26年)
2008年~2013年    帝京大学医療技術学部教授(5年)
1990年~現在    赤門鍼灸柔整専門学校講師
1998年~2007年    柔道整復研修試験財団専門委員
2007年~現在    赤門鍼灸柔整専門学校東洋療法教育専攻科講師

専門:
リハビリテーション医学、スポーツリハビリテーション論、心身障害学、
臨床運動学

著書:
「スポーツとリハビリテーション医学」「ケーススタデイ・スポーツ障害のリハビリテーション」「スポーツ理学療法」「キネシオロジーノート」「スポーツ科学講習会標準テキスト」他多数

 

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