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東日本大震災から1年 復興への願いを込めて!
【(社)福島県整骨師会会長・遠藤寿之氏】

2012/04/16

―それは何故ですか?

マスコミや外部に良いところだけを発信すると、素晴らしいことをやっていると思われますが、これ程弱い資格はなかったですし、これ程県民の人達から本来の業務を理解されていなかったのかと思われるくらいの仕事でした。尚且つ柔道整復師全てではないとしてもこれはあまり言えない事なのでここでは言えません。
社団という組織が災害時にどのような対応するかのマニュアルもわかりませんし福島は何もありませんでした。何もないところにドンとなった訳で、だから何を作り上げるかとかではなくただ単にがむしゃらにやっただけなんです。指導力がどうのこうのとか陣頭指揮がどうのこうのとか何もないです。本当に見たものを皆で話し合いながらやってきただけです。その時に我々の仕事はなんなのかという大きな壁にぶつかったんです。もし我々柔道整復師が避難所で救護という言葉を使うのであれば約1週間~10日の間でしょう。その後というのは救護ではありませんから。
それ以降には、エコノミー症候群であるとか廃用性のものであるとか色々な事を言われますが、それは柔整師ばかりが行う仕事ではありませんし、現場に長く入っているとこれらについては医師会でもきちんとケアしております。しかも理学療法師会、看護師会も入っておりますので、ちゃんと定期的にカルテを作ってやられております。我々も全て現場でカルテを作りました。例えば原ノ町の避難所ではカルテを作って其処に置いておきます。すると次に来た医師の先生も全部見ます。医師から申し送りのコメントもあります。私はこれがもしかしたら災害になった時に医科と初めて一つの目的に向かってやるための連携ではないかと思いました。接骨院では医科との連携という言葉をよく使っていますが、そういった形が原ノ町で初めて出来ました。そういった全体を見た時に、お医者さん達は救護で入ります。そしてその後もちゃんと継続して続けます。我々柔道整復師が救護の中でボランティア活動と称して1日2日来てボランティアを行ったとして帰る。お医者さんの中で、そういう人はいませんでした。

 

―ずっと緊急時、非常時には、柔整の先生の能力が発揮できると思っていましたが

そんなことは当たり前です。骨接ぎは何もない所で施術ができるというのは誰だって言えます。しかし現場はどうなのか?結局、医師であろうがどんな人間であったとしても、現場に立ち会えば医療の人達は当たり前にやれることをやります。しかし、柔整師には、それから先がない。今回私が1週間といったのは、目の前に避難所があって、皆救いの手を差し伸べているけれど、避難所では1週間お医者さんは誰も入っていませんでした。当時2日目に私が行政を回ったり行政と話してこういう形で避難所に入りますと言っていた時に原発事故がボンと起きてしまいました。お年寄りは薬を持たずに着の身着のまま逃げて来たので糖尿や血圧等の薬を何とかして欲しいと悲鳴を上げていました。せめて内科のお医者さんが1人来てもらえれば問診して処方箋だけでも書いてもらって、すぐそばに薬局があるから何とかお医者さんを連れてきてもらいたいという話でした。早急にプライマリーケアの知り合いに連絡をして、東京から1人と県内から1人、東京からくる車に薬を全部積んで2人が来てくれました。2人が来てくれた数日後は、今度はお医者さんだらけでした。その領域を侵さないように我々は定期的に回っていました。
今話したように1週間何もない所で処置ができるというのはこれは当たり前であるし本来の柔道整復です。肋骨を折った、手首を骨折したという人は結構いましたから、そこで処置ができるのです。ところがその後にあることがありました。体育館に行った時にぐるっと回って、毎日朝早くから夕方まで5か所~10か所回ります。一番最後に怪我人がいるからちょっと来てもらいたいという事で行って、その他にはいないかと言って7、8名を処置していました。最初に避難所の担当者やみんなに言っていたことは、骨折・脱臼・打撲・捻挫等の新鮮例に関するものに対する処置にしてくれと、マッサージやその他の手技は初期の段階では救護ではない、だから使わないでくれという事でやっていた時に、ある別の会員が来たんです。その人はその場所で汗だくになってマッサージをしているので、ちょっと待ってくれと話しましたが、〝僕は柔道整復師とはこういう職業なんだという事をちゃんと説明して、ちゃんとした処置をしている〟と言うんです。それには私も苦しみました。その後、避難所へ行ってマッサージしてきましたというのが目について、柔整師はマッサージ師なのかと。

 

―マッサージという表現に、なれているというのか甘んじている先生も多いのでは?

そのこと自体が危機的だと思います。我々には一番の基本がある訳で、そこから離れたものをクローズアップして始まったならば、仕事としては成り立つけれども、本来の保険の制度から離脱することになります。つまり、今の制度から離れた世界になると業界はなくなるのではないかと思います。避難所に入ると、〝接骨院の先生が来ています、痛いところがある人がいたら来てください〟と館内放送をしてもらうのですが、最初はマイクを持つ担当者が〝マッサージの先生が来ています〟と言うので、〝マッサージではないです〟というと〝整体の先生がきています〟と言う。〝整体でもない、接骨でしょう〟というと〝接骨?接骨というのは何をするんですか?〟と聞かれるんですよ。ということは「接骨・整骨」は「整体」や「マッサージ」と捉えられてきています。