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第23回日本柔道整復接骨医学会学術大会 開催

2014/12/12
特別講演Ⅱ
『重症外傷診療の進歩と課題』

帝京大学医学部救急医学講座 坂本哲也

冲永氏坂本氏は冒頭で〝外傷を含む不慮の事故は悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎、老衰に次ぐ死因となっている。交通事故は年々減少しているが転倒・転落は微増しており、転倒・転落による死亡者が交通事故を上回った〟と、近年の外傷の傾向を厚生労働省の調査結果をもとに解説。

しかし、近年こそ交通事故死亡者は減少しているが、昭和30年代は「交通戦争」と言われ年間1万6000人以上が交通事故で亡くなっていたという。〝外傷による死亡者を減らすため、昭和38年に消防法の改正により救急搬送業務の法制化が行なわれた。また救急車を受け入れる救急告知医療機関の認定、昭和52年には初期、二次、三次救急医療体制の整備、最後の砦としての救命救急センターの設置が行われた。平成3年には救急救命士制度が成立し、迅速な処置にあたっている。さらに平成21年度の消防法改正により重症度・緊急度判断基準に基づいた搬送が法制化され、メディカルコントロール体制のもとで搬送先が選定されるようになった。ドクターヘリ事業は現場において医師による治療を開始し、迅速かつ広域の患者搬送を可能とした〟と、現在の医療体制が出来た背景を詳細に解説。〝死亡者を減らすためには迅速な処置が大切である〟と述べ、外傷患者の予後改善を目標とした8つの提言を紹介した。

最後に、〝日本の外傷診療は着実に進歩している。しかし、十分な外傷診療体制を敷いている中で理想的なチーム構成で医療が行なえる施設はごく一部である。役割分担を国家的なプロジェクトとして考えていく必要がある〟と今後解決すべき課題を示した。

 

シンポジウム

シンポジウムでは、理学療法士、鍼灸師、AT、ケアマネージャー等の資格を保有する4名の柔道整復師が、それぞれが有する資格を通じ、柔道整復師の業務や教育などについて討論を行なった。

シンポジウム

 

① 理学療法士の立場から柔道整復業務の「みる」を探る

公益社団法人東京都柔道整復師会 辰野正和

柔道整復に対し、理学療法士からはレントゲン検査もできずに骨折の診断・治療ができるのか、地域性に富んだ職種なのになぜもっと地域医療に参画しないのかといった疑問の声が上がっている。対象者や対象疾患、治療目的の相違により、理学療法士は幅広い基本的知識量が必要である。そのため柔道整復師の知識量とは領域的には差があると思われるが、業務上において大差はないと考える。高齢化が進む現在では疾患が重複しているケースもまれではなく、他職種との連携が大切。伝統をしっかり継承しつつ、技術を向上させていくことが重要となる。


② 鍼灸師の立場から柔道整復業務の「みる」を探る

帝京科学大学医療科学部 東京柔道整復学科 二神弘子

鍼灸は中国を中心として発祥した伝統医学で、応用範囲は広くあらゆる領域にわたる。鎮痛効果や循環改善などが期待され、ペインクリニックなどでも用いられている。治療技術の面で柔道整復と鍼灸は相性がいい。外科的で外傷をみる柔道整復と内科的疾患や慢性疾患等その他の範囲を診る鍼灸を組み合わせれば、より広く患者をみることができる。また鍼灸の持つ、患者を全人的に捉える姿勢は様々なストレスの中で生きる現代人の健康を担う医療者として有益であり、このような考え方を柔道整復の教育・臨床に取り入れていくことで、より豊かな医療者の育成につながると考える。


③ ATの立場から柔道整復業務の「みる」を探る

東京有明医療大学 小山 浩司

公益財団法人日本体育協会公認(JASA)が養成する日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)は、スポーツによる外傷・障害に対応するメディカルコンディショニング資格のひとつに位置づけられている。ATの持つアスレティックリハビリテーションやコンディショニングの技術、さらに栄養学や心理学といったアスリートをサポートするために必要な教養は、柔道整復業務の「みる」に活かせるのではないかと考える。例えば競技復帰を希望するアスリートに競技特性に応じた段階的リハビリテーションを指導することで、より安全に競技復帰まで進めることができる。


④ ケアマネージャーの立場から柔道整復業務の「みる」を探る

公益社団法人富山県柔道整復師会 酒井重数

現在の日本は急速に高齢化が進行しており、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要が大きく増加する。厚生労働省は、機能訓練・介護予防といった重度化を防ぐサービスの充実・強化を計画しており、その一環として来年から地域包括ケアシステムを導入する。今後、在宅医療・介護の連携の中に柔道整復師が如何に参入できるかが課題である。接骨院・整骨院を情報収集の中核に位置づけ多機能化することで、地域に安全と安心を提供し、さらに医療費も抑制できることを地域や行政にアピールすることが柔道整復師のみならず地域のためになると考える。

 

この他、教育研修セミナー「危ない!知っておきたい危険ドラッグ」、実践スポーツ医科学セミナー「サッカーにおけるスポーツ傷害-特に膝関節について-」の講演があり、各分科委員会フォーラム21題、インターナショナルセッション2題、ワークショップ2題、口頭発表142題、ポスター発表84題が行われた。

 

 

 
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