menu

酒田塾・酒田達臣先生と小粥博樹整形外科医とのビッグセッション

2013/10/16
抽象的な質問ですが、未来の医療というものを考えた時、「何が変わり、何が残る」と思いますか?プライマリケアを推進していこうとされているお二人の視点から、お答えいただけますか?

小粥:
国民の健康・福祉に明らかにプラスとなる面がエビデンスとして出てくる医療が残ると思います。厚生労働省から、例えば我々慶応大学医学部に「腰痛」に対して、代替医療、医業類似行為全て含めて、どういう医療が効果あるかという調査を依頼され、かなりの人数にアンケート調査を行いました。そういった調査を厚生労働省は毎年様々な医療機関に頼んで腰痛に限らずいろんな疾患に対してデータを集めている訳で、結局コストとアウトカムにおいてエビデンスのあるしっかりした医療が望まれています。やはりプライマリケアを担われている柔整においてもエビデンスが求められている。数値を出していくことをしないと、アウトカムが得られない。我々整形外科も同じですが、選別されてしまうと思います。我々医者のほうには専門医制度がありました。最近ちょっと難しくなっています。昔はある程度の経験、症例を提出して、筆記試験に通ればなんとかなりましたが、それが本当に医療レベルを保証しているのかとして専門医制度自体に対して疑いの目が強くなり、今は専門医制度を認定する別の委員会、全ての科の専門医の質をある程度一定にしようとして合同の委員会を立ち上げ統一基準を作ろうとしています。医療の質を担保するということで、今まではレベルの格差が大分ありましたが、レベルが担保されるような専門医制度を立ち上げようと随分動いてきています。今後はナースにしても、アメリカみたいに例えば麻酔の補助、簡単な麻酔はナースが行える仕組み、これはプラクティショナーナースといって専門性が高まる。理学療法士さんも脳血管専門の理学療法士、認定理学療法士というように、柔整師さんのほうでも今後多分質を確実に担保することが行われていくのではないか。それに乗れない人たちはどこかで切られていくか、恐らく厚生労働省では認定がついている人とついてない人で診療報酬に差をつけるなどしてくるでしょう。取っても取らなくても同じであれば誰もモチベーション上がらないですから。そういう構造に医者がなっていますので他の医療業界も全部なっていくと思っています。

酒田:
結局、治療効果をちゃんと出せる人が残って行く、当たり前の話です。同時に、やはりプライマリケアをしっかり行える人間が残っていく。自分の専門外の疾患も見抜く目を持ち、専門医につなげられる人間が医療人として残ると思います。

 

研修医を指導される立場にあると思いますが、どういうタイプの人に真のプライマリケア実践者としての素質が認められると考えですか?

小粥:
今何かと患者密着型の医療と言われているように、〝患者サイドに立つ〟こと。ありふれた言葉ですが〝優しさ〟なんですね。これは持って生れたものではなく経験とともに人間は優しくなれる。そして失敗したことを次に生かす人が伸びる。

酒田:
やはり素直さ、謙虚さですね。間違いや失敗があった時に素直に振り返ることは結構重要です。

 

プライマリケアを実践している中で何かポリシーのようなものは?

小粥:
患者さんの痛みに対し、心因性のものと簡単に決めつけずに、何か器質的な原因があるだろうということで、検査をするなりその訴えを聞いてあげて、本当の原因をみつけてあげるということをプライマリケアでは重要視しています。これには時間がかかる、そこが問題です。プライマリケアに一番大事なことは患者さんに寄り添って、時間をかけて診察して話を聞いてあげること。話を聞いてあげるだけで、初めてこんなに聞いてくれた医者がいたということで、良くなっていく人もいます。だからプライマリケアでは時間をかけることはかなり必要なことです。

酒田:
プライマリケアを行っていく上での僕のポリシーは、常に〝自分の行いの中心軸は何か〟という点に立ち戻ることですね。

 

ロックオン(正確な疾患推測に至る)するのに必要なものとして、「直観力」や「診察技術」などがあるかと思いますが、そのなかで「直観力」に関してはどのようにお考えですか?〝何か変だな?と気づくこと〟そういった直観力を向上させるにはどうすればいいのでしょうか?

小粥:
直観力というのは、経験です。習うより馴れろ、患者さんを多く診る。そして診断がどうだったか自分でフィードバックしなければ。例えば我々の整形外科では、すぐに明確な診断に至れない時は患者さんに血液検査をしてもらいます。患者さんは結果を知りたいから後で病院に来てくれる。時間が経つといろんな症候が顕著に表れてくることが多いので、それを診るためにはちょっと分らなさそうな患者さんは、血液検査をして、申し訳ないがまた来てもらう。痛みがとれると来なかったりしますから。要するに自分でフィードバックがかからないと直観力を養えない。データベースを増やすことで直観力を養うことは必要でしょうね。正しい経験を蓄積していく必要があります。

 

大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー