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社会保障審議会医療保険部会委員・樋口恵子氏にインタビュー!

2012/08/01

― "柔道整復は、高度診断機器、薬物を用いることなく医療先進国、日本で非医師として尚存在し続けており、その事から柔道整復学は世界的に多くの人々を救い得る有用な学問となる可能性を秘め、「国際化」の可能性も大きい。西洋医のみが医師で医療行為を行なうとする時代は過ぎ、伝統・相補、代替医療の一つとして、柔道整復は保険医療分野の改革に更に貢献が期待される"とある柔道整復師が話しておりました。しかしながら"発展途上国では人口の6~8割が経済的理由で西洋医学の恩恵を受けていない"と言われております。医療先進国と途上国における伝統・相補、代替医療は、双方とも経済的理由で必要であるものの、その役割や捉え方に違いがあるように感じます。日本の柔道整復は世界の民族医療に〝柔道セラピー〟として仲間入りしましたが、医療先進国、日本において、なお存続している柔道整復は医療先進国ばかりでなく発展途上国においても有用性が高いとしてモンゴル国等で柔道整復師がJICAの草の根活動で国際交流を通して医療支援と医療指導をずっと行っております。樋口恵子先生は、こういった意見や活動をどのように思われますか?

西洋医学だけが医学ではないということはみんなだんだん分かってきて、韓国では医学部に2通りあるそうですね。日本の中でも東洋医学や鍼灸等を取り入れている病院も増えてきています。勿論、感染症を防ぎ、大手術を行なって人の命を助けるということは西洋医学にはかないません。しかしながら、こういった超高齢社会の中で健康を保って生きるという時に、柔道整復も含めて東洋医学的な考え方というのは一方で非常に大きな流れになっていくでしょうし、大事なことであると、皆さん認めつつあるのではないでしょうか。ただし、性急に業務範囲を拡大し保険にどう入り込もうかという話であれば関連の医療業種との軋轢が起こるばかりであると思います。先日、私の友人のご主人が亡くなりました。病院に入院しないで在宅で看取られました。訪問医療と訪問介護と訪問看護を利用されていたそうです。その中で特に何が良かったかというと、1日15分来てくれる訪問マッサージだったそうです。本当に喜んでいたとお聞きしました。こういう東洋医学系技術者の方々が介護保険分野に参入されている事はとても良いことであると思っています。

 

―今増えすぎている柔道整復師の人たちをもっと活用していただければもっともっと高齢者の健康にとって良いと思われますが。

私は経験はありませんが、友人で骨折して接骨院のお世話になった人は何人もいますし、整形外科と併用していたようです。患者は患者なりの知恵で、使い分けというか、使い合わせています。ですから突き放した言い方かもしれませんが、私は実力のある医療ならば東洋系であれ西洋系であれ地道に患者さんたちに接していくことで社会的地位と認知を確立していくことが、遠回りなようだけど結果として近道だと思います。患者の支持を受けないで政府の支持のほうを先にしようなんていう方法は決して上手くいきません。

 

―樋口先生は、社会保障審議会医療保険部会の委員を務めていらっしゃいますが、その医療保険部会で恐らく初めて療養費の在り方について検討されることになりました。樋口先生はこういった柔道整復や鍼灸等日本の伝統医療をどのように活用されるべきであるとお考えでしょうか?

先ほど申し上げたように、この分野に専門的知見はありません。医師など業界や保険者代表など立場の鮮明な委員が大部分です。私は高齢者枠で部会に参加していますし、できるだけ利用者・患者高齢者の意見に立って発言することにしています。あくまでも高齢者利用者の側の「常識」を発言すべく、体験を集め、資料を精読して臨みたいと思います。

 

―今後、一番の問題はやはり人口問題だと思います。少子化の問題も深刻ですし、ワークライフバランスの社会をどのようにつくっていくべきとお考えでしょうか?

基本的にはこんなに少子化になっているのは日本だけです。あえて言えば韓国もそうです。つまり男女差別の激しかった国だけが、こんなに特別な少子化になってしまったのです。スウェーデンを例に上げれば、日本の保守的な政治家は福祉なんかやると国が潰れると言ってきました。ところがフィンランドは子どもの数学能力世界一、成長率世界一。フィンランドには良いスローガンがいっぱいあって"Welfare state is the best friend of women."『福祉国家は女性の最良の友である』。 "Gender equality creates sustainable society."英語で男女平等を言うと Gender equalityです。男と女の違いはある訳ですから、ジェンダーというのは女性は採用しないとか、文化的につくられたという意味合いです。つまり、日本の場合はGender equalityではなかった訳です。男は外、女は内。それで家庭にいる女に二重、三重の保護を加え、国民基礎年金の保険料すら払わなくてよいとし、例えば仮に8万円の月収を得ているパートの奥さんがいて、年間96万円の収入があるとすると100万円以下なるをもって控除から外さず、かつ130万円以下なるをもっては1万6000円の国民基礎年金の保険料も払わず、サラリーマンの専業主婦という名の偽装専業主婦に仕立ててきました。実はそうではなくパートの働き手です。スウェーデンでは96万円の収入があるとしたら、夫が3倍の収入であろうと96万円であろうと平等に3割の地方税を支払います。従ってスウェーデン政府は税制度で所得再分配は図らない。どんな低収入であろうと高収入であろうと、全員から3割とります。免税点は無いに等しいから、月に5万でも稼いだら1万5000円引かれて3万5000円の収入でしかありません。ところが男と女では10ポイントくらい差があるけれど、女性もほとんど全員が働いている訳です。収入の大きさも男を100とすると女は85くらいで大した差はありません。つまりほとんど全員働かせて全員から3割取る重税国です。全員働かせて全員から3割とれば国の財政は潤沢で、相続税も贈与税も富裕税もゼロです。今までは福祉の供給面ばかりを見ていましたから視察に行っても只管感心して帰ってきました。結果は同じにしても、その裏には国民全員が働いて全員税金を支払っているのです。フィンランドのスローガンは"Women's work is the best friend of welfare state.と言い換えるべきだと思いました。"働いて福祉社会を作っているのです。女性に休まれたら困るから、介護休暇を作ったり育児休暇をしっかり設けています。これからは我が国も「国民皆税社会」と「国民皆労社会」の方向が強まるでしょう。みんなが働いて男女差別の無い賃金をもらって、税金も男女平等に支払う。スウェーデンはどんなに小額収入でも3割取られ、その上25%の消費税です。減額税率をとっていますが、それでも食料品は12%で、日本の政府が今目標としている10%のほうが低い。しかしスウェーデンの国民の反応は違っていて、高い消費税を払うから我が国は輸出国家として生存していけると。消費税は国内だけですから輸出する時にすごく有利に働き、我々のような小さな国が存続して行くためには高い消費税はマイナスばかりではないという認識です。