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(公社)日本柔道整復師会第39回東北学術大会福島大会開催!

2018/10/16
2日目特別講演1:
股関節疾患のマネジメント

公立大学法人福島県立医科大学医学部整形外科学講座教授・
附属病院人工関節センター部長
青田恵郎 氏

青田氏は〝股関節疾患のマネジメントで、常に心がけていることや、菊地先生の厳しい指導を受けてやってきたこと、いまだによく分からないことが多く考えながらやっています〟と前置きした上で、〝変形性股関節症の内旋制限=<15°が変形性股関節症の56%。一次変形性股関節症は欧米で多く、軟骨は全体的に減り負荷は分散する。症状出現はゆっくりであるがDDH(二次性)負荷が一時集中するため進行しやすく、また保存療法と人工関節しかなく中間がない。

人工関節のメリットは、①除痛効果に優れている②術後より荷重が出来る、早期復帰が可能であり、この15年で進歩耐久性がアップし、骨と癒合しやすい材質の向上がみられる。問題点は、ゆるみ・骨折・感染等であり、15年―20年くらい耐久性があるといわれている。また二次性変形性股関節症は、発育性股関節障害によるので、成人になっても寛骨臼形成不全が残りやすく小児期に無症状が約半数である。変形軽ければ温存手術の選択もある。骨頭変形(ペルテス様変形)で大腿骨形態異常は、骨頭が扁平化し拘縮する。腰椎側湾、DDH変形が高度になりやすい。関節温存手術の特徴としては、残った軟骨、骨を利用する。若年(約50歳以下)は変形が軽い。進むと人工関節の可能性がある。将来、骨がないと治療できない。

大腿骨骨頭壊死症は、骨壊死が発生し陥没、変形で痛みがある。原因は1.ステロイド50% 2.アルコール30%3.突発性 4.その他であり、潜函病との合併で約1万人いるとされている。青壮年(働き盛り)に多く、診断はMRIが優れる。関節リウマチは、骨粗鬆が強く、骨軟骨が溶ける。また股関節疾患の診断としては1.病状(主に鼠径部)他の疾患の否定、脊椎疾患、内臓疾患、悪性腫瘍などを見逃さない。悪化の予測、進行しやすさ関節裂隙減少は?形成不全は?亜脱臼は?骨頭変形は?(円いか)骨委縮(粗鬆)は?壊死は大きいか(骨頭壊死)、活動性高いかをマネジメントする。患者さんと相談し、希望、将来像、治療時間がとれるか等を聞いて、股関節の状態から選択できる医療の提示を行い、治療方針を決定する。急ぐ病態以外は慌てずしっかり方針を立てる。特に若年者は軟骨が減ってからは人工股関節しかない。術後のマネジメントとしては、股関節を休ませる、杖や減量など歩行しやすさを心がける。伸ばしすぎ、曲げすぎ、回しすぎ、不安をあおりすぎないようにする。高齢者はロコモの悪化、体力低下、寝たきりを防止する。術後に異常を感じたら股関節負荷を減らす、受診、定期チェックを行う〟等、股関節の主な疾患と治療法、外来で心がけているマネジメントについて述べた。

 

2日目特別講演2:
次代を担う君たちへ

公立大学法人福島県立医科大学常任顧問・
ふくしま国際医療科学センター常勤参与・
福島県健康医療対策監
菊地臣一 氏

菊地氏は、〝患者さんが教科書であるという格言は非常に重く、この格言を十分に理解し、それを実践する総合的な知識と技術が必要です。そこに至るまで相当な勉強が必要で、そのためには教科書、あるいは先輩、師匠から学ぶ、つまり何が分かって何が分かっていないのかが分からないと診療は出来ない。つまり、ニュートンの万有引力のエピソードのように、林檎を落ちるのを見ても気が付きません〟等、臨床家としての心得を述べた上で、次世代へのメッセージ〝新知見は、診療現場からしか得られない。「患者の痛み」を診るのではなく「痛みを持った患者」を診る。「どんな治療をするか」ではなくて「誰を治療するか」である。

人生は出逢いに尽きる。"人生の扉は他人が開く"のである。親は選べぬが恩師は選べる。組織からの学び、独りの無力、組織の勁さ、組織は変化(変質)するが継続していく。医療のプロとして、コメディカルスタッフや患者さんと同じ目線であれ。医師にだけ許されるルールはない。人間は人生が配ってくれたカードでやっていくもので、カードが悪いと愚痴をこぼしてはいけない。全ての出会いを大切に、プロとしての仕事は、双方に相手への信頼と敬意が必要。医療人として青春の一時期、寝食を忘れて何かに没頭するがあって良い。何になったかでなく、何をしたのかが重要である。

「愚直なる継続」は、あらゆる職種にとって大切なことである。私の"愚直なる継続"は、1日3回廻診(早朝、昼、消灯時)、3原則の徹底(時間、服装、礼儀)、帰宅後、読まなくても本を開く。徹底した模倣が創造性を生む。その理由は、先ず形から入る。模倣をすることで何故それが完成されたかが理解出来てこそ個性の発現へ繋がる。個性は出すのではなく出るものである。外来で私がしていることは、"遠いところ大変でしたね""痛くて大変ですね"と共感の提示。診察台の寝起きに際して、出来る出来ないに関わらず手を添える。スリッパや靴を揃える。"何かあったらいつでもご連絡下さい""お大事に"患者の安心感の獲得を行う。満足は無理でも納得できる医療を提供する。医療環境の矛盾や不条理に耐える忍耐力、"修行とは矛盾に耐えることである"。患者中心の医療に対応できる柔軟性、協調性が求められる。愚直に一つのことをやり続ける努力の継続"努力に勝る天才なし"。

歴史上、未曽有の転換期である。Science (EBM)とArt (NBM)の統合、治療に対する患者の高い満足度、第3者も納得する医療。視点を「病気」から「病人」へ。「凡庸な努力は凡庸な結果しか生まない」は一面の真実であり、高い目標を先ず設定して、それを達成するために自分に出来る全ての努力をここに集中する。"悔しさ"と"無念"を糧にせよ。"劣等感"こそが成長の鍵である。"悔しさ"と"無念"の経験は、他人の悔しさや無念に思いが至る。若いうちに修羅場を踏んで決断の経験を積むこと。他人は「情」でしか動かない。賛成はしてくれなくても納得させることに努力する。味方になってくれなくても敵にならなければそれで良い。逃れられない客なら笑って迎えること。自ら関係を絶つようなことはしない。競争は大事、しかし協調はもっと大事である。プロとしての良い仕事は、双方に相手への信頼と敬意がないと成立しない。自分の全て(立場、環境、出身など)に誇りを持ち、自分しかできない仕事をするのが真のプロである。自分の全て立場・環境・出身などに誇りを持って自分にしか出来ない仕事をすることです〟等々、熱いエールを送った。

 

1日目実技発表は、『ROM訓練によるグローインペイン症候群へのアプローチ手技』宮城県・柴田匡一郎氏、『膝関節ROM拡大に対する筋アプローチ法』岩手県・麥倉清高氏、『鎖骨骨折の整復固定法について』青森県・田中松雄氏、『左足関節に発生した典型的内反捻挫1例について―ビデオ画像から得られた受傷発生メカニズム―』秋田県・松尾秀正氏、『シンスプリントの治療―超音波治療器などを用いてのアプローチ法―』山形県・藤田直広氏、『足関節内反捻挫テーピング法の下地の改善』福島県・鬼澤武則氏ら、6発表。

2日目研究発表は、『接骨院・整骨院における問診の進め方に関する一考察~腰部捻挫(蓄積性・反復性損傷由来)のアンケート調査結果を踏まえて~』宮城県・若井晃氏、『足部内転運動がもたらすシンスプリントへの影響』岩手県・佐藤大介氏、『介護予防事業機能訓練と行政との連携』青森県・岡野信子氏、『骨盤の可動バランスの失調が右膝関節捻挫に与える影響』秋田県・李正圭氏、『初診時に迅速に診断出来なかった麻痺を伴わない橈骨神経管症候群の1症例』山形県・丹学氏、『指MP関節ロッキングの整復法~前腕回外位での整復~』福島県・遠藤徳雄氏ら、6発表であった。

 

 

 
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