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調査票の実態【第12回:真の適正化とは?】

2016/10/01

ある健康保険加入者各位あてに送付されている調査票に同封される啓蒙用文書の抜粋ですが(全体は資料①をご参照ください)、文言はソフトであっても記述内容は一方的偏見で構成されているようだと判断されます。

 

さて、このたび医療費適正化の一環として、柔道整復師の治療内容等を確認させていただくことになりましたので ~略~ 整骨院・接骨院は、病院、診療所等の医療機関と比べて、待ち時間も少ないようで(予約もあり)、更に、気軽に診ていただけるのかもしれませんが、特に、最近、当健保の整骨院・接骨院の治療にかかわる健康保険の負担金額、また治療をお受けになる方が、大変増加しております。このような中、健康保険組合としては、皆様、会社から納めて頂く大切な保険料から整骨院等へ治療費用を支払うにあたって、『適正な保険料給付』の観点から、皆様方が「この請求内容に間違いない」として署名された整骨院等から送られてきます「療養費支給申請書」(治療内容が記載された治療費用の請求書)の内容・点検作業を行っていますが、中には、健康保険の適用に疑問を感じざるを得ないケースも見受けられます。

柔道整復施術療養費総額は、平成23年度をピークとして漸次低下する方向にあります。
上記の記述は、健保加入者による柔道整復受診と組合負担金額が増加しつつあると表しています。逓減制度が導入され、一部の料金項目で金額が増額されても多部位・長期算定における逓減率が上がることにより当然、総額は抑制と共に減額方向にあることは読者の皆様も承知の事実でございましょう。
接骨院・整骨院でも待ち時間のかかる院が多くあり、この記述も疑問が生じます。

 

整骨院等で治療された一部の方に、健康保険が使えない場合があることを知らないまま、柔整師の施術(治療)を受けられていると思われる方もあります。整骨院・接骨院の看板に『健康保険などの各種保険が使えます』等の言葉が書かれていることも一因とも思いますが、整骨院等におけるすべての治療が健康保険に適用になる訳ではないことをご理解頂きたいと存じます。また、整骨院・接骨院における治療(施術)は、病院、診療所等の医療機関とは異なり、健康保険の適用には、色々と制約があることをご理解ください。

上記の記述では、病院・診療所等の医科における健康保険取り扱いには制約が存在しないような言い表し方になっています。
昨今、柔道整復師法違反と言える明らかな違法広告が目立つことは事実であり、厚生労働省においても或いは日本柔道整復師会をはじめとする主な団体においても、広告やサイン類の法令順守を推進しておられるようです。しかしながら巷では、いわゆる無資格者による慰安的な手技サービス店が溢れ、日本国の国家ライセンスをお持ちでない方々による治療行為も散見される事実から、適正な柔道整復を提供される接骨院・整骨院においては、現代に即した看板規制の見直しも必要であると考えられます。

 

なお、健康保険組合としては、柔道整復師の治療費の支払いにあたって、『正しい整骨院・接骨院のかかり方』の広報を行う一方、『適正な保険給付』の観点から、保険適用となる施術であるかどうかの判断材料として、また、整骨院等からの請求内容と皆さんが実際にお受けになった施術(治療)の内容等が一致しているかどうかを確認(健康保険法第59条に基づき)するために、○○業者に業務委託をいたしましたので ~略。

受診者調査の目的は、これまで何度も示している通り、保険者による療養費取扱いの適正化が主眼であり、受診抑制を講じることではありません。多部位請求・長期通院・頻回傾向にある施術回数等について調査を実施することと通知発令されています。これら加入者啓蒙用文書内容は、本当に保険者サイドの適正化として実施されているや否や甚だ疑問に感じます。

 

上記の図式から本保険者における療養費支払いは、調査を経なければ実施されないと大きな誤解を招く表記方法であることが窺えます。
(全体は資料②をご参照ください)

(保険証提示)自己負担額の支払・領収証受取り
(施術)
(申請書に署名)*月末に施術内容の確認「?」
(健保負担額の請求―申請書の送付)
(受療状況の照会調査)
(回答の記入・送付)
(療養費の支給)*申請書の内容確認後、健保負担額の支払い

編集部では、これら①~⑥のプロセスを経なければ、⑦の支払いに至らないような誤解を感じておりますが、読者の皆様はいかがでしょうか?
再掲通知にある「支給決定までの迅速化」からは大きく逸脱しているように思えてならない図式であると言えないでしょうか。

調査回答書の設問内容は非常に細かなレイアウトになっており、紙ベースでの文字・活字離れが進む現代社会にまったく沿わない構成だと言えます。柔道整復施術療養費支給申請書への受診者電話番号記載が通知発令されていますが、あくまでも受診者本人の意思確認により励行されることになっていますが、調査回答書では当然の如く記載欄が見られます。また腰痛は外傷でないと記載がなされており、治療内容を問う欄では柔道整復手技や温熱療法についての回答が不可能となっています。そして肝心の負傷個所や治療個所を示すための人体図は申し訳程度の大きさです。最も誤解を生じやすい負傷原因記載欄も負傷の原因によっては書きづらい様式になっています。これらは、全体的に質問攻めとも受け止められかねない手法だと言えます。

いわゆる受診調査の最大の盲点は、柔道整復師と受診者が不適切な結託をしているような場合には、疑義を生じる結果が得られないことで、本末転倒です。
ですが調査は、その手法により適正な治療と算定の証として、受診者への有力な説明根拠となり捉え方によっては良い意味での解釈も可能です。ただただ真の適正化を推進するならば、柔道整復療養費審査委員会の全国平準化・審査権限強化が最も重要であり同審査委員会の審査結果により受診者調査が行われるべきです。また調査手法は、柔道整復の現場を熟知した皆様(柔道整復師・保険者・行政等)によるコンセンサスの得られた方式でなければ意味をなさず、現状では適正な受診の機会は抑制され、不適正な請求は居残ることとなり、返戻屋と呼ばれる電算業者等が潤うばかりでは本当に大きな疑問でございます。読者の皆様はどのようにお考えでしょうか。

 

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