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日本転倒予防学会第2回学術集会 開催

2015/10/16

2015年10月10日(土)、11日(日)の2日間、京都テルサ(京都市/京都府民総合交流プラザ内)において日本転倒予防学会第2回学術集会が開催された。

第2回学術集会

 

第2回学術集会会長を務めた萩野浩氏(鳥取大学医学部保健学科教授・附属病院リハビリテーション部部長)は〝2004年から「転倒予防医学研究会」として10年間活動し、2014年4月に「日本転倒予防学会」を発足し新たに活動を始めた。同年10月に東京にて第1回学術集会を開催し、第2回目となる今回は『転倒予防の未来をつかむ』をテーマとし、非常に濃い内容となっている。是非活発にご討論いただき成果を持ち帰っていただきたい〟と挨拶。さらに多職種・多分野の専門家が集まっていることから〝お互いに「先生」と呼ぶのではなく「さん」付けで呼びましょう〟と提案し、職種の垣根を超えて連携を強めていく姿勢を示した。

 

特別講演『京舞における所作と身体』

舞踏家 京舞井上流五世家元 井上八千代氏

藤田氏京舞井上流五世家元である井上八千代氏は、観世流能楽師片山幽雪(九世片山九郎右衛門・人間国宝)の長女として生まれた。井上氏は〝今年1月に亡くなった能楽師の父は、80歳を過ぎてからも舞台に立ちたがっていたが、腰が痛くなり足が運びづらくなった。長距離を歩くこととじっと立っている姿勢が辛いと言っていたが、何とかしたいと努力し、長らく整形外科にも通っていた。80代で健在の母に関しては、転ばないかということを最も心配している。私たち芸能者は舞台に最高のコンディションで臨みたいという想いで、工夫をしながら日々の稽古に取り組んでいる〟と話し講演をスタート。

井上氏は〝日本舞踊の中でも「舞」はゆったりした動き、「踊り」は身体的にも訴えかけの強いものだと認識している。舞はもともと神様を呼ぶ際の「回る」という所作が発祥で、一方で踊りはどちらかというと集団で身体の欲するままに動くということから発したと言われている。京舞は上方に育った舞の流派のひとつだ〟と京舞の起源と井上流の歴史について解説した。

京舞の所作については〝腰を落とし、かかとを上げるのが京舞の基本姿勢〟と説明したが、〝現在の生活では畳がなく床に座ることが少なくなっている。祇園の芸舞妓を志している人のなかにも床に座ることがない、正座が出来ないという人が増えていて、現在の生活様式では日本舞踊を舞うことは難しいと感じている〟と生活様式の変化に伴い、人々の身体にも変化が出てきていることを指摘。さらに〝初世が享年78歳、二世が88歳、三世が100歳、四世が98歳と代々長命であるため、舞は身体にいいのではないかと言われることもしばしばだが、京舞の技法としては身体に良いことも悪いこともあると思う〟として実際に京舞を披露し、会場からは感嘆のため息が漏れた。

井上八千代氏

演舞を終えた井上氏は〝京舞の特徴として直線的に前に出る、また直線的に後ろに下がる、そして回るという動作がある。そのため腰を落として摺り足で歩くことを最初に習う。また普段から5本指の足袋と草履を履いて生活することが多く、歩く際に足の指が地についているかどうかを意識している。それでも5年前に明治座で講演を行なっていた際に、不注意で奈落に落ちて腰を痛めてしまった。家庭内においてもそうした不注意で事故を起こさないことが重要となる。転ばず事故を起こさず、日頃の健康を気遣うということが一番大切だと考えている〟と締めくくった。

日本転倒予防学会理事長の武藤氏は〝つま先立ち、腿上げ、後ろ向き歩行、片足立ち、ジャンプ、スクワット、手指に至るまでの関節の屈曲伸展回旋運動、早い筋肉の動きと遅い筋肉の動き・・・それらを一遍に全身で表現して芸術性と文化性を表している。極めて複雑で総合的な芸術身体運動を見せていただいた。私たちも「足の感性を磨く」ということが転倒予防のポイントのひとつであると考えているが、足袋や草履などの履物によって足の感性を磨き、足の筋肉を鍛えることでこれほどまでに芸術的な身体運動ができるのだと感服いたしました〟と京舞と転倒予防の共通点を挙げ、それらを舞によって見事に体現した井上氏を称賛した。

 

 
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