menu

第29回日本柔道整復接骨医学会学術大会

2021/04/16

第29回 日本柔道整復接骨医学会 学術大会が2021年1月30日(土)・31日(日)の2日間、リモートで開催された。

大会テーマは、 「臨床と学術の融合 アスリートファースト ~Foot & Ankle ver~」

 

大会会長講演

『新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に伴う柔道整復学科における学生教育の現況と課題』と題して、日本柔道整復接骨医学会会長で帝京平成大学教授・安田秀喜氏が会長講演を行った。座長は帝京科学大学・二神弘子氏が務めた。

安田氏は、〝コロナ感染症以前における柔道整復学科の学生教育について、2019年度の柔整学科の成績は、国家試験52名中50人合格、合格率は96.2%、ATの一次試験に9名合格、教員免許を2人取得。本学生には日本柔道整復接骨医学会に発表させており、非常に良い経験になります。その時に発表したものを卒業研究ということで卒業論文を完成させて出来るだけ学生には研修をすることを勧めています。その結果として卒業研究論文集を発刊しています。本学の国家試験の成績は最初から良かったのではなく、実は2014年、第23回の時に58%になった時があり、問題点を追求しました。その効果があって97%、98%、91%、96%、96%という風にずっとキープしています。

第1期生から経過を追ってくると最初は良かったが、2015年に58%でガクンと落ちたことで、これでは柔整の教育はダメだとして新たにチューター制度、寺子屋制度と「manaba」を導入してICTを使うことと「オスキー」を導入したことで、劇的に97%という変化を遂げています。チューター制の導入については6月からテストを行って、成績が悪かった半分をグループに分け、成績不良者のグループを4~5名ずつ選出し教員を配置します。責任を持って国家試験終了まで生活面を含めて全部指導を行うことに変えました。他の大学や施設では寺子屋制は成績の悪い人だけで行っていますが、成績優秀者を混ぜることによって、成績不良者が勉強で分からないところを成績優秀者から聞けることが出来るのが非常に良かった。学生からもコミュニケーションがとれて自分の分からなかったのは何所だったのか分かるようになったということで、一生懸命勉強するようになり学力が上がってきました。分からないところは教えてもらう、それを教えるというワンチームとして国試の勉強を始めています。

もう1つは、国家試験が終わった時に必ずその場で自己採点を行い、全員にマークシートを渡して問題の答えを全部告知して、その日の夜に全部採点します。今度の国家試験で難しかったのはどういう問題だったか、どこをみんなが間違えたのかが全て分かります。このデータを基にして次の学年に応用しています。これが非常に後で効果が出てきました。

2番目は、基礎医学用語がよく理解できていないことが分かったので、先ず1年生を対象に「基礎医学用語集」を作っています。漢字・カタカナ・略語・英語版を作っています。その後に「解剖編」を作っています。実際には医療系の「基本用語集」として柔整のみならず理学・作業・看護の全部が使うことにしました。カタカナを英語にした時の意味はどういうことなのかとして「片仮名用語集」も作りました。1年生から4年生まで全部覚えろということを行っています。略語はどういう意味か、本来のスキルとその意味が全部分かるように工夫しています。本学のHP、「manaba」というLMSのシステムに載せました。スマホで全て見れるので、バス停で待っている時にも使用可能であり、学生が通学時間を有効に使えます。

3番目は、当大学の建学の精神は「実学」ですので、実際にオスキーでそれを行なっています。オスキーというのは客観的臨床能力試験というもので、本来SPさんは外部の人に患者さん役になってもらいますが、本学では全て学生と教員とで行っています。本学のオスキーの特徴は、評価項目を学生が作り、教員がチェックします。模擬患者も全部学生が行います。学生は患者役にもなり、施術側にもなります。またそれを評価することも出来ます。これは「帝京平成大学千葉キャンパス方式」というもので、施術役も学生、患者役も、評価するのも学生で、これをルーブリック評価で行うため、誰がチェックしても同じ評価が出来ます。グループ全体を教員が見ていてルーブリック評価で行っていくと、学生の評価と教員の評価が合うか合わないかにも実際に使われます。それを全部纏めたのが3年次のオスキー指導集です。本学生は最初の頃は「インフォームドコンセント」について中々理解できなかったが、ここでちゃんと理解できるようにしています。しっかり説明を行って同意を得ることが非常に大事だということを教えています。どういう風にバイタルチェックとかいろいろチェックしていくのか、どういう風に整復していくか、その時に何を聞いたら良いか。全部学生が作って、これを行ったほうが良いということを教員がチェックします。

4番目として、本学では冬季講習を重要視しており、冬季講習は、1限目と4限目に講習会を入れるというのがポイントです。国家試験の時間帯に合わせることで、9時~5時迄集中して勉強してもらうことが国家試験には非常に有効であると考えています。5番目は、成績順で指定席を決めており、「サンドイッチ方式」と我々は言っています。成績が一番良い人が真ん中に、2番目に成績が良いグループを1つ飛ばしたところの2G、3番目に良いグループは3G、4番目に良いグループは4G等、サンドイッチにしています。4月の初めに〝こういう「サンドイッチ方式」を行いますが良いですか〟と、学生と保護者の許可をとって、〝イヤだ〟という人は別の所で受けてもらいます。寺子屋とサンドイッチ方式を行うことにより、半分以下の人の点数が10点上がりました。こういう風にして国家試験の合格率が良くなっていくことが証明できたと考えています。

コロナ感染症が出てきて、学生教育がガラッと変わりました。それまでの授業の方式は、対面でしたが分散登校授業での対面になります。オンラインは、オンデマンドとライブの両方の方式に変わりました。授業内容も知識習得型、座学で知識だけを得るというものです。後は実習、演習や卒業研究など型をどのようにやっていくかになります。

COVID-19の経過は、昨年の1月に中国の武漢から発生。日本人が確認されたのは1月15日で、2月3日にクルーズ船のダイヤモンドプリンセス号が横浜港に入港し感染がみつかった。2月27日に全国の小中高と特別専門学校が臨時休校を要請され全部が休校になり、2月28日、大学に新型コロナウイルス感染症発生に伴う医療関係職種等の各学校、養成校並びに養成施設の対応についての通達があり、3月25日に東京都から不要不急の外出の自粛が出されました。4月7日に緊急事態宣言が出されて全国に拡大しました。これに伴い対面授業が出来ないことになり、本学では4月15日から23日にかけてコロナ対策授業として前期の講義を全部オンライン授業、オンデマンド方式とライブ方式の2種類に変更し、千葉キャンパスの柔道整復学科では前期の授業は全てオンライン授業になりました。音声機付きパワーポイント動画配信、レジュメ等の紙媒体で配布していた資料を配信する手段を、先述の学習管理サイトLMS、本学では「manaba」を使って環境整備を行いました。5月25日に緊急事態宣言が解除され、6月8日から本学では分散登校授業で、セミナーの科目は対面で行っても良いとなりました。9月7日から後期の授業は対面授業、オンライン授業、或いは対面とオンラインを組み合わせた授業が可能になり、学生に周知しました。

健康管理表を必ず毎日入力して、教員に提出、発熱や体調不良、検査で陽性だったり、濃厚感染接触者は入館できませんが、公欠扱いにしています。入館時は、念入りに手洗いをして消毒をする、ソーシャルディスタンスを保つこと、3密を避ける、館内ではマスクを常に着用、食事中はマスクの不着用での会話は絶対にしない。所謂黙食です。指定された場所以外での食事、お菓子も食べてはいけないと厳しく指導しています。

前期の授業で、医療スポーツ学科は4月15日から、看護学科は4月20日、柔道整復学科・理学・作業は4月23日からオンライン授業を開始。分散登校は6月8日から全学科で開始して、学科コースで登校曜日を決めて午前中に2学年、午後に2学年に分散し、学生は週1回半日だけ対面授業を行い、その他はオンラインで行うことにしています。教室はセミナークラスの単位で座席を離しています。対面はセミナーとか一部の実習等は出来ることになりました。定期試験は従来では1週間で終わるものが倍かかるため2週間延長したことになります。オンラインではダメということで出来るだけ対面で行うという方針です。

後期授業は、フレッシュセミナー、アドバンスセミナー及びコンピューター演習は原則対面で行うと決めています。標準のガイドラインを策定して、実習・演習は原則対面授業ですが、一部ではオンライン授業でも良いという風にガイドラインで決めています。身体の接触を伴う演習、学内実習はキャンパス毎に設定しています。パスワードを借りてのなりすましに関しては対応が出来ていません。オンラインで授業と対面授業の良いところと悪いところについては、大学の講義はオンライン授業よりも対面授業を優先すべきであるというのが結論です。学生も出来るだけオンラインではなく、対面をやってほしいというのがアンケートを見ると分かります。教員からもいろいろデメリット等も出ていますが、グループワークに参加しない学生が多いので困るということです。こういう風に良い所と悪い所、また通信機器に成績が左右されるというのもあります。

オンライン授業の現況としてはLMSの小テスト、ドリル、レポート等を利用することによって、「何時でも何所でも何度でも」出来るので、知識習得型、国家試験には有効であったと言えます。オンラインと対面で接骨院の実習を行った学生の意見で、〝良かったのはオンラインでいろいろ何回も見られて良かった。一回一個の課題でやりやすかった〟とあります。デメリットは、真面目な生徒と不真面目な生徒との間の評価に非常に問題があるということです。教員から見たメリットとデメリット、学生に自ら学ばせる、考えさせるのが学生教育の本分ですが、中々ピッタリ合うことが出来ない時があったとあります。また卒業研究もちゃんとオンデマンドで出来るということが分かりました。オンライン授業の今後の課題としては、教材を作るのが非常に教員の負担である。学生のなりすまし対応には本人確認が出来ないことがある。教員によって授業の質や完成度に大きな差が出る。実技実習科目に対しては、感染予防対策を十分に行いながら学習効果の高い対面授業を導入すべきであると考えます。

健康医療スポーツ学部では、2020年度後期授業から実技実習科目に関して十分な感染予防対策を行いながら対面授業を計画しています。「オンライン授業の学習環境で満足したか?」のアンケートで、オンライン授業で不安だったというのは、〝友達に会えない〟が20%位、〝設備が利用できなかった〟〝課外活動が出来なかった〟という意見もありました。〝課題が多すぎる〟というのもありました。

最後に、大学がある千葉県市原市は、地磁気逆転の「チバニアン」の根拠地層があるということで今後非常に歴史的に有名な場所になっていくと思います〟等々述べ、大会会長講演が終了した。

 

 

 
前のページ 次のページ
大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー