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社会保障審議会医療保険部会委員・樋口恵子氏にインタビュー!

2012/08/01

―病院に行くことが重篤な病気を防ぐようにも思いますが。

お金のかからない生きがい型のデイサービスや学習活動等、医療費がかからない所に行くべきです。確かに軽度の内に行くと重度にならないということはありますが、病院をサロン代わりにすることは間違っています。世界の高齢者で日本が一番ですから。

たまたま今日、私は中野の生涯学習大学で講演会を行ってきました。そういうところにも健康教室は沢山あります。要するに病院は病院としての機能を果たしてもらうべきですし、結局は国民が懸命になる他ないのです。近頃の医者は身体に触らないで検査結果ばかり見てるというけれど、それでもかけがけのない人間として、その人のデータを見て専門的な立場から指導してくれる訳で、そういう国は他にありません。地域の中には、大事な知識を得たり、知り合いを作ったりするチャンスは山ほどあるんです。是非そういう場所に行って、長寿社会にふさわしい聡明な老人にならないと。何も中野区が特別な訳ではなく、何所の地域でも行っています。出歩く年寄りが社会を変えるということで、最近の私の講演のタイトルは「シニアの社会参加が世の中を変える」でした。本当にそうなんです。

 

―1982年、介護の社会化を1つの目標として、『NPO法人 高齢社会をよくする女性の会』を設立されたとお聞きしております。その時の理念や目標は介護保険制度が施行されて12年経過しましたが、樋口理事長をはじめ会を立ち上げた方たちの理想に近づいていると思われますか?

大きい意味で目標に近づいていると思っております。私達は小さな失望は繰り返していますが、決して絶望することはありません。失望することは沢山ありますけれど希望を持って言い続けていくこと、ここはこうしたいと言っていくこと、今何が起こっているか、今言うべきことは何かということを常に考えながら、未来に向けた活動を続けております。介護保険は私達にとって大きな目標でした。その後の2007年、介護保険が始まって少し景気が良くなったので大勢人手が流れ、逆に介護報酬は下がり気味でしたから介護労働者の定着率が悪くなりました。その時に私達はその実態を見て恐怖を感じましたので介護従事者の待遇を改善してほしいという声をあげ、待遇改善に結びつけた法律を作りました。今も高齢当事者として考えるべきことを常に提言しています。終末期医療に関しての提言書もいずれ纏めるつもりですけれど、本人の望まぬ、治療効果のない「無用な」延命治療はしてほしくないと思っています。「無用な」っていうところが実は問題で、どこを無用というかは議論があると思いますし、そこは多様性ということの中で夫々の人や家族の選択に任せて良いと思っています。

 

―確かに胃ろうについて議論され出しましたね。

日本は胃ろうが40万人だと言われています。例えば、日本とスウェーデンは10:1位の人口比ですから、日本が40万人の胃ろうが居るとすれば、スウェーデンには4万人の胃ろうが居ていいはずですが、殆ど居ません。それは国民性もあれば文化もあれば、最も大きなことで言えば宗教性もありますから一概にこうとは言えませんが、それにしても日本は多すぎるのではないかということは言ってもいいと思います。ここから日本の医療や介護の問題が浮かび上がってくるのではないでしょうか。終末医療については、今私達の研究課題で、いずれ提言を行うと思います。

 

―樋口先生がお感じになっている今の介護保険制度の問題点と今後目指される方向等をご示唆ください。

介護保険は何だかんだ言われながら良くやってきたと思っています。その中で言われながらも変わらないのが、ケアマネージャーの質と地位の問題です。ケアマネージャーというのは中立であるべきですし、特にこれからの改定等によってもケアマネージャーの権限や役割がとても大きくなっていきます。介護保険制度発足当初からケアマネの資質の向上は嫌というほど言われていますし、少しずつ改善されている面はありますが、本質的な、特に中立性の確立ということは進んでおりません。今度の医療報酬と介護報酬の同時改定の目玉は医療と介護の連携です。医療費の肩代わりのために介護保険を作ったけれどもそれどころではなくなってしまって、とにかく連携させなければ成り立たなくなってしまいました。従って実際に医療と介護が連携するからには、私はケアマネージャーにはもうちょっと医療的言語で語れる人であってほしいと思います。最初は医療系の人が多かったのですが、近頃は介護職系が多く、それはそれでいいのですが、医療系の人に生活の側からいい意味でわたり合える能力が必要です。医療が100年以上として、介護というのは資格制度として未だ12年です。100年以上の格差がある訳ですので、追いついていくのは大変です。医療と介護の連携を簡単に言われるけれど、単に医者の傘下に入れられてしまうのではなく、生活分野からちゃんと介護を支えうる実力を介護の側に持って欲しいと思っています。

 

―日本では超高齢化社会が急速に進行し、逼迫する医療保険財政を考えた時、柔道整復は保健医療の面でも十分な費用対効果において活躍が期待されると考えますが樋口理事長のお考えをお聞かせ下さい。

私はこのご質問に関して自分の個人的な体験もありませんし、まして専門的知見もありません。しかし少し前、この問題が医療保険部会に出され、何も異論が出なかったことを記憶しています。会議の席ではありませんが〝この分野は政治的だった〟と聞いたことがあります。