柔整ホットニュース
特集
人材派遣健康保険組合 渡部業務部長に聞く!
―今の審査委員会について何かご提言がございますか?
周知のとおり、健保連の東京連合会では他の都道府県の連合会と異なり、柔整審査会(柔道整復療養費審査委員会)には審査を委任しておりません。その背景には、柔整審査会の単月点検だけでは審査に限界があり、月を跨いだ所謂縦覧点検や医科レセプトとの突合点検ができるのは保険者だけであること。更に、日数水増しや部位の付足し請求等の不正請求の多くは、保険者が患者へ照会しない限り判明しないこと等、柔整審査会には多くの問題点があることが理由だと理解しております。また、そもそも毎月1日程度の柔整審査会で全ての申請書を審査すること自体が不可能だと思います。
一部には、柔整審査会の機能を強化して審査の効果や実績を上げることで、健保組合等の保険者の審査を省略するという考えもありますが、かなり無理があると思います。審査の効果や実績が上がることが見込めない以上、そうした柔整審査会に審査を任せて、健保組合で審査を行わないという訳にはゆかないのではないでしょうか。
診療報酬については健保組合が社会保険診療報酬支払基金に権限を委任しており、例えば点数を減点するや、支給・不支給等の権限自体が支払基金にあります。従って健保組合は基金に対し「これは、おかしいのではないか?」とお伺いを立てられますが、最終的に決定するのは支払基金です。しかし、柔整療養費については審査会にそういう権限が委託されておりません。あくまでも保険者に権限があるため、審査会で審査をした上で「これは、おかしいのではないか?」と付箋をつけて保険者に戻すことになっています。保険者は、その付箋を見て、支給・不支給を決めたり、或いは更に細かい調査を行ったりします。結局、診療報酬とは全くスキームが違います。折角審査会がある訳ですから、この部分までは審査会で行う、或いは審査会で出来ない部分については保険者が行うという形で役割分担がしっかり出来れば、もう少し上手く機能するのではないかと思います。
―保険者機能を推進する会に創設当初から参加されているようですが、これまでの取り組みと、『医療費適正化のための分析手法の開発事業』とは一体どのようなシステム開発なのでしょうか?差し支えない範囲で簡単にご説明ください。
健保組合等の保険者の役割が重要視され、保険者が保険料徴収と保険給付を行うだけではその存在意義が問われる時代を迎えています。保険者機能を推進する会では、被保険者や被扶養者のために、「良質な医療の確保」「保険料の効率的活用」「健康づくりの推進」の実現及び実施が保険者の使命であると考えており、加入する約90組合が、「柔道整復部会」「保険事業部会」「レセプト部会」「教育啓発部会」の4部会を組織して活動しています。
柔道整復部会では、①柔整療養費適正化に役立つ情報や、審査・指導・啓発のノウハウを共有する、②不適正な受診や請求の実情を収集整理分析して対外発信する、③制度の問題点を明確にして上部団体等を通じた提言や要請活動につなげるといった取組みを行うために、広報分科会、教育研修分科会、データ事例分析分科会に分かれ活動しております。
「医療費適正化のための分析手法の開発事業」とは、一言で言うとレセプトデータと健診結果データを突合することで加入者個々の健康状態を把握して、疾病が重症化する前に様々な個別指導を行うためのシステム開発プロジェクトで、平成24年の本格稼動を目指しています。
―国保中央会常務理事・田中一哉氏が中心となって出された五項目の提言内容についてはどのように思われていますか?
「柔整療養費の審査支払業務の円滑化・効率化、適正な柔道整復療養費の請求・支払を図る」という目的や、各提言項目の大枠や方向性に関しては全面的に賛成です。
「請求方法の統一」の中の「申請書等様式の統一」「複数月請求の廃止」「審査の統一化」の中の「算定基準の明確化」といった項目などは、保険者機能を推進する会でも、5~6年前から、健保連を通じて行政に要望してきた内容で、全く同感です。
また、「IT化の推進」に関しても、診療報酬のレセプトに関しては、請求書データの電子媒体化から更に進み、今年4月からオンライン請求が原則義務づけられております。一方、柔整療養費は、いまだ申請書の電子化の方向性すら見えていないのではないでしょうか。当組合の場合でいうと、年間18万枚近い紙の申請書の画像を取込んだり、データをパンチ入力する作業が軽減するだけでもかなり違ってくると思います。
そのほか、国民健康保険と健康保険組合では、現行の審査・支払実務の細部に相違点もありますが、特に各業務の現状と問題点の整理分析に関しては非常に参考になります。