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統合医療学会新理事長・仁田新一氏に直撃インタビュー

2012/05/16

―なぜ現代社会において統合医療なのか、をお聞かせください。

近年なぜ西洋医学と異なるCAMや伝統医学が注目されているかというと、実は中医学でも近代西洋医学でも同じ薬を使用していたのです。インフルエンザのタミフルも、中国の生薬が材料です。私が言いたいのは、近代西洋医学と東洋医学では、どっちが優れていてどっちが正しいということではなく、医学は医学であり何も分ける必要はありません。怪しいとか懐疑的なことを仰らずに、疑問があるのであればキチンと実証すれば良いのです。新しい選択肢として統合医療は何かということで、伝統医学と民間療法等様々な療法について分類し、データ分析を行って、科学的な裏づけをとっていくことが急務です。前理事長の渥美先生は所謂エコ医療と仰っておりますが、例えば災害地で電気もなくなった、薬もなくなった、そういう時に何も方法論が無いではなく、こういう方法があるではないということを言いたいですね。

 

―統合医療の世界的な背景について

日本の医療については周知の通りで、漢方・鍼灸、温泉療法等も古来より行われていましたが、明治政府になって西洋医学一辺倒になってしまいました。しかし弱者救済ということで鍼灸按摩マッサージ師、柔道整復師は国家資格として残りました。1976年、漸く漢方薬が一部分保険適用されました。
一方、アメリカでは1990年代から統合医療が推奨され、オバマ大統領も統合医療に年間500億円くらい投入し、産業化を図っていきたいという方向です。これはアメリカだけではなく中国・インド、ヨーロッパ等、世界的な傾向になってきているのです。韓国では「韓医学」を商品化して全世界に広めようという国家プロジェクトとして大きなお金をかけて今取り組んでいます。中国は国家戦略で統合医療をサポートしてこれもビジネス化しようとしており、日本では生薬の90%以上を中国から輸入していますが、中国のビジネス化により将来手に入らなくなる可能性があります。
しかもインドのメディシテイでは、西洋医学の医者1000名、伝統医学の医者50名がお互いに連携しながら、現在比較実証実験を行っております。このメディシテイでは外国から来た患者さんが、近代西洋医学を中心としながら別なチョイスもできるようになっており、アジア諸国はインドをモデルにいろいろなことをやり始めています。残念ながら日本はまだこれからですが、自分たちの国の伝統医学を文化として、また医療資源として捉え、これを今新しく創出しようとしているのです。世界的にみても先進国は西洋医学が中心ですが、医療費はますます高額になります。人間の価値観も多様であるように病気も多様です。それに対し多様な医療をどんどん開発しなくては需要に追いつきません。結局、最終的に病気を治療するよりも予防したほうがはるかに医療費は削減できるというのが今の先進国の医療政策の考え方です。一方、中国・インド以外の発展途上国は民間療法や、伝統医療などを使わないと経済的に成り立っていかないという必然的な理由があって統合医療が求められているのです。

 

―いよいよ統合医療の幕開けと宣言され、2年前の学会で〝パイロットスタデイは終わり、これからは実践の時である〟と言われましたが、どのような進展がありましたでしょうか。鳩山前総理の統合医療を促進する会は、現在どのような取組みをされておりますか?

3つの地区でそれぞれ特徴のある統合医療センター構想を描いてきています。その中でも大阪大学および九州大学の構想が少し進み始めたことと東北地区で地元の自治体と産業界が一体になって、日本統合医療学会が提案している国立統合医療研究センター化構想と医療福祉の専門教育を目指した大学などの2つをコアにし新しいヘルスケアの方法論と材料の開発をビジネス化するヘルスケアシテイを創っていきたいという構想が出来上がりつつあります。
昨年には厚生労働省に統合医療プロジェクトチームが設けられまして、具体的な取り組みが始まっています。私もオブザーバーで参加しておりますが、以前のように統合医療は怪しいというようなことで一方的にダメだしされるような雰囲気ではなくなり、かなり温かい目で見てもらえるように変わりました。特に東日本大震災以降、関係議員の先生たちが理解を示していただくような雰囲気になりつつあります。厚労省の会議では、従来ならば反対派はあくまで反対でしかなかったんですが〝私は反対している訳ではないが、怪しい部分をどうにかして欲しい〟とした意見に変わっており、それに対しては〝その効能効果、安全性などを実証をするための場としての統合医療研究センターをぜひ実現してほしい、その上で国民に納得して頂ける実績をあげて安全性と有効性を担保して国民に提供していきたいというふうに考えております。そういった意味でも以前より随分進んできたというふうに感じています。