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柔整師養成校訪問レポート 
【第2回 : 帝京大学医療技術学部柔道整復師学科】

2011/04/01
教職員の声

教授

【柔道整復学科長・塩川光一郎 氏】

―貴校の歴史について簡単に教えて下さい。

柔道整復学に関しましては、帝京大学グループには歴史があるのです。実は創始者である冲永荘兵衛先生は柔道に熱心でありましたが、それが基本となって、1968年には帝京医学技術専門学校に柔道整復学科をつくられたのです。このことから分かりますように、帝京大学グループは歴史的に柔道整復学に深い関心があり、帝京大学、帝京平成大学、帝京短期大学の他に、近年では帝京科学大学にも柔道整復学科を設けています。私どもの属する帝京大学医療技術学部の柔道整復学科は総合大学の中では日本で最初の試みとして2008年4月に新設されました。

 

―母体は専門学校ということですね。では、なぜ大学になったのでしょうか?

専門学校あるいは短期大学は、4年制の大学に比べると、やはりどこか実務重視型の学校という感覚があるように思います。実際、専門学校では、短期間でレベルを上げて施術をすることができるようにする訳で、普通の4年制の大学よりは、時間的には若干余裕がない。厚生労働省はそのように忙しい面のある専門学校の仕事ぶりを、丁寧に、しかも厳しく監視しているものと思われます。本当は厚生労働省を引っ張って行くような優秀な柔道整復師がたくさん世の中に出てくるような状況の方が、患者さまのためには、望ましいのです。そのような日が早くやってくるためにも、さしあたって、柔道整復師の卵たちを3年間ではなく4年かけてじっくり育て、それによって世の中がどのように変わってくるものか、まずは実験してみよう、というようなところがあったのではないかと、私は考えております。

 

―柔道整復学が学べる大学院の創設も検討中と伺いましたが?

大学で4年間、そして大学院で5年間学ぶことによって、お医者さんとも十分に対等に話し合える博士として、世間に指導性を発揮できるようになる柔道整復師をすぐにも育て始めたいという考え方です。柔道整復師も開業できる技術を身につけただけでずっとそのまま水平飛行をしていたのではダメです。技術にしても理論にしても、出来れば大学院クラス、出来ればその上、さらにその上のトップクラスのほうが人助けのためには都合が良い訳ですよ。文学部の博士、生物学の博士、歯学部の博士、みんなたくさん勉強して訓練しているんです。そういう意味では柔道整復師ももっと高みを目指して博士レベルまで修行を積み、他の分野の博士と同等のレベルまで自らを磨いて、外傷を負った人々のレスキューに向かった方が、より効果的に世間を助けることができるのです。では何故、まだ柔道整復学の大学院がないのか?それは柔道整復学が「学問としてまだ確立していないから」だという意見があるからだと、私は思います。しかし、私はできるだけ早く大学院をつくって、柔道整復師としての理論と技術を訓練することが重要だと考えています。

900年の歴史をもつ世界最古の総合大学であるボローニア大学(イタリア)の奥まった歴史の部屋の奥の壁には、その歴史の始まりを記した畳よりも大きな布の旗があります。それにはラテン語でアウマ・マテール・スツディオールムと金の糸の刺繍がしてありますが、その文字には、「我々はすべての学びの母になろう」という意思が込められているのです。だったら、Why not Judo Therapyというのが私の考えです。殺法・活法の「法」に始まり、「術」に発展定着した柔道整復術は、日本人から取り去ることのできない重要な伝統医術です。誰かが否定しようとしまいと、「学」に発展昇華していくと考えざるを得ないのです。また、柔道整復師の中には柔道整復学専攻卒業の博士号をもった素晴らしい先生がたくさんいて、整形外科の先生がその方々を時に頼りにしながら、保存療法として手術をせず治療をする方法を研究発展させていく。これは苦しんでいる患者さまにとっては福音であり、柔道整復術もそこまで持っていかなければならない。そのためには、一日も早く大学院をつくって、柔道整復師としての理論と技術を訓練し、追求していくことが重要だと考えています。 柔道整復術は、もちろん地球の裏側でも成り立つ医療技術ですから、日本から世界中に広まったっていいのです。そこで、私は柔道整復を、「術」から「学」にしようと考えているものの一人である訳です。

 

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