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日整・工藤会長と全整連・田中会長が柔整師の未来を語る

2013/11/20

近藤:

保険の勉強をしない柔道整復師が多いことは大きな問題であると思う。よく若い柔道整復師の方から、受領委任払いはいつまでも使えるものなのかという質問がある。この問題を含めて田中会長のご意見を伺いたい。

 

田中:

今、健康保険組合などが受領委任払いを廃止する要望を厚生労働省に上げていることも事実である。しかし工藤会長が言われたように、この受領委任払いというのは誰のものでもなく国民のための制度である。保険者だけでは制度は変えられないが、そこに厚生労働省、マスコミなどが一緒になるとこれは危険な状況になってしまう。これだけマスコミなどからバッシングを受けているが、幸いにして柔道整復師にかかる患者さんは一向に減らない。これは国民にとってこの柔道整復師制度は良い制度だということだ。保険制度を悪用してしまうと様々な問題が出てくる。先生方ひとりひとりが保険制度をもう少し勉強する事によって受領委任払いが廃止されるという心配がなくなると思う。

 

近藤:

もうひとつ大きな問題として、この業界を大きく混乱させた要因に柔道整復師の増加という問題がある。10年前から比べると柔道整復師の数が約2倍になっており、学校が増えることによって柔道整復師も増え接骨院・整骨院も増える。この点について考えをお聞きしたい。

 

工藤:

私は柔道整復師というのはまだまだ足りないという論者のひとりである。10万人だろうが20万人だろうが、私どもが国民に必要とされる職業であれば間違いなく問題はない。介護保険は、近いうちに在宅医療に重点が置かれるようになる。病院完結型から地域完結型に対応しようという動きが出ているところでは、柔道整復師のマンパワーはまだまだ必要とされる。ただしどんなものであっても法律を守らなければ意味がない。ルールを守り、そして適正化に沿ってしっかりと保険請求することにより、まだまだこの業界は良くなる。これからこの柔道整復師業界がスポーツ分野、介護分野、災害の分野、そして地域の在宅医療など色々な分野に配置転換していくと考えたら、まだまだ柔道整復師の数は足りないと思う。私はそのような社会保障の中で、柔道整復師が働ける状況を作っていくことが我々の責任だと思っている。

 

近藤:

業界の未来はいっぱいに広がっているということが理解できた。しかしその一方で、業務範囲の問題がある。義務の問題、業権をどう拡大するのか。この制度改革について田中会長の意見を伺いたい。

 

田中:

受領委任払い制度は、整形外科も接骨院・整骨院も少なかった昭和11年から始まった。協定というものはその当時の柔道整復師団体との間で交わされたところから始まっている。柔道整復師法の中で業務の制限というのは、15条、16条、17条の「外科手術をしてはいけない」「薬品の投与をしてはいけない」「骨折・脱臼の後療をする時にはお医者さんの同意を得なさい」の3つしかない。ただ健康保険を取り扱う上で、協定が基となり、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷という形になっている。実際にはこれ以外の変形性のものや腱鞘炎も治療しているが、それを正しい傷病名で請求させてほしいと厚生労働省に言うと今検討中だと返答がある。20年位前からずっと検討している状態である。やはりそれは業界がバラバラであったという部分に反省点があったと思う。しかし2年前に全国柔道整復師連合会が出来た。制度改革のひとつとして、公益社団法人を中心に連合会も一緒になって活動することにより、適正な傷病名で請求ができるようにしていきたい。やはり制度はその時代に合ったように変えていくのが当たり前だと思う。しかしそれをしてこなかったことを業界人として反省していかなければならない。

 

近藤:

制度改革をするには足元を固めないといけない。当然のことながら我々は国家資格であるが、この社会権益というものが最近揺らいでいると思う。その点について公益社団の会長としてどのように考えているのか。

 

工藤:

社会保障のルールが変わってきた中で、果たして柔道整復師に与えられたものがこれだけでいいのかということは大きなテーマになるのではないかと思っている。そこで日本柔道整復師会は公益社団というハードルの高い新しい法律の下に移行したことで、当然、協定の見直しをしようと着手している。ただこれは我々素人集団が着手したところで、結果がどうであるというのはなかなか判断できない。そこで日本柔道整復師会では、この11月に新しくあるプロジェクトを立ち上げることになっている。全ての柔道整復師の問題、法律の問題やルールの問題、制度の問題などを入れ込んだコンプライアンスプロジェクトチームを作り、このチームに様々な分野の有識者を入れて色々な方向性を出していく。そしてそこでの結論を厚生労働省の方や保険者の代表の人達もある程度理解できるようにして出していくということになった。今までの我々の交渉は、ただ政治家の先生達にお願いをしていたが、結果は田中会長が言った通り昭和11年からほとんど変わっていない。それならばやり方を変えようではないかということで、交渉のエビデンスをしっかり作っていこうということになった。難しいのは我々の治療にあたっては物的証拠の求められる検査機構がなく、発生状況からその証拠を集めていくということ。物的証拠を求めていくと医接連携の強化が必要になる。またそこには連携のあり方という大きな問題が発生してくる。そのようなことを考えた時に、我々ができる範囲内のものをどのようにしてエビデンスに変えていくのかというところを、日本柔道整復師会としてしっかりと考えていかなければいけない。今、そのための組織作りに着手しているところだ。

 

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