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統合医療学会新理事長・仁田新一氏に直撃インタビュー

2012/05/16

―どのようにすれば夫々の職種の能力や特徴をいかした人間の体まるごと全部をケアする形になるのでしょうか。わかりやすく教えてください。

統合医療研究センターでは、西洋医学の医者・看護師などの西洋医学のスタッフを中心に、次に国家資格のある人たち、その次に国家資格のない人たちともチーム医療で一緒に診療を行っていくという考えです。国家資格のない方たちのレベルを上げるためにも統合医療の教育体系を作り上げ、教育システムの確立をめざします。統合医療学会の中に分科会を作って、夫々の分野の代表の人たちが集まっていますが、私が其処でいつも言っていることの1つは、〝この統合医療学会と一緒にやるのは、あくまでも本物志向を目指す人たちですよ〟と。もう1つは、〝例えば柔整師さんも、一つの方法論だけではなく所謂CAMの様々な方法論にクビを突っ込んでください、そうすることによって、お互いを理解するという素地が出来上がるんです〟と。自分達は何が出来て、何が出来ないのか、自分達のもっていないものでの方法論では何を持っているのかを知ることが大事です。
そこで、新しい選択肢に対する統合医療のコンダクターには、医者のほかは看護師さんが最も適任と考えております。私はこういう喩えをよくするのですが、ある患者さんにの治療を目的にオーケストラが演奏をする、オーケストラのメンバーは例えばバイオリンが西洋医学かもしれません。ビィオラは、アロマ或いは柔整かもしれません。いろんな楽器を演奏する人たちがコンダクターの下に、一人の患者さんに相応しい演奏をする、看護師さんは医者に較べて、患者さんにコンタクトする時間が長く、患者さんの身体状況を熟知しており家庭の事情や経済事情も知っていて、患者さんの情報を多く持っています。そういう看護師さんが指揮者になれば、医者が指揮者になるのに比し全く違うメロディを奏でることが可能です。そもそも看護師さんというのは高邁なナイチンゲール精神のもと、患者さんのために献身的に手助けをする医療従事者です。統合医療を行うということは正に看護師さんのナイチンゲール精神発揮そのもののだろうと私は思っています。患者さんに向けて演奏を行うため、統合医療という処方箋を書くのは看護師さんが最適であると言えると思います。
今回の人事では、日本赤十字看護大学名誉教授・川嶋みどりさんが副理事長で、4人の理事が看護師さんです。

 

―高齢化が加速する中、地域医療の衰退が言われております。どのように過疎化していく市町村、地方の医療を支えていくべきでしょうか。

今の遠隔医療というのは技術移転で専門の医者と専門ではない医者を結ぶ、或いは専門の医者と他の医療職種で展開しているものです。我々が開発した電子診療カバンには、血圧計・超音波装置・脈派の計測装置も入っています。医療とは関係ない一般の素人の方が双方向通信を立ち上げて患者さんに装着した種々のセンサー情報を用いた診療を行なうという研究を続けています。これを私はバーチャルホスピタルと言っておりますが、パソコンを立ち上げてもらえば、このシステムは飛行機でも離島でも可能です。5月末に気仙沼の大島地区に復興予算でこのシステムを導入することになっています。気仙沼地区にはもう既に1つ入りましたし、福島からも問合せがあり、このシステムはどんどん拡がっていくと思います。また、これを統合医療臨床や教育に使います。対面診療に対し電子診療と称していますが、医者は違う場所に居ながら治療方針を決定したり指導を行えるため、今の医師不足を解消できます。特区においてはこのシステムを認めて欲しいとした展開を考えています。
先ほどヘルスケアシテイ構想でお話しましたように、地域住民一人ひとりが健康産業にかかわり、或いは健康産業の担い手になって、例えばみんなで薬草の栽培をするなど、働いて元気になり、少し収入は増えますし、健康志向が高まります。この地域で新しいビジネスをおこしたら、若い人たちが増えてくるでしょうし、若い人たちも参加できます。繰り返しになりますが、パソコン操作をできる人であれば患者さんの側に医者や看護師が居なくても、情報を提供してもらう、コンサルテーションするだけでも良いのです。そういうことで、積極的に過疎化の現状に対応しながらその進行を止める方法論が考えられます。

 

―仁田理事長から見た柔整師の可能性、また統合医療との関連性や可能性について教えてください。

柔整師さんの数が物凄く増えているという話を、よく耳にしますし、ある会合ではとんでもないことをやらないでほしいという話もされましたが、私がその時答えたのは〝柔整師さんが増えていることは柔整師さんとしての需要が増え必然的に柔整師さんの数が増えている、そういう世の中であり、柔整師さんとしての可能性が問われているのであろう〟と、また看護師で当学会の副理事長である川嶋みどり先生がよく言われている、体に触ってあげることの深い意味合いがある訳で柔整師さんがマッサージするだけではなく、柔整師さんが一緒になって患者さんの健康を考えてくれているという連帯感や寄り添いが大切でそれが国民が求めているものであると言えるのではないかと思いますので、可能性は充分にあります。また、チーム医療のスタッフとして整形外科医がやれない部分、時間的にやれない場合もありますし、方法論的にやれない部分もあるかもしれません。そういう役割分担が必ずあるはずですし、医療パートナーとして必要とされているハズです。しかもこの統合医療との関連性でいうと、私が作っている所謂チーム医療の一員として十分に役割があると思います。