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統合医療学会新理事長・仁田新一氏に直撃インタビュー

2012/05/16

―被災地のヘルスケアシテイ構想について、もう少し詳しくご説明ください。

元々震災前からの日本統合医療学会の計画であった統合医療研究センターを作ることが震災地区の一つの復興に繋がるのではないかということで、ヘルスケアシテイを構想することになりました。先ほどのインドのメディシテイのようなアジア圏全体に向けた考え方とかなり一致した部分があります。医療・介護・福祉を包括する統合医療センターと例えば国際医療看護大学などを地元に作り、特に外国人のライセンスを一定期間認めるような特区を作って、其処に有能な外国人が住みやすいような街をつくり、外国人の力を借りたいということです。ヘルスケアという観点からの農業や食品、生薬などを水耕栽培したり、ヘルスケアに関する新しいビジネスを起業していきます。インドが展開しているものよりもっと産業的な部分を導入して、それぞれの異なった産業分野ごとに委員会を作ります。そこに興味のある会社や人々が集まって、大学も一緒に共同研究・共同開発を行えるシステムを発足します。その後は自立できるようにと考えています。今、それぞれの分野からの代表者が集まって協議会を作るところまで進んでいます。統合医療研究センターはその復興計画の要であり、今までにないような治療の方法論や材料の開発と、それを運用する新たな人材の教育をして、それを評価するシステムを、NIHのような機構にしたいと思っています。健康食品や補助食品等、体に良い物かどうかをチェックする機能を持たせようと考えています。地元にこれが出来ることによって、雇用促進と同時に自分も社長になって起業し、投資する。いわゆる第4セクター的な考え方です。産業面では国に最初の土台づくりをして頂ければ、後は地元で運営していけるような計画を考えています。大変大きな構想のため、5年や10年かかるかもしれませんが、一つの震災後の復興モデル地区として、全世界に向けて発信できることを願っています。

 

―仁田理事長は東北大学の副総長も務められ、また昨年の東日本大震災発生時、仙台におられ、以降ずっと医療関係者とのチーム医療をはかり復興に向けて活動されているとお聞きしましたが、今後の事業計画等について、わかりやすくお聞かせください。

あのように大きな震災があって、生死が分かれ助かった人たちの中で、急性期の疾病や外傷に関しては、西洋医学はとても効力を発揮したと思いますが、急性期以降の疾患等においては、それ以外の医療職種の方々の力が大きかったように思います。先日の衆議院の予算委員会で大島議員が質疑に立たれ〝DMATは大変活躍したがそこから先が上手くいっていないので、IMATを作ったらどうか〟と述べられました。IMATのIというのは統合医療のIntegrativeということでIntegrative medical assistant のことです。この案は被災地を移動した時のバスの中で生まれたものです。被災地の避難所に、ヨーガ、音楽療法、アロマの療法士で編成する20人位のチームを組んでいき、被災された方々に喜んでいただきました。患者さん本人だけではなく、家族を含めた周りの人たちの幸せ感に包まれた光景を目にして、こういうものが医療の原点ではないかということを感じ、本年1月14日に開かれた統合医療学会シンポジウムでそのことをお話しました。要するに日本では今まで大半が西洋医学だけの治療でしたが、今回の経験のように西洋医学以外でも被災者の心身に寄り添える良い方法論があることが証明されたのですから、両者が歩み寄ってそれぞれの良いところを出し合って新しい方法論として展開したいと思っています。それには両者の共通の言語と共通の評価基準が必要不可欠です。
統合医療全体に関しては、玉石混交と言われていますが、玉は玉で磨けば更に良質の玉に変化しますし、石と言われるものも2種類あって、磨いても磨いても石の場合もありますが、石の中でも我々統合医療学会が磨くことによって玉に転換できるものがあるのではないかと思っています。それには、先ず手始めに人間の心身にとって、良いものか害になるものかをハッキリ線引きする必要があります。その線が統合医療として人類のために貢献できる最低限の評価基準ではないかと思います。要するに個人にとって不利益をもたらすものは統合医療の領域から外れるべきで、その線引きはしっかりと行っていきます。統合医療の中でその評価のグレーディング、例えば「よく効く」「少し効く」「効くかどうか分からないが、無害である」「少し有害」「有害である」という段階付けを新設の統合医療研究センターで行っていきたいと考えています。しかし、良い効果が認められるにもかかわらず、所謂近代医学的な血液検査や生理学検査でも変化が見られないものが確かにあります。これは西洋医学の科学的評価が統合医療の評価全体をカバーできないと言うことになります。これを証明するには、別な領域の社会的評価法を採用した一つの評価尺度を新たに作ることにより証明できるかもしれません。例えば社会的評価法を0~10までの段階付けをつくったとすると、0~1までに変化したものと0~10まで変化したものを比べると10倍変化が強く出たとしますと、これは客観性を持った評価法と認めてもいいのではないかと思います。そういう風に方法論を新たに開発することで、経験的なものであっても数をいっぱい集めていけば、それは臨床的なエビデンスになるのではないでしょうか。今、被災地で始めていることの1つに、「フェイススケール」という顔の表情の変化を段階的に評価する方法があるのですが、それと血圧や心拍数をとって、音楽療法を行ったりアロマ療法を行う時の新しい評価法の開発を始めました。出来れば今後、統計学の専門家、或いは文系の方々にも加わって頂いて新しい評価法開発の手助けをして貰いたいと思っています。