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(公社)日本柔道整復師会第41回近畿学術大会奈良大会 開催

2016/11/11

平成28年10月23日(日)、奈良県社会福祉総合センター(奈良県橿原市)において、公益社団法人日本柔道整復師会第41回近畿学術大会奈良大会が開催された。

近畿学術大会奈良大会

近畿学術大会奈良大会主催者である(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は〝今日は若い柔道整復師や学生の方々も参加されているので、日本柔道整復師会が公益社団法人として行っている活動についてお話ししたい。まず、保険取扱いの制度改革を29年度からスタートしたいと考えている。現在、保険者による厳しい患者調査が行われているが、我々は審査会の権限を強化し、患者調査のあり方を見直し理不尽な調査を止めさせようとしている。行政に対しては、柔道整復も医科と同様に支払基金を通して支払いが行われるようにできないかと要望している。しかしそのためには、まず全国統一した様式で請求を行うようにしていきたい。これにより、医科と同様に電子請求が実現できる可能性が出てくる。これには行政も前向きに動き始めている。その気運が高まってきた背景には、昨年問題となった、医療関係者が反社会的勢力と結託して働いた医療費および療養費詐取事件がある。保険取扱いについては、養成校を卒業してすぐに開業すること自体は問題ないが、受領委任払いを利用するためには3年間の実務経験を課すことを検討している。これには行政や保険者等も大いに賛成している。我々はより良い柔道整復業界を後世の柔道整復師に残すためにも、未来に向かって改革を進めていこうと尽力している。皆さんには今日学んだことを明日の糧にしていただきたい〟と挨拶した。

 

特別講演
『スポーツ現場におけるリスクマネジメント』

国立大学法人 奈良教育大学 保健体育講座
学校保健・スポーツ医学研究室 教授 笠次 良爾氏

笠次氏笠次氏は〝私は現在教育大学に勤務しているがもともと整形外科医であり、マラソンやトライアスロンに関わっている。今日は医師という立場も含めて、現場でどうリスク管理を行うかを中心に話していきたい〟として講演を開始した。

スポーツ現場における柔道整復師の活動については〝大会救護とクラブチームのサポートが多いと思う。現場に医師がいる場合もあるが、いない場合のほうが多いのではないだろうか。この時に柔道整復師は脱臼又は骨折の応急処置や打撲・捻挫・挫傷・筋腱などの軟部組織損傷に対する施術を行う。医師がいる場合には、医師が診断をし、医師と看護師が内科的疾患、そして柔道整復師や理学療法士などが運動器疾患の治療にあたる〟と説明。スポーツ現場に出る際には、どのような傷病が多いかということを予め把握しておく必要があるとして〝トライアスロンでは、傷害が7割、疾病が3割であり、傷害の中でも擦過傷が大半である。つまり、重症度の高い内科的疾患がある可能性も踏まえながら、多くの運動器疾患の患者に対応しなければならない。では柔道ではどうか。柔道は体育活動中の頭頚部の死亡・重度の障害事故の割合が多く問題となっている。平成23年度までの14年間では死亡・重度の障害事故は167件、うち死亡が57件、重度の障害が110件であった。死亡のうちの9割を占める頭部外傷の中で、運動部活動の柔道では21件も起こっている〟と事故の多い事例等を報告し、頻度の高い傷病に常に対応しながら、重症度の高い傷病患者が来た時にいつでもすぐに対応できるような心構えをしておく必要があるとした。

リスクマネジメントは時系列で見ると、リスクを断ち切るためにあらかじめ準備しておく「事前管理」(狭義のリスクマネジメント)、現場での対応である「渦中管理」、被害を最小限に留めるための「事後管理」(クライシスマネジメント)に分類される。
リスクマネジメントとは、〝『安全配慮義務を尽くすこと』という一言に尽きる。①自らを守る方法を教える、②重症の怪我を負わせないための活動計画の立案および実施、③安全対策を立てる、④最悪を想定し活動の中止を恐れない、⑤地域やスポーツの実情に合わせたマニュアル作り、⑥保険への加入、等が重要だ〟と弁護士の菅原哲朗先生の書籍から引用され要点を解説。クライシスマネジメントは、〝被害を最小限に抑える努力をし、最小限の費用で最大限の効果が上がるように損害を減少し、被害を回復させるということを考えていかなければならない。ポイントとしては、①人命救助などの果たすべきところは果たす、②事実関係を把握し記録する、③様々な情報源からの情報収集を心がけて先例を学ぶ、④自分が行ったことの証拠を写真や文書で残しておく、⑤日頃から仲間や保護者、家族等と信頼関係を築いておく、⑥最新の情報や知識を基に、自分の行動は正しいという信念を持つこと、等が大切である。常に設備や施設などの物理的環境、自然環境、社会的環境などの外的要因、児童自身の既往歴などの内的要因に気を配り、その中で改善できるものについて変えていくことが、我々がスポーツ障害を予防するために行うべき対策だ〟として、スポーツに参加する前のセルフチェックポイント等を紹介した。

安全対策については、〝児童や選手に対し安全教育を行うことが最も重要となる。そうすると児童や選手は自らの安全を守ることができるようになり、管理者は人命にかかわる最も重要な部分を管理するだけで済むようになる。選手自身に管理させるためには、まず「自分にも出来る」と感じさせること、そして役割を与え、その行動自体をかっこいいと思ってもらえるようになることが大切だ。選手を巻き込むことによって、チームで安全を守ることができる〟と述べ、具体的事例として、災害医療の考え方をトライアスロン大会の救護体制構築へ応用した例を用いて、重症度判定の方法や搬送時の注意点、伝達すべき事項、初期対応の手順に至るまで詳細に解説した。

 

基調講演
『肩関節拘縮の運動療法 ―理学療法士からの視点―』

さくらい悟良整形外科クリニック リハビリテーション科 科長 榮﨑彰秀氏

榮﨑氏榮﨑氏はまず、五十肩のメカニズムについて〝腱板の機能低下が上方でインピンジメントを引き起こす。そのためその周辺組織に炎症が起き、それに伴って癒着瘢痕が形成され拘縮が起こる。ほとんどの場合はこのような流れとなっている。烏口肩峰靭帯は年齢とともに硬くなる傾向にある。インピンジメントが繰り返されると、炎症が起き肩峰下滑液包の滑膜が烏口上腕靭帯(CHL)を覆っているため、炎症がCHLや腱板疎部にも波及する。肩峰下滑液包や腱板での炎症は、最終的に関節内に波及する。起炎物質であるブラジキニンを関節に注射すると、筋電図は棘上筋などの深層筋の腱板筋のみで大きく振れ、浅層筋ではあまり反応しない〟等と説明。肩関節の奥で炎症が起きるとそれに近い深層筋に大きく影響が出るため、治療のターゲットは深層筋となることを示した。

運動療法については〝どこに狙いをつけるかが重要。動かないということはどこかに問題が生じているということなので、ポジション別の運動方向により制限因子をある程度断定する必要がある〟として、各肢位における緊張変化について詳細に解説した。さらに〝肩関節拘縮の原因のほとんどは、攣縮・短縮・癒着であるが、治療対象を区別して考えなければならない。最も重要なのが圧痛所見である〟として圧痛所見による見分け方を解説。その後、脊髄反射を使った抑制操作の仕組みや等尺性収縮を用いた肩関節ROM訓練等を紹介した。

 

 
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