柔整ホットニュース

特集

人材派遣健康保険組合   渡部業務部長に聞く!

2011/03/01

人材派遣健康保険組合は、日本で最大規模の健保組合である。
その人材派遣健康保険組合の業務部長である渡部尚典氏は、『保険者機能を推進する会』の柔道整復部会・部会長を務めている。
財政的に厳しくなっている健保組合は経済的なコストの削減だけをはかろうとしているのか?
また、保険者は柔整をどのように捉えているのだろうか?
柔整療養費に精通されている渡部氏に、その真意をお聞きした。

 

スペシャルインタビュー「人材派遣健康保険組合渡部業務部長に聞く!」
人材派遣健康保険組合   業務部長  渡部 尚典 氏

―貴保険組合の設立の経緯と理念についてお聞かせ下さい。

人材派遣健康保険組合は、派遣社員を中心とする派遣業界で働く人のために、社団法人日本人材派遣協会が設立母体となって約10年前、平成14年の5月に設立された比較的新しい総合組合です。ピーク時は被保険者数が46万人位でしたが、ここに来てリーマンショック等、景気の問題や派遣社員に対する規制強化の問題があり、この2年間で被保険者数が10万人以上減少したものの派遣会社300社以上、33万人を超える被保険者にご加入いただいており、被保険者数においては我が国最大規模の健康保険組合となっております。

当組合では、設立以来「社会貢献・自主自立・人間本位」の3つの理念を掲げてきました。もう少し分かりやすく申し上げますと、①派遣業界で働く人の健康を守り、人材派遣業界の健全な発展を通じて社会への貢献に努める。②安定的な財政基盤確立のため、ITを活用した効率的で公正・中立な組合運営に努める。③被保険者とその家族に人間尊重の精神で接し、プロフェッショナルサービスの提供に努める。という趣旨であります。 組合業務というのは一部お役所仕事のように言われる面が多々ございますが、そうではなくキチッと保険のプロとして、派遣スタッフの方、そして派遣業界の方に接していこうというスタンスで業務に取り組んでおります。

 

―本当の意味で保険者の一番の問題は、保険財政の問題なのではないかと思うのですが、そうした中に、柔整の問題も表面化してきていると感じています。そこで貴組合における全体的な問題の中で最も大きな問題についてお聞かせ下さい。またそうした問題の根本的な改革の方向性、あるいは将来展望をお聞かせ下さい。

健康保険組合の収支構造は、収入の大半は保険料収入が占め、支出の大半は保険給付費と高齢者医療制度への納付金が占める仕組みになっております。当組合では、被保険者数減少や賃金低下により保険料収入の増加が見込めない一方、保険給付費や納付金の支出は確実に増加しています。財政維持のために、毎年のように保険料率の引き上げを余儀なくされているのが現状です。当組合では、特に高齢者医療制度への納付金の増加が著しく、昨年度決算では保険料収入の5割以上を占めております。制度として、高齢者の医療費を現役世代が支える仕組みは必要ですが、現行の仕組みは、組合加入者の所得(負担能力)に関係なく負担が求められ、低所得の加入者が多い保険者にとっては著しく過大な負担となっています。つまり、貴組合には健康保険加入者が例えば33万人いるんだから、33万人分の負担をしてくださいという形で納付金が徴収されます。しかしながら、人材派遣健保組合は派遣社員が中心ですから、どちらかというと低所得の方が多く、年収が300万円いかない人が殆どです。そういう低所得の方に所謂普通のサラリーマンと同じような負担を求められてしまうと、どうしても収支のバランスが崩れてしまうということで、私どもでもかなり問題にしており、行政にもお願いと働きかけをしているところです。現在、平成25年度に向けて高齢者医療制度全体の見直しが検討されており、当組合はその動向に注目しています。

ただし健保組合としては国に制度改正を要望するだけではなく、自助努力として支出のもう一つの柱である保険給付費の適正化に取り組むことが重要であり、柔整療養費の問題もその一環であると考えております。

 

 

前のページ 次のページ